いzセブでバーを開けたら(カクテル編)」に続き、今回は「日本酒編」です。
私は日本酒が好きなのですが、セブに来た頃は、スーパーマーケットに行くと、ワインやウィスキー、リキュールなど洋酒は豊富にあるのですが、やはり日本酒はなかなか、手に入りにくいものでした。
一方、昨年の日本酒の輸出量は、コロナ禍に関わらず、輸出金額ベースで、総額約241億円と前年比103.1%で過去最高(日本酒造組合中央会)となったそうです。理由としては、中国、香港、シンガポールなどアジア(の裕福層)がけん引しているとのこと。1)
フィリピンの通販のLazadaでは、私も日本にいた頃に飲んでいた、サントリーの「-196˚C Strong Zero Lemon」350mlが二缶で299ペソ(送料セブ市で110ペソ)で販売していました。(今のレートで送料込みで二缶で約890円。やっぱり輸入品は高いですね。)
それでも、昔に比べたら、早く、安く、様々な品物が海外でも手に入るようになってきています。セブでもいつか「日本酒も安く簡単に入手できる日が来るかなあ」と思っています。
1)「日本酒の輸出額が11年連続で最高記録を更新、コロナ禍でもアジア圏での人気が急伸(DIME 2021/02/13)」←リンク切れ
なぜ日本酒か
地酒ブーム
私が日本酒と出会ったのは、就職してまもなくの頃。周囲の同僚らが日本酒好きで、ホームパーティ(ただの飲み会)などの際に、自分の好きな酒を持ち寄るなどして飲んでいました。
思えば、そこころは、1980年代の「越乃寒梅」を代表とする地酒ブームの影響があったのだと思われます。
私が日本酒の魅力に心惹かれたのは「ごはん粒である米からどうして、こんなフルーティともいえる味わいと香りがでるのか?」ということでした。
日本酒の悪いイメージ
当時、日本酒というと「甘ったるくて、ベトベトしていて悪酔いする」というイメージが浸透していました。
戦時中の米不足の時代に、日本酒に2倍の醸造アルコールを足して3倍の量にした三増酒(三倍増醸清酒)とよばれる酒があり、戦後も長い間造られていました。
醸造アルコールを大量に足すと薄くなるので、甘みを補うために糖類や酸味料を添加したりもしておりました。
(2006年に酒税法が酒税法が改正され、そういった三増酒は「清酒」ではなく、リキュール類や雑酒に分類されるようになりました)
また、日本には古くからの酒蔵がたくさんありましたが、大手メーカーが大量に買い上げ、いってみればブレンド(ウィスキーのように味や香りを高める目的ではなく、単に量産するため)するということも一般的だったそうです。(地酒ブームの影響もあり、大手メーカーも独自で美味しい酒を造るようになり、日本酒のイメージも良くなりました。)
「夏子の酒」
周囲の影響で日本酒を知った後、漫画「夏子の酒」(尾瀬あきら)の影響を強く受けました。(1994年には和久井映見主演でテレビドラマ化されましたが、原作は減反や無農薬栽培といった農業問題やシリアスな人間関係、それに酒造りが丁寧に描かれていて、大人が楽しめる作品となっています。)
日本酒が、これほどの手間をかけ、職人技とも言える技術で造られるということに驚きを感じ、純米酒や吟醸酒、生酒といった日本酒の魅力にはまっていき、旅行をしたら酒蔵見学をしたり、地酒を売っている酒店と馴染みになったりして、日本酒を楽しんでいました。
日本酒と行政との関係
元公務員ということで、日本酒と行政の話を。
「夏子の酒」では広島国税局の元鑑定官(かつて、後述する日本酒の「鑑評会」は国税庁醸造研究所が主催していました)が重要な役回りで登場します。
一般の食品や清涼飲料水、乳製品などの製造・販売は農林水産省と厚生労働省が連携しながら役割分担しています。しかし、日本酒など、お酒に関しては、国税庁が主務官庁となっています。
これに関しては、国会においても、食品表示法案に関する質疑のなかで「食品全般または地域活性化や食文化を担当する省庁が戦略を持って政策立案、実行すべき」、「酒類はなぜ財務省が所管するのか」、「財務大臣の権限はなぜ知事に委ねることができないのか」などの質問がなされたことがあります。1)
ちなみに「たばこ・塩の事業」も財務省所管です。酒税などは国税において重要な財源だったことの“なごり”といえます。
確かに、現代において重要な輸出など産業振興を考えれば、農林水産省と厚生労働省で、一括して所管した方が合理的のような気もします。しかし歴史のある財源と権限を移譲するというのは、そう簡単ではないようです。
参考)
酒税行政関係情報(お酒に関する情報)(国税庁)
各国税局における酒類鑑評会の結果(国営庁)
1)平成25年05月14日第183回国会 衆議院本会議 「183-衆-本会議-22号」 (国会会議録検索システム)
とりあえず知っておくといい日本酒用語と知識
これから日本酒を試したいという方に、知っておくとためになると思われる話です。日本酒の世界はとても奥が深いので、本やネットなどで詳しい情報を得るとより楽しめると思います。
日本酒と清酒の違い
日本酒と清酒というのは同じ意味でしょうか?
