はじめに(この投稿について)
長年勤めた公務員を46歳で早期退職し、2014年に初めてフィリピン セブの地に足を踏み入れてから、早いもので、今年で丸9年になろうとしています。
そこで、今まで投稿した「9年間の振り返り」を、整理したうえ再投稿いたします。
今回のブログは2017年12月5日の投稿(※1)と2017年12月7日(※2)、2020年2月14日の投稿(※3)の該当部分をまとめたものです。
(※1)現タイトル「ニュース「「FREETEL」のプラスワン・マーケティングが民事再生申し立て」」:旧タイトル「セブで始めたタクシービジネスについて」
(※2)現タイトル「セブでビジネスやるなら不動産関係?」:旧タイトル「セブで始めたタクシービジネスについてーその2」
(※3)現タイトル「」:旧タイトル「タクシービジネスを始めてみたら【セブの5年間を振り返る6(最終回)】)」
ブログを始めた理由
私がフィリピンビジネスを始めたのは、初めてセブに来た翌年の2015年のことでした。
その頃は、今ほどインターネットの情報も多くなく、フィリピンビジネスに関する情報を得ることに苦労しました。
そういったこともあり、何とかスタートさせた「タクシービジネス」3年目の2017年に、私の経験なども発信しようとこのブログを始めたのでした。
では以下の予定でお話したいと思います
1「フィリピンビジネス セブで収入を得たい!!」(セブ暮らし7)←今回
2「オンボロタクシー1台からの出発(1年目前半)」(セブ暮らし8)
3「新車が大事故、ビジネスパートナーの失踪と苦難の連続(1年目後半から2年目)(セブ暮らし9)」
4「悪戦苦闘の末、軌道に乗ると思ったら問題発生(3年目以降)(セブ暮らし10)」
5「タクシーマネジメントをアキラ先輩の動画をもとに解説」
6「フィリピンビジネスにっついて思うこと(9年目のホンネ)」
無職・無収入状態からの脱却
どうやって生活していくか
まだ英語学校で勉強していた1年目のこと。
3ヶ月ほどで寮を出てアパートで一人暮らしを始め、フィリピンの雰囲気にもだいぶ慣れきて、前回までにお話したように「セブで暮らしたい」と思うようになってきます。
そこで、考えるのが今後の生活設計です。
在職中に、なにか資格を取るとか、スキルを身に着けておくとかしておけばよかったのですが、全く後先を考えずに退職したものですから、今後の人生設計もノープランです。
私が公務員を早期退職したときの「退職金」と65歳で支給される「年金見込み額」はユーチューブ動画で公開していますが、「65歳まで約20年をどのように生活していくか?」、「65歳以降も年金だけで暮らしていけるのか?」、考えなければなりません。
就職するかビジネスを始めるか?
セブに来たときが46歳、退職金を切り崩していけば、その分、年金生活が厳しくなります。
最低でも生活費分は稼ぎたいところです。
ただ、漠然と、セブで暮らしながら収入をえられないだろうか?と考えていました。
考えられるのは、自分でビジネスを立ち上げる。あとは現地採用で就職、海外ノマドワーカーなど。
現地採用は?
日系企業でマネジメントを行う職種だと、最低でも英語力が必要とされます。今の英語力でも無理でしょう。
コールセンターは、英語力は必要ありませんが、日本での仕事を辞めたのに、すぐに同じような生活に戻ることには積極的にはなれませんでした。
コールセンターは、もう少し他の方法を試した後に考えることにしました。
海外ノマドワーカーは?
セブでは翻訳業や、IT関係のノマドワークをしている人と出会いました。
結構理想的な働き方に思えます。当時、世界中でもワーストクラスと言われていたフィリピンのインターネット事情は、あまりいい環境ではありませんが、それでも何とか大丈夫のようです。
しかし、自分は特になにかスキルがあるわけではないのでイチから勉強が必要です。
来的には何か技術を身に着けたいなあと思うのですが、すぐに何かを始めることはできませんでした。
フィリピンビジネスは?
