私は20歳の頃に肺気胸という病気になりまして、この病気は軽い人は安静にしていれば治る人もいるのですが、私の場合は手術をして、それ以来タバコはやめました。
その代わりというか、お酒をたしなむようになりました(もっとも体質的には飲むとすぐに真っ赤になってしまうので、量はあまり飲みません)。
40代になって脳腫瘍の手術をして以来、外で飲むこともすっかり減り、今もまた一昨年の手術以来、ビールも控えています。
好きなお酒の種類ですが、日本酒から始まり、カクテル、ウィスキー、ビール、焼酎とあれこれハマっていました。
30代の頃は仕事も結構忙しくて、夜9時や10時までの残業が恒常化しいました。でも、その頃はまだ若さもあって帰りに一杯ひっかけたくなるときもあり、そんな時、帰路で見つけたのが、「オーセンティックバー」です。そこで、洋酒の美味しさを知ったのでした。
いつか、波風そよぐ海辺のコテージで本を読みながらグラスを傾け、やがて夕日が沈んでいく。そんな贅沢な暮らしをしたいなどと妄想しています。
自分でバーを開けたらいいのですが、それは現実的に難しいので、いつか、アパートメント(民泊・ゲストハウス)を開設できたら、その共用スペースを住民や近所が集まれる場所にして、バーカウンターを設けて、趣味で振る舞えたら最高です。(メニューは写真とレシピとうんちくを載せて)
今回はカクテルについてのお話です。
カクテルについて
カクテルとは
カクテル(cocktail)とは、ベースとなる酒に、他の酒やジュースなどを混ぜて作るミクスト・ドリンク(Mixed Drink)のことです。居酒屋や家飲みの定番である酎ハイやレモンサワーなどもカクテルのひとつです。(ノンアルコールのカクテルもあります。)
原始的なカクテルが作られはじめたのは、古代ローマや古代ギリシャ、古代エジプトの時代だったと考えられています。これは、当時のアルコール飲料(ワインやビール)の質が現代に比べてはるかに劣るもので、その味を改善するための手段でした。
カクテルの語源
語源は、諸説あって定かでないのですが、代表的な説としては、次のようなものです。私がバーのマスターに教わったのも、この説でした。(世界的なバーテンダーの組織である国際バーテンダー協会(I.B.A)のテキストに記載されている説)
「昔、イギリス船がメキシコの港町に到着し船員たちがある酒場に入ったところ、少年が木の枝を使ってミクスト・ドリンクをつくっていた。船員のひとりがそのドリンクの名を知りたくて尋ねると、少年はその木の枝のことを聞かれたと勘違いして、その形が雄鶏の尻尾に似ていたので「オンドリのしっぽ」という意味のスペイン語で答えたところ、これを英語に訳したテール・オブ・コック(Tail of cock)が、やがてCocktail(カクテル)へと転じていった」というもの。
フレアバーテンディング
カクテルというと、昔、映画館に観に行ったトム・クルーズ主演の「カクテル」で描かれたような、派手なパフォーマンスで作るスタイルを思い浮かべる方もいるかもしれません。
- 1989年公開
- その頃、トム・クルーズはまだ26歳、「トップガン」「ハスラー2」とたて続けに話題作に出演してブレイクしていました。
- しかし、この作品はその年の最低作品を選ぶ「ゴールデンラズベリー賞」に作品賞と脚本賞で選ばれており、トム・クルーズにとっては消したい過去の黒歴史かもしれません。(私はパンフレットも買っていたので、その時は、普通に楽しめたと記憶しています。)
このようにバーテンダーがボトルやシェーカー、グラスなどを用いて、曲芸的(ジャグリングのよう)なパフォーマンスによって、カクテルをつくるスタイルをフレアバーテンディング (Flair Bartending) といいます。(英語のスラングであるフレア(flair) は、主に「自己表現」と訳されています。)
「バー」について
「バー」の種類
バーとは基本的にお酒を提供する酒場、飲食店のことを指します。
バーと名のつくものは、あとでお話する「オーセンティックバー」や「ショットバー」の他に、バーと喫茶が融合した「カフェバー」や、娯楽要素を加えた、「プールバー(ビリヤード)」「スポーツバー」、変わったとこでは「忍者バー」や「卓球バー」「鉄道バー」、接客形態によって「スナックバー」「ゲイバー」「ガールズバー」、特定のお酒の種類に特化した「ワインバー」「ビールバー」「日本酒バー」「焼酎バー」などの形態もみられます。