大辞林によれば、日本酒とは「日本特有の酒。特に、清酒をいう」とある一方、清酒は、第一義的には「日本特有の、米と米麹とで醸造したもろみを濾して得た澄んだ酒。日本酒。酒」。つまり清酒は日本酒のひとつであるか、または同義であるとされています。
一方、行政においては、「『日本酒』は、米、米こうじ及び水を主な原料として発酵させて、こしたものであり、その原料及び製法は、『清酒』として酒税法により規定されている。『清酒』のうち、米及び米こうじに国内産米を用い、日本国内で製造したものを「日本酒」と呼称している。」1)というように、日本酒は、清酒のうち、限定されたものとして定義されています。
1)「別紙1 地理的表示「日本酒」生産基準」(国税庁)及び「清酒の製法品質表示基準」の概要」(国税庁)
日本酒の歴史
紀元前4世紀頃の縄文時代末期から弥生時代初期に、稲作が日本に伝わり、それに伴い米を原料とする酒造りが始まったのではないか、といわれています。その後、奈良、平安時代には、宮廷の各種行事に麹を使用した米の酒が供されていたようです。
(ちなみに日本最古の酒蔵(酒造会社)である茨城県の「須藤本家」の創業は、平安時代の1141年以前といわれ、日本に現存する企業としては9番目に古いものです)
鎌倉から室町時代にかけては、寺院や酒造業者による醸造が盛んになり、室町幕府は清酒に課税し、財源として重視しました。戦国時代には、現在と同じ精米した米による清酒造りや、火入れ(加熱殺菌)など現代につながる製法が始まりました。
江戸時代には、さらに酒造技術が発達し、地方に江戸、大阪といった大都市へ出荷する大規模な酒造業が出現しました。明治以後、酒造機械の導入による高度精米技術の開発などにより、酒質は飛躍的に向上し、現在に至っています。
全国新酒鑑評会
春に開かれる「全国新酒鑑評会」は、明治時代に始まった全国規模の日本酒のコンクールです。かつては国税庁醸造研究所、平成12酒造年度(2000年-2001年)からは独立行政法人酒類総合研究所に、またその後、日本酒造組合中央会も加わり共催という形になっています。
受賞点数は、だいたい300近く、出品酒の約1/3が金賞に輝いています。金賞の数が多いように思えるかもしれませんが、どの蔵も、一般には流通しない、鑑評会のために造った出品酒を用意して競うものですから、とてもレベルが高く、優劣をつけるのは難しいもの、ともいえます。
鑑評会での入賞や金賞受賞はとても栄誉なことで広告もされますが、個人的には、お酒というのは嗜好品で、個人の好みの方に大きく左右されると思うので、自分に合うお酒を探すことが一番大事だと思います。
参考)
「全国新酒鑑評会」から覗く日本酒の世界(日本名門酒会)
各国税局における酒類鑑評会の結果(国税庁)
杜氏(とうじ・とじ)
江戸時代には上方の伊丹、池田などにはじまり、灘 地方で大量生産が行われ、さらに全国各地に酒造りが広まります。これらの酒蔵を支えたのが、夏場の耕作を終え農閑期の冬場に、これらの“酒どころ”に出稼ぎでやってくる職人集団で、「杜氏」と呼ばれます。
やがて、日本三大杜氏とよばれる南部杜氏、越後杜氏、丹波杜氏など、独自の技術や奥義を持つ流派を形成し、多くの杜氏が誕生していきます。
近年では、杜氏の高齢化や農村からの出稼ぎの減少など社会の変化により、社員として雇用されたり、酒蔵のオーナーである蔵元が自ら杜氏を兼ねるなど、その形態も多様化してきています。
日本酒と女性
「奈津の蔵」は、「夏子の酒」の主人公、夏子の祖母で、昭和3年に18歳の若さで蔵元の佐伯酒造に嫁いだ奈津が、義兄の遺児である菊江との難しい関係や、厳しい蔵のしきたりに苦悩しながら、酒造作りに興味を持ち始め、まだ女人禁制の意識も根強く残る時代に、酒造りに臨む姿が描かれています。どちらも甲乙付けがたい、とてもいい作品です。