フィリピンビジネスについては、当時の、あまり多くないネット情報でも、多くが「やめておいたほうが良い」という結論でした。
実際、私自身「メリット」「デメリット」両方思うことはありますが、別の投稿で詳しくお話しします。
フィリピン人の友人に聞くと不動産(賃貸)という回答が多かったように思います。
年間55万6千人減少(2021年10月から2022年9月まで)している日本に対し、フィリピンは平均年齢が24歳と若く、2091年まで人口増加が続くとの試算もあるとのこと。
特にセブのような都市部は、地方からの出稼ぎでさらに人口が急増しており、住宅供給不足は当分続き、ビジネスとしては非常に安定しているといえます。
同時に土地価格も上昇の一途をたどっています。
フィリピン人でなくとも不動産ビジネスは間違いないだろうとは思います。
しかし、後述するように、外国人は単独では土地を所有できません。
そんなとき、ある人からタクシービジネスについて聞いたのでした。
セブでは「ケンタクシー」というネーミングの、どうみても日本人と思えるタクシーが非常に多く走っていて、私も興味を持ったのでした。
「人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)結果の要約」(総務省統計局)
「【2023年版】フィリピン経済の最新状況 | 2022年の経済成長率は7.6%と歴代2位」(2023/07/25 Digima)
タクシービジネスに決めるまで
「タクシービジネスは無謀」というもっともな意見
私がタクシービジネスを考え始めたころ、フィリピンでアパート経営をしている日本人の方と知り合いました(奥さんはフィリピン人です)。
この方にタクシービジネスのプランをお話ししたら、「無理」と即答されました。
「建築のときは可能な限り立ち会った。見てないと手抜きをするしサボる。タクシーなんてドライバーに車を預けて大丈夫なわけがない。盗んで売っ払われるのが落ちだ」というような感じです。
他にも色々な人に聞いたところ、ざっと挙げられるリスクは
- 事故が起きたらオーナーが賠償責任を負う
- ドライバーが強盗被害に合う
- 車が盗まれる
- ドライバーが車を盗む
- ドライバーが車の部品をかってに粗悪品と交換し純正部品を売り払う
- 車をかってに又貸しする
- ドライバーがドラッグや飲酒運転する(事故る)
- ドライバーがバウンダリー(レンタル料)を支払わない
- 車両代もガソリン代も高い割にタクシー料金は低く利益が少ない
それでも、セブでは結構多くの外国人経営のタクシーが走っている
さきほどお話したように、セブでは「KENタクシー」とそのグループの「YOOタクシー」をよく見かけます。
KENタクシーに乗ると私が日本人ということもあり、話をすることもあるのですが、これはドライバーによって若干違うのですが、合わせて2千台くらい保有しているとのこと(当時)。
「『一人の日本人がたまたま乗ったタクシーのドライバーと意気投合し、やがてその娘さんと結婚して1台のタクシーからスタートした』サクセスストーリとして知られている」、と聞いたこともありました。
他にも「DrJ」は中国人とフィリピン人のメカニック、「タイガータクシー」はヨーロッパ人だかアメリカ人とフィリピン人奥さんと始めたとのこと。
以前は新規フランチャイズの料金も安くて参入しやすく、一つのフランチャイズで複数台持てた時代もあり、このころに始めた会社はその後大きくなったようです。
問題点1 ネガティブリスト
フィリピンビジネスについては、少しずつ分かってきたことがあります。
まず、フィリピンは外国人に対する規制が非常に厳しいということ。
外国資本の投資が規制・禁止される業種は、外国投資法の規定に従い、必要に応じ、定期的に改定される『ネガティブリスト』に記載されています。
ここでは詳しくは触れませんが、日本と大きく異なるのは、外国人は単独で土地を所有できない(フィリピン人が資本の最低60%を所有する株式会社であれば可能)などは憲法で定められいます。
(なお、外国人がコンドミニアムやタウンハウスを所有できるのは、この規定を準用して、全体の土地の4割分の区分は外国人が所有して良いという扱いになっているためたのことです。)
そして、タクシー業に関しては「公共事業の運営(公共交通機関)」として外国人資本は40%以下に制限されています。
つまり会社を設立したとしても、60%分はフィリピン人が持つ必要があります。
一方、小規模の場合は「外国資本が認められない飲食店」などでみられるように、外国人のビジネスパートナーに出資し、個人事業主として登録する方法も考えられます。
よく、フィリピン人名義で始めたビジネスで「乗っ取られた」という言い方がされる場合がありますが、もともとフィリピン人名義ですから、乗っ取られるも何もフィリピン人のものなのです。
