11月1日は「諸聖人の日」で祝日です。

10月31日(土)は「ハロウィン」です。フィリピンでは日本と同様に、若者を中心としたイベントとなっています。そして、11月1日(日)は「諸聖人の日(All Saints Day)」で祝日、翌日の11月2日(月)は「死者の日」で追加特別休暇(振替休日)となります。

今日は「ハロウィン」、「諸聖人の日」、「死者の日」、そして最近のニュースなどから少しお話を。

10月31日(土)は「ハロウィン(Halloween または Hallowe’en)」

ハロウィーンの起源・原型は、今から2,000年ほど前に古代ケルト人が行っていた、秋の収穫祭と悪霊祓いの儀式である「サウィン(Samhain)祭」といわれています。

「サウィン祭」は夏の終わりと冬の始まりにあたる、10月31日の前夜祭と11月1日の祝祭で、ケルト暦で1年の始まりの時期にあたります。

現在の「ハロウィン」にあたる前夜祭の時期は1年の終わりの日で、日本のお盆のように「死者の霊が会いに来て交流ができる」日であり、その際に「悪霊も一緒に来る」という考えから、それらを追い払うために魔除けの焚き火を焚いたり、仮面をつけたりしたことが、現在の仮装につながっているのではないかと、いわれています。

名称は、19世紀に北アメリカに移住した移民たちによる、これらの習慣の「ハロウ・イブ(Hallow Eve)」がなまったものともいわれています(諸説あり)。英語で「Hallow(ハロウ)」は「聖人」や「聖職者」という意味があります。

(ケルトというとケルト音楽をイメージする人も多いかと思いますが、現在のアイルランドなどケルト系とされる人々と、紀元前1世紀頃に他民族の支配下に入った古代ケルト人との関係やその歴史は分かっていない点が多くあります。つまりアメリカでハロウィンのもとになったとされる祭りや慣習が、本当に古代ケルト人が行っていたものかどうかについては、定かではありません。)

もともとキリスト教徒は関係のない民間信仰ですが、現代ではアメリカから多くの国に広まり、祝祭本来の宗教的な意味合いはほとんどなくなっています。

実はフィリピンでは、アメリカから「ハロウィン」が伝わるより以前に、「Pangangaluluwa」という「諸聖人の日」の前日の10月31日に行われる、スペインから伝わった慣習があったそうです。

子どもたちが、死者(祖先の幽霊)を表す白い毛布に身を包んでて家から家へと歌って回ります。もし、「Kakanin」(伝統菓子)や飴などをあげない場合、ちょっとしたいたずらをします。

家を訪問するこのような慣習は、 harana (ハラナ:求婚で相手の家の前で歌を歌って返事を待つ)やkaroling(カロリン:クリスマスの前に子どもたちが近所の家を訪れ歌を歌ってお菓子やお小遣いをもらう)と共通しています。

現在ではハロウィンが定着していますが地方では伝統的なスタイルで行われているところもあるそうです。

(参照:ウィキペディア、AERAdot「ハロウィーンはキリスト教のお祭りではない!?ハロウィーンの秘密に迫ります」)

11月1日(日)は「諸聖人の日(または『万聖節』)(All Saints’ Day)」

カトリック教会の典礼暦では11月1日の諸聖人の日(All Saints’ Day)」は、カトリック教会の祝日の一つで、全ての聖人と殉教者を記念する日です。古くは「万聖節」(ばんせいせつ)と呼ばれていました。

「聖人」

「『聖人』とは、生存中にキリストの模範に忠実に従い、その教えを完全に実行した人たちのことであり、神と人々のために、またその信仰を守るためにその命をささげるという殉教もその証明となります。(中略)
 教皇が公に聖人の列に加えると宣言し(列聖)、その式(列聖式)はローマの聖ペトロ大聖堂で盛大に執り行われます。(中略)
 日本の教会に関係する聖人では、聖フランシスコ・ザビエルをはじめ、日本26聖人殉教者、聖トマス西と15殉教者、聖マキシミリアノ・マリア・コルベ神父がいますが、今でも彼らを崇敬するのは現代社会にあって福音的な生き方の模範になる人だからです。」(カトリック中央協議会 「尊者・福者・聖人とは?」から一部抜粋)

「崇敬」

以前お話したように一神教であるキリスト教は神のみが「崇拝」の対象です。「崇敬」とは、「カトリック教会と正教会の神学では、神のみに対する「礼拝」とは異なる敬意の一種」とされています。

ユダヤ教においても「聖人崇敬を主張するものではないが、神聖なユダヤ人指導者の墓地への敬意と巡礼は、古代ユダヤ教の伝統の一部」であったとのことです。(参照 ウィキペディア)