「杜氏」という言葉の由来は「刀自 」といわれています。「刀自」とは、神道における戒名と同等の意味をもつ”霊号”として、女性のみに使われる敬称であり、はるか昔、口噛み酒(※)を仕込む際に必要な米を噛む役目は、巫女や穢れのないとされる処女のみが行なっていました。つまり、古来、酒造りは、女性が重要な役目を担っていたのです。
(大ヒットしたアニメ映画「君の名は」では、巫女でもある主人公の「口噛み酒」のシーンがでてきます)
※(デンプンを持つ食物を口に入れて噛むことで、デンプンを糖化させ、それを吐き出して、野生酵母により発酵してアルコールを生成する。東南アジア、中南米、アフリカなど世界各地にみられ、日本では、縄文時代後期以降に始まったとみられている。大和(古代日本)や台湾では、口噛み酒は神事の際にも造られていた。沖縄においても神事とされ、昭和10年ころまで行われていた。)
昔は女性も酒蔵で酒造りをしていましたが、女人禁制になったのは、江戸時代以降であると考えられています。
理由としては諸説あって、「酒造りにとって、納豆菌をはじめ雑菌は大敵であり、女性は家庭で糠 を触るため」や、「女性の月経による血が穢 れているとされる」といった神道的な考えや仏教の不浄などの宗教的な意味合いによるといわれます。
同じ宗教でも神道の方では「酒の神様(京都の松尾神社など)が女性なので、嫉妬をする」などというのもあります。(女人禁制で現代においても、たびたび物議を呼ぶ相撲も、神様が女性であるという子を理由の一つにしています。)
酒蔵の女人禁制に限らないことですが、男性中心の社会が形成されていく中で、「男性の権威や地位を保持する」ために男性と女性の仕事や役割を分ける事が進められ、それは、「差別のために理由づけされた区別をした」面と「区別したことにより差別が進んだ(あるいは固持された)」という両方の面があるように思えます。
酒造りにおいても、女性が仕事場に入ると色恋沙汰になったり(杜氏は、昔は集団で家族のように暮らしていた)、昔の若手教育は怒鳴ったり手を挙げるなが普通であったことなど、「女性と一緒に仕事をするとやりにくい」といった男性側の理由によるものが大きかったと思われます。
それは、、現代であれば「パワハラ」や「セクハラ」になるような、そのようなトラブルを防ぐとともに、当時の酒造りは体力も必要で、危険(昔は死亡事故もあったようです)な職場でもあり、好意的に捉えれば、その時代においての女性を守る手段であった、という側面もあったかもしれません。
しかし、そういった問題や障害も、時代とともに徐々にクリアされ、現代では女性杜氏も増えてきています。
それは、「夏子の酒」や「奈津の蔵」で描かれたような、情熱をもち、困難に立ち向かい、男性以上に努力を積み重ねた女性たちのうえにある、ということを忘れてはならないでしょう。
参考)
酒蔵が「女人禁制」になった理由─ 時代に合わせて変化する、造り手の働き方(SAKETIMES 2018/07/25)
女人禁制はもう古い!酒蔵で働く女性のはなし(菊の司酒蔵株式会社 2020/02/07)相撲における「女人禁制」の伝統について(吉崎祥司、稲野一:北海道教育大学紀要)←リンク切れ
日本酒の製造
原料(水)
日本酒の製造にとって大事なのは醸造用水で、品質を劣化させる鉄分が少ないなど良質であることが必要で、水道水より厳しい基準が定められています。日本酒の美味しさは、杜氏や酒蔵の技術はもちろんですが、「名水の地に酒蔵は集まる」1)といわれるように、水質の違いが、醸造工程中の微生物の働きなどに関係し、酒質に影響を与えます。
1)日本酒造りにおける「水」の重要性(SAKETIMES 2016/07/05)
原料(米)
清酒に使用される原料米ですが、特に吟醸酒や純米酒などでは、食卓で食べられる一般米より大粒の、酒造好適米と呼ばれる醸造専用の品種が主に使われます。