「バー」の語源
バー(Bar)とは英語で「横木」「横棒」「障害」などの意味があります(Wisdom英和辞典)、「チョコバー」や「バーコード」の「バー」です。
語源となった時代は西部劇の頃なので「シェーン」などの西部劇の酒場のイメージです。
これも諸説あり、「当時のバーはお酒を量り売りするスタイルで、酔っぱらった荒くれ者たちが、金を払わず勝手に樽からお酒をついで飲んでしまうので、酒樽とお客の線引きとして木の横棒を設けたところからきている」という説。
また、「店の前に馬を繋ぎとめる横木を指してBARと呼ぶようになった」という説。「その後時代が進み、その横木が必要なくなったところ、捨てずにカウンター下に設置したことによる」という説など。カウンター下に足掛け用のバー(棒)があったりするのもその名残とのこと。 「探偵うんちく『BARの語源』」(六本木探偵バーANSWER)←リンク切れ
Barはカウンター(席)の意味もある
Barが酒場を指す意味を持ったことから、アメリカ英語ではレストランバーなど飲食店のカウンターやカウンター席(counter seat)あるいはそのエリアにあるテーブル席のことも“Bar”ともよび、例えば「カウンター席に座りたいのですが」は、“We’d like to sit at the bar”というのだそうです。 バー・パブでの英語・英会話 (サバイバルイングリッシュ)、カウンターって英語でなんて言うの?(DMM英会話)
バーの別の呼び方
イギリスではバーにあたるスタイルの酒場をPub(パブ)といいます。これは、“Public House”の略称で、言葉としては「社交の場」を意味しています。また、日本でも「バル」とか「バール」(どちらも綴りは“bar”)と称するお店がありますが、これは、イタリア、スペインなどの南ヨーロッパでの軽食喫茶店、酒場(バー)の呼び方になります。
ショットバーとは
バーには「ショットバー」というものがあります。日本ではバーと呼ばれるお店は、カウンター越しでホステスが接客する場所でした。そこで提供するお酒は主にボトルキープ制のシステムで、今でいうスナックのような形態でしたが、それと区別するようにグラス1杯からカジュアルに楽しめる「ショットバー」ができたそうです。「オーセンテックバーとショットバーって何?違いは?」(Bar Marukou)
オーセンティックバーとは
さて、最初にお話した私が洋酒にハマったきっかけとなった「オーセンティックバー」ですが、先ほどお話しした様々なバーの多くは、グラス一杯から提供する「ショットバー」の形態です。その意味では「オーセンティックバー」もショットバーともいえますが、「お酒を味わう」ということにこだわったバーになります。
「オーセンティックバー」のオーセンティック(authentic)とは「本物の」とか「真正の」という意味があります。そこからファッションなどにおいても、「本格的」なとか「正統派」という意味で使われます。
店構え
まず、店によってバーテンダーのこだわりがみられますが、スタンダードな店内の雰囲気は下の写真のような感じです。写真にあるように、カウンターの後ろバックバーと呼ばれる棚があって、酒のボトルが並んでいます。店内はカウンター席中心で、少し暗めで、間接照明やキャンドルなどで重厚な雰囲気を醸し出しています。
Aamazon.comから漫画「BARレモン・ハート」
「バーテンダー」の服装は上の写真の「BARレモン・ハートの」表紙のように、白いYシャツ、黒ベストに黒い蝶ネクタイがスタンダードです。白などのジャケットを着る場合もあります。
酒類に精通し、技術の研鑽を積んだプロフェッショナルであり、酒はもちろん、氷やグラスといった材料やツールにまで、こだわりや姿勢がうかがえます。
酒はカクテルごとに銘柄までこだわりますし、ベースとなる蒸留酒は日本酒などと比べるとボトルごとの品質にはさほど差がない(※)のですが、一流のバーテンダーになると、微妙な違いをチェックするのだそうです。