「諸聖人の日」

「教会は、最初の時から殉教者の殉教記念日を祝ってきました。しかし、ディオクレティアヌス皇帝の時代(4世紀)の迫害のころからは、ある特定の日に祝っていました。(中略)
 9世紀に、教皇グレゴリウス4世は、この祝日を11月1日に移し、すべての殉教者から諸聖人にまで広げました。この決定を機に諸聖人の祝いは広まっていきました。」(聖パウロ女子修道会 『諸聖人(11月1日 祭日)』から一部抜粋)

カトリック教会にかぎらず、聖公会や正教会などのキリスト教の一部の教派でも「諸聖人の日」に相当する祝日・祭日を定めている教会もあるものの、呼び名や日付は必ずしも一致しません。

また、プロテスタントの「日本基督教団」では、11月の第一日曜日は「聖徒の日」とされていますが、カトリックや聖公会とは意味合いが異なり、聖人のためではなく亡くなった信徒たちのために祈る日になっています。

プロテスタントでは(一部を除いて)「聖人崇拝」はもちろんですが、「聖人崇敬」も認めていません。

11月2日(月)は「死者の日(または『万霊節』)(All Souls’ Day)」

ローマ・カトリック教会では正式には「The Commemoration of All the Faithful Departed(信仰を持って逝った人全ての記念日)」といいます。

 「死者のための祈りが典礼の中に現れたのは、3世紀のはじめ、カルタゴにおいてです。しかし、死者のために祈る習慣は、初期キリスト教の時代からあり、4世紀には東方教会に、8世紀には西方教会において、ミサの奉献文に取り入れられるようになりました。(中略)
 現在の『死者の日』の起源は、998年にフランスのベネディクト会クリュニー修道院において、11月2日を、『帰天したすべての信徒のための記念日』と定めたことによります。そして、この習慣は、だんだんと教会全体に広まっていきました。教会は、死者のために祈ることにより、生きている人だけでなく、亡くなった人をも含む、交わりの共同体であるという考えを深めてきました。」、「神に仕えて亡くなったすべての人を思い起こし、死者のための祈りを共にします。」(聖パウロ女子修道会 「死者の日」から一部抜粋)

プロテスタントの大半は、「聖人崇敬」の概念自体が存在しないため、諸聖人の日を祝う習慣は存在しませんが、「死者の日」に関しては、次のような記事があります。

「宗教改革の中心人物マルティン・ルターは、聖書に記述のないカトリックの行事をかたっぱしから否定したが、「死者の日」は民衆の生活に根付いているとして認めたという。」(産経コラム「ルターも認めた『死者の日』の祈り」から一部抜粋)

フィリピンでは「諸聖人の日」から「死者の日」にかけて、墓を掃除したり、修理したり、花、ろうそく、食べ物を供え祈ります(日本のようにしっとりしたものではなく、にぎやかに行います)。

「死者の日」には多くの人が墓参りをすることから、今年は新型コロナの影響で墓地を閉鎖したり、墓参を禁止するというニュースが見られます。日本の「お盆」とよく似ているといわれることがあります。「お盆」に関しては「この期間に先祖が戻ってくる」という認識の人が多いでしょう。

「死者の日」は、もともとは、カトリックにおいて「『人間が死んだ後で、罪の清めが必要な霊魂は煉獄での清めを受けないと天国にいけないが、生きている人間の祈りとミサによってこの清めの期間が短くなる』という考えから、煉獄の死者のために祈る日」という性格がありました。

キリスト教に限らず、宗教的死生観はとても難しく、表面的な理解にならないように十分注意する必要があります。

また、キリスト教の死に関する教えなどを含めたキリスト教倫理は現代社会にも大きな影響を与えています。ユーチューブで同志社大学神学部 小原教授の授業「キリスト教倫理」で、生命倫理、社会倫理、環境倫理などが取り上げられており、いつか紹介したいと想います。

日本人の宗教観とキリスト教

少し前に紹介した映画「沈黙ーサイレンスー」では、「この国は沼地でキリスト教という苗は育たない」と、棄教したフェレイラが日本での布教について述べる場面があります。


このことについては、同志社大学の神学部客員教授であり、作家の佐藤優氏が「日本人がキリスト教を「拒絶」した本当の理由」で(現代ビジネス)で遠藤周作の原作について次のように述べています。

「日本が中国に近接し、漢字、仏教、律令などの中国文明の成果物を受け入れつつも、中国や中国人に同化しなかったのは、フェレイラが「沼地」と表現するところの強固な日本文化があるからだ」

そして、現代においても、「人権や家族に対する感覚、経営スタイルなど日本固有の文化を脱構築することは不可能だ。言い換えるならば、日本という「泥沼」でも生きていくことが出来るように品種改良された苗しかこの国には根付かない。」。