全国で123種類以上ある中で、有名なものとして「山田錦」、「五百万石」、「美山錦」、「雄町」等があります。特に鑑評会では、“酒造好適米の王様”ともいわれる「山田錦」で作られた酒が高い評価を受ける傾向にあります。
(夏子の酒では「龍錦」という“幻の酒米”がストーリー上も重要な要素となっていますが、そのモデルとなったのが実在の「亀の尾」(※)という酒米です。
※(亀の尾は、阿部亀治が1893年に、近隣の田んぼで、冷害のなか耐えて丈夫に実っている3本の穂を見つけ、それを数年間、試行錯誤しながら育てあげました。
しかし、害虫などに弱いうえ、化学肥料や農薬を使うと米が極端にもろくなるという弱点を持っており、現代の農法に向かず、徐々に姿を消していきました。)1)
亀の尾は、近年になって自然指向の波に乗り、醸造家により自家栽培され、全国に広まりつつあり、亀の尾による酒であることをラベル表示した日本酒も増えてきています。
参考)
【亀の尾】今さら聞けない酒米の話|亀の尾で造った日本酒の銘柄6選も! (美味しい日本酒 by Forbul 2019/04/22)「幻の米、亀ノ尾」(庄内町) ←リンク切れ
原料処理(精米)
玄米の外層部には酒質を劣化させる原因となるたんぱく質などの成分が多いことから、これを削り取って白米にします。
この削り方の度合い(重量)を精米歩合という割合で表示します。飯米の精米歩合は 90%程度ですが、一般酒の精米歩合は 70%程度、大吟醸酒になると40%以下まで精米します。
一般的には、精米歩合の値の低い方が、雑味が少なく、香りもよい美味しい酒ができるとされ(※)、「全国新酒鑑評会」で金賞に選ばれる日本酒の傾向を示す言葉として「YK35」というものがあります。「Y」とはと呼ばれる「山田錦」、「K」とは日本醸造協会が定めた「きょうかい酵母(とくに9号)」、「35」とは精米歩合(35%)を意味します。
※(一方、純米酒などは精米歩合の値が大きくても良質の酒が造られることから、従来の精米歩合による縛りが廃止される、ということもあります。)
酒づくりの流れ
精米した白米は、一定期間貯蔵後、表面についている米ぬかを水で洗い流してから(洗米)、水に漬けて適度に水分を吸わせて(浸漬)、蒸します(蒸し)。
その蒸米と麹菌 から米麹 をつくり、その米麹と、蒸米、水、乳酸菌及び清酒酵母(※)から酒母 を仕込みます。その酒母をタンクに移し、水、麹、蒸米を加えたものがもろみで、もろみの中では、麹の酵素によって蒸米のでん粉をぶどう糖に変わる糖化と、生成したぶどう糖が酵母によってアルコールに変わるアルコール発酵が同時に起こり(並行複発酵)、アルコール分は 18%程度となります
もろみは、圧搾機により清酒と酒粕に分けられ、活性炭で処理し、それをろ過した後、火入れ(加熱殺菌)します。これをタンクで数か月間、貯蔵熟成後、調合、ろ過、加水等の工程を経て、瓶詰殺菌し製品とします。
※(この酵母も、とても重要です。酵母は菌類の一種で、発酵食品が発酵するために必要となります。酵母が糖分を食べてアルコールを排出する際に出される炭酸ガスにフルーティな香りが含まれています。もともとは、蔵つき酵母といって、各蔵の建物や床、壁、樽などに自生している酵母を使い、それぞれの蔵独自の特色を出すものでしたが、現代では、明治39年(1906年)に設立された「日本醸造協会」が各蔵に頒布する「きょうかい酵母」が普及しています。)
参考)
酵母のはなし(日本日本醸造協会)
日本酒の種類
分類 | 特徴 |
吟醸酒 | 精米歩合60%以下 白米と米麹及び水、またはこれらと醸造アルコールを原料とする 吟味して造った清酒で固有の香味及び色沢が良好なもの |
大吟醸酒 | 精米歩合50%以下 白米と米麹及び水、またはこれらと醸造アルコールを原料とする 吟味して造った清酒で、固有の香味及び色沢が特に良好なもの |
