今日は「下町ロケット」を第7話まで視聴したところでその感想とフィリピンビジネス(タクシービジネス)についてもちょこっとお話ししてみたいと思います。
「下町ロケット」第7話までを視聴して
「下町ロケット」は帰国中も楽しみにしていました。セブに戻ってからは引き続きインターネットの「民放公式テレビポータル『TVer(ティーバー)』」で視聴しています。
伊丹社長の変節(寝返り、裏切り)は佃社長に対する恩義や信頼と帝国重工に対する私怨の狭間での経営者としての決断で見どころのあるエピソードです。
しかし、せっかく知的で常識もあり、従業員思いの信念も持ち合わせている経営者として起業に至る経緯なども丁寧に描かれていた重要人物なのにヤタガラス編になって今のところダークサイドに落ちた単なる悪役キャラになってしまっている感じがして少し残念な気持ちです。
経営者としての苦渋の決断に至る部分などがもっと描かれていたらなあと思いました。
しかし今までは少しバタバタした印象もありましたが8話以降は帝国重工、佃製作所、ギアゴーストとダイダロスといった三つ巴の関係に話が集約され、ラストに向けてすっきりとした展開になっていくような気がします。
下町ロケットは配役で俳優が本業でない人が多く出演しているところが特徴の一つです。個人的には、知名度は低くても演技力のある人でわきを固める作品が好みですがイモトさんなどは頑張ってるなあと好印象です。
一方、本業の役者さんのキャスティングは主演の阿部寛さんはもちろんですが土屋太鳳さんや安田顕さんなど好きな役者さんが揃っています。
そして第6話にはその安田顕さん所属する演劇ユニット「TEAM NACS」のリーダーの森崎博之さんが無人農業ロボット研究の第一人者・野木博文役で出演しています。第7話では福澤朗さんが演じる帝国重工の奥澤機械製造部長に啖呵を切るのですがこのスカッと感は「水戸黄門」で印籠を出した時に匹敵します。たまりません。
同じ「TEAM NACS」の大泉洋さんは全国区で知られています。森崎さんは地元密着の活動をされていて全国的な知名度はまだそれほど高くはありませんが重要な役回りで今後が楽しみです。
「下町ロケット」は娯楽作品ですが仕事や経営といったことについて考えさせられるエピソードが積み重ねられているのも魅力です。
佃製作所と私のスモールビジネスでは天と地ほどの差がありますが、これまでのフィリピンビジネスから少し思ったことをあげてみたいと思います。
小さなタクシービジネスで思うこと
失敗や挫折からの出発
下町ロケットは主人公がロケット打ち上げに失敗した責任をとって退職し父親の町工場を継ぐ、つまり挫折からスタートします。
「挫折したかも知れないけど、パパは立派な技術者だよ。尊敬すべき研究者だと思う」(第4話・佃利菜)(NEWSポストセブン 「下町ロケット』、魂の名言集 ものづくりにかける情熱」から)という娘の莉菜の言葉にあるように挫折かしても信念を持って技術者、研究者として生きる姿を描いているわけです。
失敗や挫折から立ち直る方法に正解は無く、『同じ道を方法を変えるなどして再チャレンジする』、『まったく違う道や違う環境のもとに進んでみる』など千差万別、人それぞれです。
私の場合ですが長年務めた公務員の仕事を辞めたことはある意味挫折ともいえます。そのときは現実逃避だったのかもしれませんがセブという地にたどり着きに結果的には新しい道を見つけることにつながりました。
今までは何とか事業を軌道に乗せる事だけで頭がいっぱいでしたが、公務員時代を全く忘れ去るのではなくその経験を何かに活かしたいと思うようになってきたことはさらに一歩前進できているということかもしれません。
信頼している相手に裏切られたら
ゴースト編では主人公は信頼したゴーストの社長に裏切られてしまいました。スケールはちっちゃいですが私もビジネスパートナーが日本円にして100万円近い使途不明金を持ったまま海外に行ってしまう(持ち逃げ?)という苦い経験があるので重ねてしまいます。
最終的には相手の家族を巻き込み友人の中から仲介してくれる人が現れ、相手とスカイプで対峙し話し合う場をセッティングしてもらうことができました。
ドラマでは佃社長が思いのたけを伊丹社長にぶつけるシーンがありました。
二人目のビジネスパートナーとしてビジネスをスタートさせるとき、食事をしながら「必ず成功させるから心配しなくていい」と自信に満ち溢れた言葉を投げかけてくれ、また共に成功を誓い合ったことを思い出すといろいろと問いただしたい気持ちはありましたが使途不明金の返還を約束させ、過去のことは水に流すことにしました。
事業自体での失敗よりも人間関係での失敗やトラブルの方がダメージが大きいですね。
現場主義と従業員・ドライバーとの付き合い方
『現場主義』の意味は「企業経営において現場の対応や処理を重視する考え方。たとえば日本企業が海外で工場を経営する場合,工場長や技師が作業現場に頻繁に出入りして現場の状況をよく理解すると同時に,現場の監督者に広い裁量権を与えている。そのため監督者は工場全体の動向を十分把握でき,同時に何か不測の事態が生じた場合に,適切な処理を自分たちで行なうことができる。経営者の現場重視の姿勢,現場への権限委譲,技術者の現場への参加などは,日本企業の特徴の一つとされている。特に欧米では経営者と現場作業者の間に物理的・精神的に大きな壁があり,現場主義はほとんど見られない。」とのことです。 コトバンクから 出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