たしかに、中国文化や明治以降の欧米文化は、当時の既存の日本文化を圧倒するインパクトでやってきましたが、日本人はそれらに飲み込まれずに、消化・吸収して独自の文化に作り上げて行ったといえます。宗教の仏教でさえ中国や東南アジアのものとは異なり、独自性のある日本仏教をつくりあげていきました。


文化庁による調べでは、日本でのキリスト教人口は全人口の1.5%ほどとのことです。戦後は政治的な規制もなく自由な布教活動ができているにもかかわらず信者数は伸びていません。

私の叔母はキリスト教系の幼稚園の教師でした。幼稚園から大学まで、ミッション系の教育機関は仏教系と比べても決して少なくはないでしょう。

(世俗的なイベントではありますが)クリスマスや教会式の結婚式は抵抗なく受け入れられ、「イエス・キリスト」や「ノアの箱舟」といった聖書にまつわる話は子供の頃から馴染んでいて、マザーテレサに共感する人は多くいます。

キリスト教に対するネガティブな要素は少ないように思えます。

また、日本で最初に布教活動を行ったザビエルは「彼ら日本人は予の魂の歓びなり」という言葉を残したように日本に好意的でした。戦国時代は10名ほどですが、キリシタン大名もいましたし、戦前、戦後を通して首相の約13%がクリスチャンだそうです。


コラムニストの堀井 憲一郎氏が牧師と対話した「『キリスト教は日本文化の敵だ」と書いたら牧師さんに感謝された理由」(現代ビジネス)というコラムがあります。辛辣なことも述べられていますが、「キリスト教の布教にとっての最大の課題は無関心である」という問題意識を持つ牧師との対話について書かれています。(もちろん日本にキリスト教徒が増えないことに関しては、科学との関係などさまざまな考えや説があります。)

日本人はキリスト教の表面的な部分を取り入れつつ、核心の「信仰」に対しては「無関心」という壁を(無意識であっても)つくっているかのようです。

フィリピンでは9割以上がキリスト教徒です。

以前お話したように、私は海外(フィリピンしか知りませんが)に出て、日本での生活の中では縁遠い「一神教」について関心を持ちました。

マイノリティな存在である自分が、ここで生きていくには、周囲の人々を理解し信頼し合うことが大事です。「信仰」も重要なファクターのひとつであり、信じるか信じないかはその先にあることで、まずは、「無関心」という壁を取り払い、バイアスをかけずに理解し、知ろうとすることが第一歩だと思ったのです。

フランス・パリで起きた事件

2015年1月7日にフランス・パリの週刊風刺新聞『シャルリー・エブド』の本社にイスラム過激派テロリストが乱入し、編集長、風刺漫画家、コラムニスト、警察官ら合わせて12人を殺害、それに続く容疑者の射殺に至る「シャルリー・エブド襲撃事件」が起こりました。

そして同年年11月13日にフランスのパリ市街と郊外(バンリュー)のサン=ドニ地区の商業施設において、ISIL(イスラム国ないしIS)の戦闘員と見られる複数のジハーディストのグループによる銃撃および爆発が同時多発的に発生し、死者130名、負傷者300名以上を生んだテロ事件である「パリ同時多発テロ事件」は当時大きなニュースとなりました。

そしてまた大きな事件が起きてしまいました。

10月16日、パリ近郊で中学校の歴史と地理の教師サミュエル・パティさん(47)が刃物で首を切断され殺害されました。表現の自由の授業の一環として、「シャルリー・エブド襲撃事件」のきっかけとなった「イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画」を見せたことが原因だとされています。実行犯は射殺されました。

この事件は表現の自由とヘイト、無神論的な世俗主義と宗教、さらには国際問題にまで発展しかねない(多くのイスラム諸国は冷静な姿勢を示しています)、複雑な問題となっています。

フィリピンも宗教に関する問題を抱えています。

外務省HPによればフィリピンはASEAN唯一のキリスト教国で国民の83%がカトリック、その他のキリスト教が10%ですが、イスラム教は5%(ミンダナオではイスラム教徒が人口の2割以上)もいます。

マゼランがフィリピンに到着した時代はすでにイスラム教が浸透していました。

フィリピンでは今回紹介した「諸聖人の日」や「クリスマス」のようなキリスト教関係のほか「ラマダン」というイスラム教の行事も祝日となっています。互いに尊重しあい、併存しようとする意図だと思います。

人類の歴史では、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、仏教と宗教を問わず、世界のどこかで異民族に対して、あるいは同じ民族間においても、誰かが差別や迫害を受けてきました。

現代社会において、宗教が関係する出来事を「正しく読み解く」には、正しい宗教の知識と理解が必要です。

これらの問題についても、先程お話した小原教授の授業「宗教と平和」をいつか取り上げたいと思います。

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