海外在住と親の介護問題(後編)

セブ市が再びECQに戻り、7月に入っても延長で私の居住地を含むバランガイなどはむしろ以前より厳しいハードロックダウン。

果たして、この先どうなるのか、まったく先が見ない状況が続いています。

さて、今回は「海外在住と親の介護問題」の続きで、父に認知症の症状が現れたのは今から3年ほど前になります。

認知症での一人暮らしはいつまで可能か?

父の一人暮らしが難しいと思った主な理由ですが、まず体力が急激に落ちたことがあります。

前回の一時帰国では自転車にも乗って空港まで見送りに来るほど元気だったのに駅から近い病院に行くのも歩くのがしんどい状況でタクシーを使うようでした。

しかし最も大きい理由は次の2点です。

ひとつは電気が止められるなど金銭管理の面と、もうひとつは私の入院中にカセットコンロの消し忘れで火災報知器が鳴り消防車が来るという騒ぎを起こしてしまったことです。

幸いなことに煙だけで家事にはならなかったのですが近所に心配と迷惑を掛ける騒ぎとなってしまいました。

特に火の消し忘れに関しては父は以前からIHクッキングヒーターを勧めていたのですがそれは嫌がり、ガスが止められてもカセットコンロを使いたがるのでした。ちょっとした消し忘れは私が滞在している間でもちょくちょくあり不安はありました。

家族が同居していない場合は仮に近居であっても四六時中つきっきりというわけにはいきません。

次のような点が気になるようになったら地域包括支援センターやすでに介護サービスを受けているようなら介護認定と合わせ、いろいろな事例を知っている地域包括支援センターやケアマネージャーに相談した方が良いと思います。

1 自己管理が出来なくなる。

食事や掃除などが出来なくなると、衛生面や自身の健康管理に問題を生じます。また金銭管理が難しくなると家賃(賃貸住宅の場合)や光熱水費の滞納などを生じたり、詐欺などの被害を受ける可能性も高くなります。

2 他者に迷惑をかける

さらに認知症が進み、徘徊するようになると警察などに捜索を依頼することになり、火の不始末で出火するような事態になると自身のみならず他人の命に危険を及ぼすことにもなりかねません。

高齢者向け住まいの種類

「令和元年版高齢社会白書」によると「60歳以上の人のうち9割以上が現在の地域に住み続ける予定」とあります。

高齢者が一人暮らしであっても長く親しんだ環境に住み続けたいと願うのは当然のことだと思いますし、環境が変わることによる悪影響も考えられます。

しかし、家族としても同居が難しいケースは多いかと思います。

一方、老人ホームなどの施設への入所は、本人や家族、親戚などに抵抗感があり迷うこともあるかもしれません。

私の場合も父が認知症になるまでは、将来的にはセブでのビジネスが落ち着いたら日本で暮らす割合を高めたいと思っていました。

しかし、当時は二人目のビジネスパートナーが失踪し、ごたごたが続いていた頃で長期にセブを空けることが難しく、やはり24時間、365日任せられるグループホームなどの施設に入所できたら、と思うようになりました。

そして「これ以上の一人暮らしは難しいと思うのだけれどもどうしたらよいか」とケアマネージャーに相談しました。

民間の老人ホームは入居一時金や月額利用料の相場から費用面で難しく、公的施設の特別養護老人ホームへ入所で出来ないかと考えたのです。

しかし、特別養護老人ホームの入居条件は要介護3以上で(父は介護認定を受けたばかりで要介護2でした)また、待機人数も29.2万人(2019年4月)と簡単ではありません。

ちなみに介護経験のある知人の場合、最初は介護老人保健施設(老健)に入所して特別養護老人ホームの空きを待ったとのこと。

どうしたものかと思案していると、サービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高住」と呼びます)を考えたらどうかと提案されました。

介護を必要とする高齢者の住まいについては厚生労働省の 「介護を受けながら暮らす高齢者向け住まいについて」にまとめられており次の6つに分類されています。

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厚生労働省ホームページより)

なお、高齢者向けの住まいについては厚生労働省から「-高齢者向け住まいを選ぶ前に-消費者向けガイドブック」がでており、種類、サービスや費用の違い、選び方のポイントなどについて簡単にまとめられています。

サービス付き高齢者住宅とは

「特別養護老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「有料老人ホーム」「認知症高齢者グループホーム」の4つは厚生労働省が所管する老人福祉法で定められています。

一方、「サ高住」は 国土交通省所管の「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」 により登録が義務付けられています。つまり福祉施設ではありません。