このように厳しい外資規制があるため(2022年の改正で一部緩和されています)、フィリピンでの小規模ビジネスは、フィリピン人の奥さん名義で行うというケースがとても多くなっています。
一方、外国人のコミュニティーが発達している地域ですと、名義貸しというビジネスが古くから根付いているようです。しかし、名義貸しについては下記の通り注意が必要です。
問題点2 アンチダミー法
2つ目は「アンチダミー法」です。
簡単に言えば、上記の「ネガティブリスト」に例示されている外国資本制限等に関する違反を取り締まる法律です。
資本関係については当事者以外では、実態を把握することがこんなであることから、法に反する行為があった場合、フィリピン人パートナー側から告発させるようなインセンティブを設けています。
このため、フィリピン人パートナーとの関係が悪化した場合に、(外国人側からすると)裏切られるというような事態が発生する可能性が高くなるといえます。
この法律は「法の建前」と「現実」でグレーな部分があるのですが、現実に摘発されるケースもあるため注意が必要です。
「外資に関する規制(第12次ネガティブリスト)」(2022/11/01 JETORO)
「フィリピンにおける新たな外国投資ネガティブリストについて」(2022/09/13 ONE ASIA LAWYERS)
「知っておこうフィリピン法 第8回 フィリピンのアンチ・ダミー法についての考察」(弁護士法人黒田法律事務所 黒田特許事務所 2015/07/16)
「REPUBLIC ACT NO. 6082, August 04, 1969」(The lawphil project)
「Changing Anti-Dummy Law landscape」(Divinalaw 2022/07/08)
問題点3 フランチャイズ料高騰
タクシードライバーに聞き込み
実際にタクシーに乗り、「タクシービジネスはどうなのか?」ドライバーに聞き込みをしました。
私の英語力に、ドライバーもそれほど英語が達者でない者も多いことから、なかなか、難しい面はありましたが、「いいんじゃない」という答えもあれば「フランチャイズ料が高騰していて車両と合わせると1台100万ペソ以上になる。いいビジネスではない」という意見も。
このへんは、実際にビジネスに関わっていないと分からない話です。
フランチャイズとは?
タクシービジネス・マネジメントに関する投稿で詳しくお話したいと思いますが、簡単に触れておきます。
フランチャイズは、日本だと、野球などの本拠地という意味や、コンビニやファストフートなどの「フランチャイズ」が定着していますが、英語辞書では「官庁が特定の会社などに与える特権,許可」という記載もあり、こちらの意味になります。
フィリピンではタクシーの営業許可は「LTFRB(Land Transportation Franchising and Regulatory Board:)」という役所が事業認可を行っており、営業権を得てビジネスをすることになります。
この営業権は売買することができるのですが、その額が高騰しているというのです。
(高騰している理由はのちに実際に購入するにあたり分かってきます。次回でお話しします。)
実際にタクシーを経営している方に会う
そんなとき、英語学校で知り合い、その後もメールで相談など連絡を取り合っていたタモさんという人がいて、一時帰国で再会したときのこと。
タモさんの友人の知り合いにマニラでタクシーをやっている人がいて、会って話が聞けるとのこと。
その一時帰国中に、その方と会うことができ、その後マニラで再び、マネジメントをされている奥様ともに会うことができ、詳しく話を伺えました。
そこで得たアドバイスと思ったことは
- うまくいくか行かないかはマネジメント次第
- 大事なのはドライバーとメカニック
- マニラとセブでは事情が異なる点がある
まず1台やってみる
いろいろ調べた印象としては、タクシービジネスは、マネジメントをしっかしすればリスクはあるけども比較的安定したビジネスではないかということを感じました。
タクシー一台なら勉強代というのもありますし、フランチャイズは不動産以上に値上がりしており、新車を買ってもフィリピンは中古車価格が高く、タクシーであってもそこそこ値が付くので、いざ手撤退しても、それほど大きな損失にならないのではないかという見込みでした。
そして、ビジネスに関心のあるフィリピン人の友人と相談の上、タクシービジネスを始める決意を固めるのでした。
1年前には全く想像もしていなかった、フィリピンのセブという異国の地での新しい人生の“第一歩”を踏み出したのです。
《次回に続く》