※(昔、日本酒は同じ銘柄同じ製造日の酒瓶で飲み比べて全然異なる味であったことがあります。日本酒やワインは保管状態に大きく影響されますが、蒸留酒はこれらに比べると影響は少ないためと思われます。)
また、スタンダードなカクテルでもちょっとオリジナルのテイストを入れることで、ほかとは全く異なる味わいになります。いくつものバーにいくとそれぞれ個性があってとてもおもしろいものです。
氷は板氷からアイスピックで丸く削って入れてくれます。こんな感じです。水割りでさえ、こうやって手間をかけて作ってくれるところを見ると、なお一層美味しく感じます。
ある日、バーに早い時間で一番乗りしたときに、マスターがバーテンダーの大会の練習でフルーツカットの練習をしていたと言って、ちょうど下の動画の前半にあるような盛り合わせを食べさせてくれたことがありました。動画の後半にあるようにカクテルにフルーツを添える場合、カッティング技術が必要です。手先も器用でないといけません。
バーテンダーの所作とテクニック
カクテルをつくる技法には、いくつかあります。下の動画の左は、後ほど紹介する「マティーニ」の作り方ですが、「ステア」(Stir) といって、材料と氷をミキシング・グラスに入れ、バー・スプーンで手早くかき混ぜる技法を使います。シェイクするとカクテルの味がまるくなるので、「マティーニ」のようにドライな風味を出したいときなどに用いられます。
他の客がいないときに、マスターからバースプーンを借りてテクニックを教えてもらったこともあるのですが、みると簡単そうですが、実際はそうではありません。(真ん中の動画)
右端の動画は「シェイカー」を使ったシェイクで、バーテンダーといえばシェイクというイメージもあるかもしれません。
いずれにせよ、バーテンダーの所作をみて、「あんなふうにカクテルを作れたらなあ」と思ったものでした。茶道や弓道など、正しい姿勢や体の動きというのは「無駄な部分を削ぎ落とす」からこそ、「美しい」のかも知れません。
バーテンダーとは
バーテンダーとはBar(酒場)とTender(世話人など)が合わさった言葉です。バーのすべてを任されている人といった意味にもなります。まず、バーテンダーはカクテルを美味しく作るだけではなく、接客(サービス)のプロでもあります。
「坊主バー」や「尼僧バー」というのが話題になったこともありました。今は、現役探偵がバーテンダーの「探偵バー」というものもあるそうです。(大泉洋・松田龍平さんの映画「探偵はBARにいる」という映画がありましたが……)
こういったバーは人生相談にも応じてくれるそうです。そうでなくとも、オーセンティックバーのバーテンダーは単に接客だけではなく、カウンセラーとかヒーラーなど同じような高いコミュニケーションスキルを持った人が多くいます。
常連客のぐちを聞くこともあるし、泥酔した客を相手にしたりとなかなか大変だと思います。私もお酒だけではなく、マスターと話すことで職場のストレスを和らげていた気がします。
行きつけのバー
最初に見つけたバーは、しばらく入り浸っていたのですが、常連客となじみになって、そのバー以外で飲んだりすることもありました。
他にも4件ほどいい雰囲気のバーを見つけて時々訪れたりしました。
オーセンティックバーは、一杯のお値段は(居酒屋やカフェバーなどと比べると)張りますが味の違いは歴然としていますし、雰囲気も含め贅沢な時間を過ごすことができると考えれば決して高くはないように思えます。
セブにもバーはあると思うのですが、今の生活では、なかなか手が届きません。私は、今は手術後でお酒を控えていますが、そのうち、自分でつくってみたいなとも思っています。(さすがに焼酎や日本酒は手に入りにくいですが、セブでも世界の蒸留酒はたくさん売っています。)
よく飲んだカクテルベスト5
カクテルというと甘ったるいイメージがあったのですが、本格的なカクテルはそれとは違っていました。カクテルのベースとなるスピリッツやリキュールのお話もしたいのですが、それは、また別の機会に。
行きつけのバーではほぼすべてのメニューのカクテルを飲んだと思うのですが、どれもみな美味しいものばかりでした。ここでは、最初の一杯、あるいは締めの一杯でよく飲んでいたカクテルを紹介します。