しかし、行政による指導に関しては「サービス付き高齢者向け住宅の事業者が、有料老人ホームの要件となっている『食事の提供』『介護の提供』『家事の供与』『健康管理の供与』のいずれかを『住宅事業の一部として』実施している場合、そのサービス付き高齢者向け住宅は『有料老人ホーム』に該当することとなる。」との規定があります。

現状で約95%の「サ高住」が該当しているので実質的にはほとんどのサ高住が有料老人ホーム同様の指導監督を受けていることになります。

最初「サ高住」と言われてもなんのことか分からなかったのですが、「サ高住」の制度は比較的新しく、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(2001年施行)の2011年の改正により創設され、その後急速に増加しています。

本来は「サ高住」が必ず提供しなければならないサービスは、「安否確認」「生活相談」のみです。

当初は「サ高住」はあくまで高齢者向け住宅であって、介護サービスを受ける場合は一般的な在宅の場合と同様に独立した形で居宅サービスを受けることが想定されていたのではないかと思われます。

しかし、近年になって「サ高住」に「デイケアサービス」などの介護サービス施設が(実質的に)併設されれいる「抱き合わせ」と言われる形態をとるケースが増えてきています。

入居者囲い過剰介護…サービス付き住宅に批判も(yomiDr/ヨミドクター)

このあたりの問題は話が長くなるので今後、介護問題に関する投稿記事で取り上げていきたいと思っています。

無届け老人ホームとは

上記の「高齢者向け住まい」にあてはまらない「無届老人ホーム」が全国で662件あります。

平成 30 年度 有料老人ホームを対象とした指導状況等の
フォローアップ調査(第 11 回)結果
(厚生労働省)

2009年に群馬県の渋川市の老人ホームで火災があり10名が亡くなった事件がありました。以降、行政の指導が強化されたことでその数は減ってきています。

届け出をしない理由は「スプリンクラーの設置などの法基準を満せない」などとなっています。それらに対応すると費用負担が高くしないと採算が合わないということのようです。

いずれにせよ利用する側としては行政の指導が届かない無届け老人ホームは避けた方がよいと思われます。

未届け有料老人ホームの実態に関する 調査研究事業』(厚生労働省)

「サ高住」の紹介業者

「サ高住」は民間施設なので基本的には賃貸住宅のように自分で探さなければなりません。今はネットでも賃貸住宅の情報サイトのように「サ高住」の情報を提供しているサイトもあります。

しかし普通の賃貸住宅以上に難しい面があります。

  • 入居時・月額費用
  • 立地条件
  • 医療・リハビリ体制
  • 介護サービスの提供有無 など

私の場合はケアマネージャーが「サ高住」の紹介会社を紹介してくれました。(ちなみに費用はサ高住が負担するとのことでした。)

こちらの希望に沿って何件か紹介してもらい、実際に見学した上で決めました。

時間に余裕もない状況だったので自力で探していたら大変な手間だったと思われ、助かりました。

入居後の生活費をどう賄うか?

「サ高住」の入所にあたっては一般的には連帯保証人や身元引受人が必要です。入居する本人の費用に関して責任を持つ立場になります。

医療保険と異なり、介護保険制度では居宅介護サービスなどは要介護度別に区分支給限度基準額が決められており、その範囲内でサービスを選択する 仕組みとなっています。

つまり介護度が高くなるほど利用できるサービスの額( 区分支給限度基準額 )は増えますが、利用すればその分自己負担額も増えることになります。

父の場合、最初は「要介護2」でしたが、亡くなる直前には「要介護5」を申請していました。介護保険サービスを限度額まで使えば自己負担額も増えることになります。

グループホームに入所していた伯母の場合は全くコミュニケーションも取れず、日中でも寝ているか車椅子かどちらかの状態で要介護5の状況が十年以上続きました。

家族が不足分を「持ち出し」しなければならないということも考えられます。私が公務員を続けていたらそうする余裕もあったでしょう。

しかし家族も自分自身の将来のことはわかりません。生活費や、介護保険、医療保険の自己負担などが将来増加することや、急な出費の可能性などを考えた上で、基本的には年金でまかなえる生活設計を考えたほうが良いと思います。

ただ、父の場合でもなかなか年金で収まる施設は限られるのに、もし母だったら遺族年金はさらに少ない額になるので(母は専業主婦だったので)また異なった選択を迫られたかもしれません。

本人が金銭管理できず家族が近くにいない場合は困難

私の場合は海外在住ということもあって一番の問題は金銭管理でした。認知症の金銭管理問題は最近「 認知症を支える日常的な金銭管理のニーズ  」(大和総研)など、社会問題として認識されてきています。

