Jonnah John Ungab弁護士(CEBU DAILY NEWSから)
事件の内容
2月19日にセブでは大きなニュースがありました。弁護士がバイクに乗った二人組に射殺されたというニュースです。
弁護士の名前はJonnah John Ungabで、この事件が注目されているのはただ弁護士が殺害されたというだけでなく、ケビン エスピノサという人物の弁護士であることもあります。しかも白昼の市街地で法廷審問の直後に車に同乗していた妻の目の前での殺害というショッキングなものでした。
事件はいろいろなニュースサイトで取り上げられていますが、車で移動中にバイクに乗った二人組に銃撃され頭部に2発の銃弾を受けマンダウエのチョンワ病院で死亡が確認されたとのこと。奥さんも同乗していましたが彼のみが銃撃されたことからも強盗目的などではなく明らかに殺害を目的としていることが分かります。
そして Ungab弁護士が弁護していたケビン エスピノサという人物は後述するローランド エスピノサの息子であることから殺害理由についてもいろいろな憶測を呼んでいるようです。
殺されたUngab弁護士についてはエスピノ氏だけでなくダバオなどの麻薬組織の容疑者の弁護もしておりドゥテルテ政権の超法規的な姿勢に反対する請願をした弁護団の一人とのこと。また、ロンダ副市長(Ronda’s vice-mayor)という肩書もあるようです。
Ungab弁護士については Cebu dairy newsの「Who is Atty. Jonnah John Ungab?」に書かれています。
実はこの事件のニュース自体は知っていたのですが、うちのドライバーの友人のオペレータがこの弁護士と知り合いだったとのこと。その雑談をして、あらためていくつかのニュース記事を読んでみました。
事件の背景
ケビン エスピノサ被告の父はレイテ島の元アルブエラ(Albuera)市長のローランド・エスピノサです。
彼は当時ドゥテルテ大統領が麻薬撲滅戦争を宣言している中での渦中の人物で、麻薬組織のボスとされ大統領から出頭を促されていました。2016年8月3日に支持者6人が射殺され、身の危険を感じ出頭し刑務所に収容されたのですが、同年11月5日に刑務所に収監されていた刑務所内で警察官に発砲したとして射殺されました。このニュースは日本でも取り上げられました。(後にNBI(フィリピン国家捜査局)はエスピノサは無防備だったという捜査報告を出しているようです)
また、同年8月23日にはケビンエスピノサ被告の弁護士ら二人が今回と同じようにバイクに乗った狙撃手から撃たれ車内で死亡した事件もありました。
今回の事件でUngab弁護士は先ほど述べたように他の麻薬容疑者の弁護も行っていて、ニュースの中には麻薬組織との関係の疑いについてのものもありますが、おおむね人権派の弁護士であるという見方のようです。
フィリピンは麻薬戦争のまっただ中?
実際にセブに滞在していると、もともと麻薬などとは関わりのない生活をしていたせいか、麻薬戦争といっても変化はあまり感じず今までと同じような日常が続いています。しかし、話を聞くと販売ルートへの取り締まりは確実に実行されているようです。
日本でもマニラの刑務所は満員というニュースが流れましたが下の写真は2016年11月6日付けAPFBBの「麻薬取引関与疑いの町長、刑務所で警察が射殺 フィリピン」のマニラのケソン市の刑務所の写真とのことです。この記事では、ケビン エスピノサ被告の父に関する事件について書かれています。
つい最近の話ですがセブでも警察の留置場は寝るスペースもなく夜はかろうじて交代で横になるとのこと。セブの刑務所は囚人ダンスで観光名所にもなっている所ですが、やはり囚人の数が増えすぎ、食事はシャベルで大皿に盛られ食べるような状況とのこと。
2017年8月にはマニラ首都圏で麻薬の売人とされる高校生が射殺されるという事件があり、無抵抗だったこと、そもそも冤罪ではないかと過去最大のデモが起きました。麻薬戦争においては外国人であっても冤罪や巻き込まれたりする可能性はあります。
フィリピンでの危険回避について
フィリピンで外国人が一番多く被害にあうのはスリや置き引きなどと思いますが、ここでは強盗、殺人、誘拐などの重犯罪についてお話しします。
