セブ市は「ECQ」から「MECQ」へ、と思ったらまだ「ECQ」
フィリピンの「コミュニティ隔離措置区分」
- ECQ(Enhanced community quarantine);強化されたコミュニティ隔離措置
- MECQ(Modified enhanced community quarantine);修正を加えた強化されたコミュニティ隔離措置
- GCQ(General Community Quarantine) ; 一般的なコミュニティ隔離措置
5月12日にフィリピン各地におけるコミュニティ隔離措置の変更が発表されました。
5月15日以降、5月31日まで「MECQ」及び「GCQ」を課す地域とコミュニティ隔離の解除を行う地域に分けられました。
セブはマニラ首都圏同様にこれまでの「ECQ」から「MECQ」に変更されるとのことでした。しかし最新のニュースではフィリピン国内でセブ市と隣のマンダウエ市のみ「ECQ」が据え置かれ、マニラ首都圏などは当初の発表通り「MECQ」に変更されるとのこと。
政府や自治体の発表が急に変更されることは、平時でもあることですし、特に今はやむを得ないところですが、規制に違反して逮捕されるケースもあるようですので知らずに違反しないよう気をつけなければ。
「ECQ」開始当初はセブよりマニラのほうが感染者数も多く推移していたのですが、刑務所やバランガイでの集団発生などもあり、ここに来てとうとうフィリピン全土で一番解除が遅い状態となってしまいました。「やばいよやばいよ」です。
「ECQ」下では大勢の失業者が生じ苦しい生活が続く
※具体的な状況はセブ州内でも自治体やバランガイによって異なったり、急に変更になる場合もあるので、常に最新の情報を確認する必要があります。以下にお話する内容は私が住んでいるセブ市マボロ地区の状況です。
休校
セブでは「ECQ」が宣言される前からまず学校が休校になりました。この学校には日本人も多く学んでいる英語学校も含まれています。
うちは甥っ子と姪っ子が本来幼稚園に通うはずだったのですが、今の時点では義務教育諸学校の再開は8月か9月位になる見込みとのことです。ちなみに通常は4月、5月が夏休みで6月から新学期が始まります。
交通機関
「ECQ」開始に伴い ジプニーやタクシー、トライシクル、ハバルハバル(バイクタクシー)などの公共交通機関はすべてストップしています。(指定区間のみ公共無料バスが運行しています)
今後「MECQ」や「GCQ」になると規制が緩和されていきますが一気に解除ではなく、台数規制やソーシャルディスタンスを保持する方法など段階的な解除に向けての具体的なルールが決められていくと思われます。
日本とフィリピン間の渡航手段
日本への直行便はセブ・マクタン空港からは運行中止となっています。
マニラからは成田までは直行便がでていますが、かなり高額となっています。
他国経由のトランジットも現在では中止されるなど現実的には難しい状態です。
セブからマニラまでは国内線航路、海路ともに運行中止となっているので行き来する手段がありません
ネットでフライト情報を調べる場合は従来の便がそのまま掲載されていて実際は欠航になっている場合があるので注意が必要です。
また、日本・フィリピン間で渡航しようとする場合は航空便だけでなく、入国規制や検疫などを確認する必要があります。現在成田空港からは公共交通機関の利用での帰宅が認められておらず自家用車などの手段がない場合は14日間のホテル等での観察が義務付けられています。(参考 成田空港から入国する際の検疫手続について (厚生労働省 成田空港検疫所))
今後も、最新の情報で大丈夫だとチケットを購入できたとしても渡航日までに状況が変わる可能性もあり、日程を組むことはとても困難な状況と言えます。
外出制限
「ECQ」では食品や生活用品を売るスーパーやドラッグストアなどを除き小売店は休業を余儀なくされています。外出制限もかかり、各家庭に配られた許可書でひとりしか認められません。
(もっともうちは自家用車がなく徒歩なので治安も心配ですし買い出しには近所の親戚から許可書を借りて家族が複数で出かけています。)
収入
失業者や休業により無収入となった者の数は相当な数に上ります。一般の工場は休業になっているようです。
ITパークのコールセンターに親戚が働いているのですがコールセンターは職員が通勤しなければ業務を行うことが認められているとのことで泊まり込みで働いているそうでです。
先程述べたように公共交通機関もストップしているので私もドライバーたちも無収入、厳しい状況が続きます。
政府などからの補助
まず「LTFRB」( 陸上交通許認可規制委員会 ; Land Transportation Franchising and Regulatory Board )からドライバーに現金支給をする予定とのことで名簿を送付したしたのですが依然支給されていません。
一方「SSS」(社会保険機構;Social Security System)に加入しているドライバーは6,000ペソ支給されたのですが「BIR」( 内国歳入庁;Bureau of Internal Revenue:BIR )の「TINナンバー」(納税者識別番号;Tax Identification Number) が必要とのことで、それを持っていないドライバーは受給できませんでした。
自治体であるバランガイからの支給はシングルペアレントとシニアのみ6,000ペソの支給があるとのことでした。このへんの基準や実態は州や自治体、あるいばバランガイによってもバラバラのようです。
食料は、うちには25キロの米と缶詰などの支給が一度ありました。
治安
このような状況が続くと当然のことながら治安が心配になります。 在セブ領事事務所からの安全情報メールでは 3月下旬にITパークやマボロ地区で日本人が路上強盗にあったとのことです。外国人は狙われやすいので特に注意が必要です。
「バヤニハン」の精神
フィリピンではバヤニハン( Bayanihan )という 伝統的相互扶助慣行 があります。日本語に訳すと「助け合い」という意味になります。タガログ語ですが、セブアノ(ヴィサヤ)語でも同じです。