純米酒 | 白米、米麹及び水を原料とする 香味及び色沢が良好なもの 文字どおり、お米だけで造られたもの |
純米吟醸酒 | 精米歩合60%以下 白米、米麹及び水を原料とする 吟味して造った清酒で、固有の香味及び色沢が良好なもの |
純米大吟醸酒 | 精米歩合50%以下 白米、米麹及び水を原料とする 吟味して造った清酒で、固有の香味及び色沢が特に良好なもの |
特別純米酒 | 純米酒のうち、香味及び色沢が特に良好なもの 精米歩合60%以下又は特に良好であることを製造方法等により説明表示してある |
本醸造酒 | 精米歩合70%以下 白米、米麹、醸造アルコール及び水を原料とする 香味及び色沢が良好なもの |
特別本醸造酒 | 本醸造酒のうち、香味及び色沢が特に良好なもの 精米歩合60%以下又は特に良好であることを製造方法等により説明表示してある |
大きくは原料(白米、米麹及び水を原料としたものが純米酒、醸造用アルコールを加えたものを醸造酒と区分)と、精米歩合(大吟醸、吟醸酒、それ以外と区分)によって分類されます。
吟醸酒や大吟醸は近代の精米技術などで可能になった大変贅沢な酒といえます。米から造られたとは思えない、味と香りを楽むことができます。
【原酒】上槽(製成)後、水を加えてアルコール分などを調整しない清酒をいいます。(なお、仕込みごとに若干異なるアルコール分を調整するため、アルコール分1%未満の範囲内で加水調整することは、差し支えない)
新酒・古酒(長期貯蔵酒)
新酒は、本来は、酒造年度(BY:Brewery Yearで毎年7月1日~翌年6月30日)内に造られた日本酒のことを指します。古酒は1年以上貯蔵したもので、長期間経つと光沢のある黄金色を呈し、味はまろやかになるが、老ね香(日本酒の劣化臭のこと)が強くなります。最近は10年以上という長期貯蔵酒もみられます。
生酒 ・生貯蔵酒・ 生詰
「生酒」とは、製成後、一切加熱処理をしないもの。「生貯蔵酒」とは、製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、出荷の際に加熱処理したもの。「生詰」とは、製成後、加熱処理をして貯蔵し、加熱処理しないで瓶詰めした清酒をいいます。
蔵元見学をすると、新酒の生酒を飲むことができるのが楽しみだったりしました。最近は酒屋でも手に入ると思いますが、流通から店舗での保管まで温度管理がしっかりしていないとせっかくの味が台無しになってしまいます。個人的には火入れをしていない生酒は、やっぱり美味しいと感じます。
生一本
ひとつの製造場だけで醸造した純米酒をいいます。自社の別の製造場でつくられた純米酒や他社でつくられた純米酒を混和したものは、生一本の表示はできません。
樽酒
木製の樽で貯蔵した清酒。樽酒を瓶詰めしたものや居酒屋などでも提供されたりもしますが、そのまま正月や祝宴の席やイベントなどで鏡びらきとして演出されることもあります。(私は鏡開きをした樽酒を飲んだのは一度だけかな)
阪急電鉄HPから←リンク切れ- 私も訪れたことがある京都の松尾大社。日本全国から樽酒が奉納されています。
冷やおろし
江戸時代、冬にしぼられた新酒が劣化しないように、春先に火入れ(加熱殺菌)した上で大桶に貯蔵し、ひと夏を超した頃、2度目の加熱殺菌をしない「冷や」のまま、大桶から樽に「卸 して」出荷したことからこう呼ばれ、秋の酒として「秋あがり」などともよばれます。
ほかにも、ラベル表示で見られる生酛造り、山廃とかあらばしりなどいろいろあります。製造過程と関わりがあるので興味がある方は、合わせて知るとより日本酒の深みを知ることができます。
【燗と冷や】(かんとひや)
燗の表現 | 温度 |
日向燗(ひなたかん) | 30℃近辺 |
人肌燗(ひとはだかん) | 35℃近辺 |