私が車でバイクとの事故を起こした時の話です。私の方が過失割合としては高いもののどちらも交通違反を犯している状況でしたが、私が外国人であること、事故処理を行うシートンのオフィサーに事故だとどうしても車の方が悪くなると言われたことこともあり、こちらの損傷及びバイクの修理代を持つことで示談としました。
しかし、誰かの入れ知恵かそのうち修理の見積もりもちゃんと出さずに現金で支払うよう要求してきました。最初は現物補償して終わると思っていたのですが納得できず弁護士に相談しました。対応としては相手の言うとおりに現金を支払い、ちゃんとした示談書をつくるというアドバイスでした。もめると危ない連中が関わってきたりする恐れがある。他の友人も同意見でした。
今回の事件の弁護士でなくとも弁護士という仕事はトラブル処理ですから常に危険に巻き込まれる可能性はあるので危機管理意識は高いと思われます。フィリピンで生活するには多少臆病すぎるくらいでも、とにかく巻き込まれないというのが大事だということだと思います。
この辺りは、フィリピンにおいては例えば『強盗に会ったら抵抗せずに素直にお金を出すように』というアドバイスにも共通しているかなと思います。納得できなくても災難だと思ってとにかくそれ以上のトラブルに巻き込まれないことが必要だと。
外務省海外安全ホームページの「フィリピン基礎安全データ」では(2)で殺人事件は日本の約13倍,強盗事件は日本の約9倍というデータが示されています。
『フィリピンでは,一般市民でも,警察に登録し許可を取得することにより,合法的に銃を所持・携帯することができるため,銃器が相当広く出回っています。フィリピン当局によれば,比国内には登録されていないけん銃及び登録が未更新のけん銃が少なくとも100万丁以上あるとされており,このため,物盗りまでもが銃器を使用して犯罪に及ぶことが多く,夜間はもちろん,人通りの多い昼間の市街地でも被害に遭う可能性があります。外国人はフィリピン人よりも裕福であり,銃器も所持していないため,反撃してこないと見られていることから,犯罪の標的とされやすいので,長期滞在者・旅行者を問わず注意が必要です。こうした被害を防ぐためには,歓楽街や人通りの少ない裏通り等の一人歩き(特に夜間)を避けることも重要ですが,万一被害に遭った場合は,絶対に抵抗せず,冷静に対処することが大切です。なお,金品を渡そうとして慌ててポケットやカバン等に手を入れようとすると,銃を取り出そうとしていると誤解され,危害を加えられるおそれもありますので注意してください。』
とあります。また(3)の誘拐について
『誘拐は,無差別的な犯行とは異なり,その多くは計画的なものとされています。危険とされる地域への訪問や立ち入りは避ける,目立つ服装や行動を慎む,口論や争いを避け,他人の恨みを買わないよう言動に注意する,パターン化した行動を避ける,不用意に不特定多数の人間に自らの身辺情報を流さない等の対策を講じ,誘拐の対象とならないよう日頃から慎重な行動を心がけることが大切です。』
神経質になりすぎたらせっかくの南国でリラックスして楽しめないではないかと思われるかもしれません。
何年も住むと信頼できる友人ができてきます。自ら危険な場所に足を踏み入れることなくそれらの友人などとのコミュニティの中にいる限りにおいては、四六時中気にするようなことはなく過ごせるのではないかと思っています。
あと、日本人から「フィリピンでは日本人に気をつけなさい」と言われることもあります。詐欺などもそうですが、殺人などの重犯罪は実行犯はフィリピン人であっても実は日本人同士のトラブルであったというケースも多いらしいです。
とにかくトラブルはなるべく避け、それに繋がりそうな人間関係は最小限度にすることが大事だと思います。(とはいっても気にしすぎてもというのはあります。)
フィリピンの麻薬問題についてはドゥテルテ大統領の麻薬戦争宣言、非合法殺人などで日本でも注目されていますが、その歴史や背景なども含め非常に複雑です。関係する情報も非常に多く錯綜しています。今後もいろいろ調べて考えていきたいと思います。
今回は色々な記事を参考にしました。
今日は重たい雰囲気になってしまいましたが明日はやっと「山の中のプールに行った話」をアップできると思います。ではまた。