英語ですが詳しい説明がこちらにあります。「The Bayanihan Spirit」(The Mixed Culture)
よく知られているのは、引っ越すときに家ごと新しい場所に移動することがあり、下記の写真のように家族や親戚、地域の人たちが協力して引っ越し作業をするものです。
これらは食事を提供する程度の無償の労働提供で行われ、農作業、家屋の建築、冠婚葬祭など生活面で、特に必要とされるときに何の見返りも期待することなく互いに助け合うものです。
うちのカミさんも子供の頃住んでいた田舎で実際に家を運ぶ様子を見た事があるそうです。
- WIKIMEDIA COMMONSより
フィリピンの新型コロナ対策は法律や施策が複雑だったり、混乱を招いているなどの批判もあるようですが、新型コロナ対策の「共和国法第11469号」は、この「バヤニハン」を用いて「Bayanihan to Heal as One Act( 一丸となって治療を行うために助け合う法律 )」と名付けられています。
日本の「 新型インフルエンザ等対策特別措置法 」よりなんか「ガンバろう」感がありますね。
この法律の詳細は「 【フィリピン】大統領の権限強化による新型コロナウイルス感染症対策 」(海外立法情報課 日野 智豪) <国立国会図書館デジタルコレクション >に説明があります。
「助け合い」で困難をしのぐ
以前の投稿で「それぞれが自分にできることで「支え合う」日々を過ごしています。」 とお話しましたが、カミさんとは、「こういうときだからこそ、こまめにドライバーの状況を確認し、必要であれば手立てを打つことや、ご近所さんや友人などに気を留めることが大事だよね」と話しています。
私の場合、固定費はそれほどかからないこともあり、また、幸いなことに新車を購入するための預金があったのでそれでしばらくは何とかなりそうです。
今、親戚の子供を預かっています。ただでさえ狭い家がますます狭くなっていますが、厄介と感じずこれもまた当たり前と思うのは先程の「 バヤニハン 」なフィリピン的な生活に慣れてきたこともあるのかもしれません。(平時でも一時帰国から戻るとかカミさんの従姪(いとこめい)の彼氏が住んでいたり、など)
子どもたちは明るく元気です。大人たちも時々カラオケをするなどして何とかやっています。
悩んでも今の状態は個人ではなかなかどうかなるものではありません。「いいことは何にも無い」と思えばそれまでですが、困難な時期に助け合うことが将来にとって何かプラスになるとも思えば少しは前向きになれます。
「不安」と「恐怖」に支配されないように
ツイッターでも投稿しましたが、日本赤十字社の動画「ウイルスの次にやってくるもの」 ←(リンク切れ)「新型コロナウイルスが引き起こす”3つの感染症”」 で語られていることは大事だと思います。
ウィルスは体だけではなく心や社会を蝕む感染を引き起こす怖さがあります。
ロックダウンや自粛が続くと 運動不足や経済的な問題なども生じてきます。また、鬱(うつ)やDV(ドメステック・バイオレンス)などの問題や自粛警察や差別、他者への偏見や誹謗中傷など心が荒れてくることが心配です。
私が日本での仕事をやめたのは鬱(うつ)状態であったことも一つの原因です。フィリピンに住むようになり、気持ちは随分と変わりました。しかしこのところその頃の気分に戻ったような気がするときがあります。生活のリズムもすっかり狂っています。
最後に外出したのは確か3月25日で、それ以来全く外出もせず家にこもる生活が続いており、運動不足に太陽の陽を浴びていないこと、さらにここにきての暑さが効いてきます。
段階的解除になってもタクシーなどは、最初は台数制限が設けられるかもしれませんし、当面はドライバーの稼ぎを優先させ、オペーレーターの収入はあまり期待できないと覚悟しています。
(それでもおそらく観光などのインバウンド関係の回復は最後の方になるでしょうから、そういった関係の事業をしている方はもっと大変だと思います。)
明日のことは思い煩うことなかれ
只今中断中で仕切り直しして再開しようと思っているブログ投稿の「セブで聖書を読んでみる」ですが前にも投稿で触れたました聖句を振り返りたいと思います。
聖書のマタイ6章33,34節 「まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添えて与えられるであろう。 だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。 「だから、明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である。」(口語訳)
小説及び映画の「風と共に去りぬ」のラストでの主人公スカーレットオハラのセリフ「Tomorrow is another day」もこの聖句がベースにあるとされています。映画の和訳では「明日は明日の風が吹く」。
「風と共に去りぬ」は私が二十歳のころ都内の何処かの名画座で確か「戦艦ポチョムキン」と併映だったような気がするのですがオールナイトで観たのでした。
欧米の映画は直接聖書を題材にした「十戒」のような作品だけでなく聖書や信仰、キリスト教文化などが重要な要素となっていたり、あるいはアイテムになったり神父や牧師が登場する映画はたくさんありますね。
「炎のランナー」、「ショーシャンクの空に」、「タイタニック」などは好きな映画です。 (みんな古いなあ!)
さて、ここで「明日のことは思い患うな」は、「運を天に任せる」と似ているような気がします。何もせず運を天に任せても結果は見えています。自分ができるだけのことをすればあとはあれこれ思い煩ってもどうなるものでもありません。
ちなみに、いま話題のゲーム「あつまれどうぶつの森」の「任天堂」は明治22年創業で当初は花札や日本で初めてトランプを製造したのだそうです。 社名の由来は「運を天に任せる」という説があるそうな。
そうであれば社名にするくらいですから単純に辞書にある「成り行きに任せる」とかあるいはギャンブル的な「一か八か」(それはそれで凄い命名ですが)というよりかは「やれることを精一杯やったらあとは天に任せる」という意味合いでつけたのかなあとも思うのです。
自分でできる限りでいいからがんばろう。