最近は、銀行や弁護士事務所がこういった問題に対処する新しいシステムをつくるといったニュースもあります。しかし、やはりそれ相応の経費がかかってしまいます。

法律的に金銭管理を完全に委任する成年後見人制度はハードルが高くなりますし、本人にとってデメリットとなる点も指摘されています。

身元引受人が海外在住である問題

私が探したのは基本的に父の年金月約14万円で入れる所で身元保証人(私)が普段海外にいても可能な施設でした。

まったく身寄りがなければ行政が対応してくれるのでしょうが、身寄りがあるのに海外にいるというケースは施設側も嫌がる傾向にあると思われます。

このような情報はホームページなどではわからないので自力で探すとなると相当難しかったでしょう。

認知症は幸せ?不幸せ?認知症との向き合い方

いざ家族が認知症になったとき、また自分自身の事を考えたときに、制度などの知識を得ることは大事なことですが精神的な面や心構えなどを整えておくことも必要です。

認知症に関する本はたくさんでていますが、上田諭さんの「不幸な認知症幸せな認知症」 (株式会社マガジンハウス) という本があります。(Amazon のKindle Unlimitedで読むことができます)

この本は認知症と自分や家族が診断された場合、どのように受け入れるか、向き合うか、付き合っていくかということについて書かれています。

そのなかでは在宅介護か施設介護という問題などにも触れられています。

家族が本人から『離れる』ことも選択肢の一つであるが家族は本人を中心とした生活へ変える必要があり、自分の人生を犠牲にすると感じるような介護ではなく、本人を受け入れ寄り添う時間を少しずつ増やす工夫をすること、など。

そして「最終的には介護をした日々が自分の人生にとって意義があった、親との最後の時間、あるいは配偶者との最後の時間を幸せに過ごせたと思えることが目標です。」と述べられています。

近年、「介護地獄」であったり、「高齢者虐待」といったニュースも耳にします。本人と家族どちらも不幸にならない介護のためにどのように向き合うかということは大事なことです。

著者の上田さんは認知症学会の専門医です。

認知症に関しては日本認知症学会の「全国の認知症専門医リスト」を見てもわかりますが精神科、脳神経内科、神経内科などの医師が専門医として認定されています。また、物忘れ外来や認知症疾患医療センターを設けている病院もあります。

私の場合は私自身の状況から、父の病気としての認知症への対応はほとんど出来ず、介護認定を受ける際の主治医はかかりつけの内科医で、一度会っただけでした。

父に関して言えば専門医に相談できなかったことが心残りです。

アルツハイマー型認知症など薬で進行を遅らせたり、症状を軽減させたりすることができる場合もあるので、できるだけ専門医に相談したほうが良いのではないでしょうか。

「サ高住」への転居

いくつか見学したのですが、正直なところどこも「ここがいい」という印象をは持てませんでした。

しかし、当時住んでいた場所からはかなり離れているので当初の候補にはなかったのですが、いい所があると言われて見学に行った「サ高住」に決めることになります。

見学では食事の試食もできて、かなり美味しかったので驚きました。また施設や設備も開設してからまだ数年と新しくとても綺麗でした。

また職員の方も親切そうで明るく挨拶してくれるなどハード面だけでなく好印象でした。

見学だけですべてが分かるものではないですが、逆に見学の時点で気になる点がいろいろあるようだとやはりちゅうちょせざるを得ません。

先ほど紹介した厚生労働省の資料の他にもネットではこういう点を調べるとよいという「チェックリスト」などの情報が多く掲載されています。

そこの施設長は元医療関係者とのことで安心できる面もありました。何より家族が海外出張していたり、身寄りのない利用者を受け入れている経験があることから私の事情もよく理解してくれて対応してもらえることからこれ以上の場所はないと思えました。

また近年は「サ高住」でも「看取り」まで対応するケースが増えてきていますがこの施設もそうです。

設備もよく、これほど安い費用というのはなかなか見つからないと思えますが、理由は立地だと思います。

車があればそれほど問題ないですが交通公共機関がないとタクシーを使わないと厳しい場所にあります。

私の場合はそう頻繁に訪れないので大きな問題ではありませんでしたし、伯母のグループホームもかなり不便な場所にありました。

本人の意志

私自身はここしかないだろうと思ったのですが肝心の本人の意思が重要です。

認知症といってもまだ初期ですからもちろん法律的にも意思決定能力はあり本人の意志に反することは出来ません。

本人には話をしましたが、意外にあっさりと「分かった」と返事。しかしどこまで分かっているのか。

その次に一時帰国したときに話したときは、「そのうち家に戻るから」というようなことを言っていたので一時的なものと思っていたのかもしれません。

交通手段がないため紹介業者の担当者の方に車で乗せていただいたのですが、「最初は引っ越しを嫌がって帰りたがる人も多い。」とのこと。父の場合はおとなしくちょこんと席に座っており転居は問題なく済みました。