ぬる燗(ぬるかん) | 40℃近辺 |
上燗(じょうかん) | 45℃近辺 |
あつ燗(あつかん) | 50℃近辺 |
飛びきり燗(とびきりかん) | 55℃以上 |
[資料提供:日本酒造組合中央会]
冷やの表現 | 温度 |
雪冷え(ゆきひえ) | 5℃ |
花冷え(はなひえ) | 10℃ |
涼冷え(すずひえ) | 15℃ |
[資料提供:日本酒造組合中央会]
吟醸酒や大吟醸はせっかくの香りや風味が飛んでしまうので、熱燗にはしないほうがいいとされます。ただ、冬に熱燗はやはりいいものです。熱燗に合う酒というのもあります。いきつけの居酒屋では、好みの熱さなどを聞いてくれたりしました。好みの銘柄と熱さで味わいましょう。
日本酒の保管
「日光に当てない」「 高温の場所に置かない」というのが基本です。
清酒を1年以上置いておくと色が濃くなり、老香(ひねか)と呼ばれる独特の臭いが出てきます。この変化は温度による影響が大きくなります。生酒、生貯蔵酒、ソフトタイプ清酒は冷蔵庫での保管が必須です。
参考)
日本酒(清酒)に関するもの(国税庁)
酒類販売管理研修モデルテキスト(国税庁)
よく飲んだ日本酒
これらは、主に30年以上前に知って、その頃に飲んだものばかりです。10数年前(手術後)からは家で日本酒を飲むことはなくなりましたが(1升あると飲みすぎることがあるので、だいたいビールか缶酎ハイになりました。)、たまに飲むとやはり、「日本酒はいいなあ」と感じます。
田酒
青森県青森市の(株)西田酒造店
http://www.aomori-sake.or.jp/kuramoto/denshu.html(青森県酒造組合HP)
比較的最初の頃に美味しいと思ったお酒。とても有名になってしまいました。
明治11年創業で、久泉という醸造アルコールを添加した醸造酒を代表銘柄としていましたが、3年かけて昭和49年に純米酒のみのブランドである田酒を立ち上げました。「future4」という青森の若手杜氏4人でグループを結成するなど意欲的な活動もしています。
真澄
長野県野県諏訪市 宮坂醸造株式会社
HP https://www.masumi.co.jp/
30年位前でも、とても良く知られていた日本酒で。定番中の定番といってよく、選んで間違いない安心感がありました。
銘柄は、地元諏訪の諏訪大社の宝物「真澄の鏡」に由来します。
品評会・鑑評会の両方において、1位から3位までを独占し、真澄の酵母が、その年に協会7号酵母として全国の蔵元に頒布され、昭和期の全国の蔵元の約8~9割はこの酵母を使っていたという由緒ある銘柄。このためこの時期の日本酒の酒質を方向づけたともいわれています。
獺祭
山口県岩国市 旭酒造株式会社
HP http://www.asahishuzo.ne.jp/
よく通っていた居酒屋で出されていました。食事ともよくあいます。
昭和23年に設立、現在は獺祭のみの銘柄を生産しており、「山田錦」のみで作られています。
「村に古い獺(カワウソ)がいて、子供を化かして当村まで追い越してきた」という由来である所在地である地名の獺越から一字をとって「獺祭」と命名されました。
もろみと酒を分離する「上槽」という工程で、日本で初めて遠心分離機を導入するなど先進的な酒造りも評価されています。
浦霞
宮城県塩竈市 株式会社佐浦
HP https://www.urakasumi.com/
最初の頃に、東北旅行したときに飲んで、美味しくて、それ以来、地酒を置いている酒屋で手に入れて飲んでました。
享保九年(1724年)創業の歴史ある酒蔵。12号酵母発祥の酒蔵であり、酒名の由来は、源実朝が詠んだ和歌「塩釜の浦の松風霞むなり八十島かけて春や立つらむ」に由来します。
番外編 香露
熊本県熊本市 株式会社熊本県酒造研究所 http://www.kumamoto-sake.com/