ジントニック
ベースは蒸留酒(スピリッツ)のジン。それにトニックウォーターとライム(あるいはレモン)
居酒屋などでもポピュラーなジントニックですが、ジントニックを飲めばそのバーテンダーの腕が分かるので最初に注文するならこれ、といわれるほどシンプルゆえに奥が深いカクテルです。
モスコミュール
ジンジャーの刺激がとても好きだったカクテルで、ウォッカをベースにジンジャービアー(あるいはジンジャーエール、ジンジャーワイン)適量とライムでつくります。
その口当たりの強さから、“モスクワのラバ(強情者(Moscow Mule))”という名前がつけられたカクテル。ウオツカベースのカクテルの中で最も有名なカクテルのひとつ。
1946年、ハリウッドのサンセット大通りにあるレストラン経営者のジャック・モーガン氏が大量に仕入れたジンジャービアー(ジンジャービアをそのまま飲んだことがありますが、たしかにそのままではあまり飲む気になりません)の処分に困り、カクテルにし、また、友人がやはり銅製のマグカップが売れず困っていたところこれを組み合わせ、さらにウォッカの「スミノフ」というブランドの営業マンのアイデアで売り出したところ大当たりしたとのこと(有力説)。※それが写真のような「スミノフ」と銅製マグカップの取り合わせのスタイルです。
X.Y.Z(エックス・ワイ・ジー)
一時、ラムをロックでよく飲んでいた時期があって、そのころに飲んでいたカクテル。
ベースはラムで、ホワイトキュラソー(リキュールの一種)と、レモンジュースを加えたシンプルなカクテル。エックス・ワイ・ジーは、アルファベットの終わり。すなわち“最後のカクテル”で、「これ以上のものはない、最高のカクテル」という意味。
ラムをブランデーにかえれば、「サイドカー」、ウオッカにかえると「バラライカ」、ジンにかえると「ホワイトレディ」になる。また、「エックス・ワイ・ジー」に使われる材料の比率を変えると「マイアミ」に変化する。
アイリッシュコーヒー
日本だと今の時季、冬によく飲んだカクテル。ベースとなるアイリッシュウィスキーに、コーヒー、砂糖、生クリームの入った甘めのホットドリンク。写真では普通のグラスだが、私がよく飲んでいたバーでは、取っ手のついたマググラスで提供されていた。
1940年代後半、当時、パリやロンドンからの経由地のひとつアイルランドの空港で、給油のために機外に降ろされ、厳寒の中を空港待合室にやってくる乗客のために、空港レストランバーのバーテンダーがコーヒーに特産のアイリッシュウイスキーを入れ、また酪農の盛んな国柄を印象づけるために生クリームを浮かべたことから、乗客たちに評判となり、口コミで世界中にレシピが広まっていった。
マティーニ
ジンとドライ・ベルモット(白ワインに香草などを加えたフレーバードワイン)をステアし、供する前にオリーブを添え、レモンの果皮を絞り加える。
「カクテルの王様」と称される。映画『7年目の浮気』ではマリリン・モンローが、『007』でジェームス・ボンドが愛したカクテルとして有名。 超辛口好みの、かのチャーチルは、ドライベルモットの瓶を眺めながらジンのストレートを飲んでいたという逸話もある。
(一方「カクテルの女王」はウィスキーベースでスィートベルモット、ビターズ(苦味酒)を加えマティーニと同じくステアでつくる「マンハッタン」、こちらはオリーブではなくマラスキーノ・チェリー(砂糖漬けされた甘いチェリー)を添える)
日本を代表するバーテンダー毛利隆雄氏の「マティーニ・イズム 感謝があれば、なんとかなる」を読んで、独特のテクニックで作られる「毛利マティーニ」を飲みたくて銀座まで足を運んだこともありました。
おわりに
セブはもうすぐ「シヌログ」祭りがはじまります。
シヌログというと、週末のパレードが有名ですが、実は、今年だと1月8日(金)から17日(日)までの10日間、また、関連した教会のミサなどは今月いっぱい続きます。(公式ホームページ)
昨年から、今年のパレードはオンラインになるというニュースが流れていたので、年末の格闘技イベントや箱根駅伝などが実施できるのは凄いなあと思っていました。
しかし、日本も「緊急事態宣言」とのこと。
先行きはなかなか見えませんが、踏ん張りましょう。