最初の数ヶ月でどうしても嫌がるようだとどうしようと思ったのですが、施設長の話でも特に問題ないとのことで少し安心したのでした。

約2年間の「サ高住」での生活

父がサ高住に入居してからも私のビジネスは役所の手続きが停滞したままで頻繁に日本にもどることは難しい状況が続きました。

日本には長く滞在できませんが、会うと体はさらに弱々しくなっているように感じましたが私の姿を見るととても喜んでくれました。

よくドラマとかで見るように、いつかは自分のことが分からなくなり「あなた、誰ですか?」とか言われる日が来るのかなあと会うたびに思っていたのですが結局最後まで私のことは認識してくれていました。

食事や生活のことも尋ねても「うん、うん」と不平を言うこともありません。会話の中では、いつか家に帰る前提での話もありましたが、何となく自分の状況をわかった上で受け入れていたのか、それとも本当に満足していたのか?本当のところは分かりません。

でも、もともと人と話すのが好きな性格だったので一人で家にいるよりかはいろいろな面で良かったのかなとは思います。

ケアマネージャーさんからも「いつもにこにこしていて」と溶け込んでいるようで、また、特に大きな面倒はかけていなかったとのこと。

そしてサ高住に入居してから約2年が過ぎた頃から施設からのメールでこまめに熱や肺炎の症状など健康状態についての報告が来るようになりました。

少しずつその日が近づいていることが分かりました。

訃報を受けて

そしてついに訃報の連絡がありました。

父は母の葬儀のときに「自分の時は葬式などいらん」と言っていました。父にとっては私が子供の頃から病弱だった母を「しっかり看取る」ことができればそれで満足だったのかと思ったりします。

叔父は長崎から駆けつけると言ってくれたのですが葬儀社への連絡も施設からしてもらえました。そして私は帰国の途につくのでした。

正解はないのだけれど

父はいい施設(サ高住)で最後を迎えることができて良かったと思います。施設長、新しいケアマネージャー、デイケアサービスなどの担当の方々は皆親切でした。

可能であったら本人が自分で電話ができなくなってからもライブカメラでの見守りやスカイプなどができたらなあと思いましたがやむを得ません。

母が亡くなり顔を突き合わせるとつまらないことで言い争いになったこともありましたが、私がセブに来てからはそのようなことはほとんど無くなりました。

紹介した上田先生の本にもありますが、「一定の距離を置くこと」が良かった面があったような気もします。

訪問したときは一度も「ここはいやだ」とか「家に帰りたい」と言われなかったけど、本当は我慢していた面もあるのかなあ。

「これでよかったのかなあ」と思うのだけれど、「いいんだよ」と言ってくれているのかなあ。

日本を発つ前に、以前お話した父の好きな「天丼てんや」の天丼を食べながら父に尋ねるのでした。

まとめ

  • 家族が元気なうちから介護保険制度などに関する情報収集をして知識を身につけておく
  • 認知症のサインを見逃さないように普段から気をつける
  • できれば専門医のいる医療機関で診てもらったほうが良い
  • 家族が認知症になったらまず地域包括センターに相談する
  • あせって介護離職(海外で仕事をしている場合など)などせずまずは共倒れせずにすむ方法を探る
  • 「サ高住」を探すにあたっては紹介業者に頼るというのもあり(メリットのほうが大きいと思われる)
  • 介護計画をたてるに当たっては費用面では自分の将来のことも考慮する
  • 困難事例であるほどケアマネージャーの経験や力量によって状況が左右される。
  • 医療・介護資源を利用しその分を「本人によりそう」事が大事

両親を送り次は私の番、「終活」などという言葉もありますがそろそろ意識する歳になりました。

この投稿では私自身の経験をお話してきました。今後は海外在住者自身の老後、「終活」に向けての生き方など考えていることもお話していきたいと思います。

ところで、咳がなかなか治りません。特に夜、寝ようとするとひどくなります。日本だったら病院で検査する状態だと思うのですが、病院にも行けない状態です。

はやく日常に戻ってほしいです。

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