「熊本県酒造研究所」には「きょうかい9号酵母」の元株でもある「熊本酵母」を維持・管理する研究機関と、「香露」の醸造元としての二つの顔があります。
今から、30年近く前、入手することは困難で、日本名門酒会の加盟する酒蔵による利き酒イベントで、会場と同時にまず香露のブースに駆け込み並んでやっと飲むことができる酒でした。
鑑評会で圧倒的な強さを誇った「香露」は、近年の吟醸造りのベースをつくり、吟醸という言葉が広まっていく上で、その存在は欠かせないものでした。香露から分離された酵母が、協会9号酵母になります。現在の吟醸酵母のほとんどは、この9号酵母の変形だそうです。
天狗舞
石川県白山市 車多酒造
HP https://www.tengumai.co.jp/
昭和40年代に、七代当主の車多壽郎と杜氏の中三郎が心血を注いで築き上げた天狗舞流の山廃仕込。その伝統を引き継ぎ、毎年細かな改良を重ねて現在に至っています。
由来は、昔、うっそうとした森に囲まれた蔵で、夜に木々の葉が擦れ合う音が、“天狗が打ち鳴らす太鼓の音”のように聞こえたということから。
有名な漫画の『美味しんぼ』でも取りあげられたとのことですが、それで知ったかどうかは忘れました。当時の居酒屋にも置いてあることが多く、とりあえず注文して失敗することはないので、よく飲んでました。
鳳凰美田
栃木県小山市 小林酒造
Instagram https://www.instagram.com/houou_biden743.tokuyakuten/ ←リンク切れ
銘柄の由来は、所在地の旧称「美田村」と、創業当初からの銘柄「鳳凰金賞」の「鳳凰」(※)を合わせて命名。
当時、全然知らなかった銘柄ですが、馴染みの酒屋さんに勧められて購入。しばらくの間、こればっかり飲んでました。期待値が低いとこから、感動するくらい美味しい酒に出会えることも酒好きにとっての醍醐味です。
※(中国で、聖徳をそなえた天子の兆しとして現れるとされた孔雀に似た想像上の瑞鳥。雄を「鳳」、雌を「凰」という)
おわりに
前回お話したOPPOでケースが付属していないと書いてしまいましたが、実は付いていました。透明ケースだったので、てっきり本体と思ってしまいました。投稿は追加記載して訂正しました。申し訳ございません。
セブは感染者が増えて、検疫強化されるのではという話もありますが、3月からどうなるでしょう。
ワクチンは効果うんぬんよりも、「ワクチン摂取が始まるまではこのままだ」、逆に言えば「ワクチン接種が始まればよくなる」、という心理的効果が期待されるような気がします。マスメディアによる報道の仕方による影響が大きそうですね。
今回は、日本酒についてのお話でした。いつか、バーのように日本酒を提供できる場所で、フィリピン人の人たちにも「日本酒の美味しさを味わってもらえたらなあ」と思っています。
次回は、(多分)久しぶりにビジネスに関する話題を取り上げるかもしれません。相変わらずフィリピンのお役所仕事には振り回されています。
また、ドライバーの方も、乗客数が相変わらず増えないようで、「稼げない」と嘆く声もチラホラあるのですが、バウンダリー(利用料)は依然減額しているし、ドライバーによって差があるので対応が難しいです。
タクシーの場合は、学校再開(対面授業開始は8月!!とかいう記事もあるようですが)はあまり影響ないと思いますが、モールや飲食店もまだまだコロナ以前とは比べるべくもないようですし、空港やホテルなどの観光客が戻らないと、なかなか以前のようにはならないかもしれません。
とりあえず、GCQに戻らないこと。できるだけ早くニューノーマルになってほしいと願うのみです。
皆様お元気でお過ごしください。
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