私はテレビ東京の「カンブリア宮殿」という作家の村上龍が経済人と対談する番組が好きなのですがそこに出演する経営者は皆現場主義を実践しています。
ドラマではモノづくりの町工場が舞台ですので現場主義が随所に見られます。佃社長は時に現場に対して過酷な事になる選択をすることもありますが常にコミュニケーションを取り社員を信頼し、ねぎらいます。
それでも前作では社員の中に反感を持ち裏切る者が出るなど100パーセント完璧にできるものではないというところも描かれています。
しかし『現場主義』と一言で言っても経営者が現場に行って自分は『現場主義』を実践していると満足しているのでは意味はありませんしかえって現場を混乱させることがあります。
役所のような大きな組織になるとトップが現場主義だと現場に足を運ぶことがあってもおぜん立てされているパフォーマンスのケースになることもままあります。
で、こんなWeb記事もあります。
「現場主義が現場を潰す『成功事例の共有』で、現場を疲弊させないコツ」 (日経ビジネス 山口博氏)←リンク切れ
「現場主義だ、現場第一だと何度も唱えて、本人たちはリスペクトしているつもりでも、前述のような現場への情報提供の押し付けなどが一度でもあれば、その押し付けが現場をリスペクトしていないという強いメッセージを伝えてしまうことになります。」(抜粋)
現場主義以前にフィリピンでは日本以上に雇用主は強者で労働者が弱い立場のように感じます。(あくまで個人的感想です)
セブはピサヤ地方では都会で多くの人が地方から仕事を求めてきますが私の周りにも仕事が見つからない人は沢山います。雇用主側にはいくらでも変わりはいるという意識があるのかもしれません。(一方で優秀で真面目な人材は中々見つからないという現実もあるようですが)
しかしフィリピンは労働法規はしっかりしたものがあります。実態として守られていないケースは多いようですが、労働者との関係がこじれ訴えられるとやっかいです。
ずフィリピン労働雇用省(Department of Labor and Employment; DOLE)に持ち込まれ、そこでも解決しない場合は裁判所で争われます。
参考 弁護士法人黒田法律事務所 「知っておこうフィリピン法 第33回 フィリピンにおける使用者の金銭上の義務」(2016.1.7)
Primer 『フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第五回 フィリピンでの労働紛争の解決手続はどうなっている?』
フィリピンのタクシー経営では日本と異なり雇用契約ではなくドライバーに車両をレンタルする方式を取るのが一般です。ドライバーが個人事業主で請負契約を結ぶようなものですがフィリピンでは雇用契約に準じたものとして扱われます。
私のビジネスパートナーのお義父さんはジプニーを所有しているのですがジプニードライバーの退職金について以前訴えがあって労働者に準じた請求が認められているとのことです。
『現場主義』以前にフィリピンの日本とはまた異なる労働環境というものも理解しておかなくてはなりません。
ビジネスを始める前にフィリピンでタクシービジネスをしている方を訪ねたときのアドバイスは「『ジャパニーズスタイル』だけでも『フィリピンスタイル』だけでも失敗する。バランスが大事」とのことでした。
以前、ドライバーとどのように接するか悩んだ話をしました。今日本では外国人労働者のもんだいやパワハラ、セクハラ、いわゆるブラックな労働条件など雇用関係における問題が大きく取り上げられています。
ましてや外国においての雇用関係では自国の文化や慣習、国民性の物差しに固執しすぎて判断すると失敗する可能性が高くなります。
『ウィキペディアのリーダーシップの項目』によるとリーダーの資質について
「大日本帝国陸軍の教範において、蔵田十紀二は、『高邁の品性』『至深の温情』『堅確な意思』『卓越した識見』として、全体的な人間の能力を網羅している。」
一方 「アメリカ海軍の士官候補生読本においては、『忠誠』」『肉体的精神的勇気』『信頼』『宗教的信仰』『ユーモアのセンス』『謙虚』『自信』『常識』『判断力』『健康」『エネルギー』『楽天主義』が挙げられている。」そうです。
フィリピンはアメリカや欧米文化の影響を強く受けた国です。「大日本帝国陸軍」はいくら何でも古すぎる感はありますし、フィリピンはスペイン文化の影響が強くアメリカというより南米とかの方が近くさらに南の島テイストがベースにある感じがしますが(ほとんど参考にならないではないか!?)、何となく『ジャパニーズスタイル』と『フィリピンスタイル』の違いがイメージできるかもしれません。(無理があるかな?)
タクシービジネスに暗雲が?
昨年の6月に交通省(Department of Transportation、DOTr)の新しいポリシー(Department Order No 011 )が交付されて下部機関のLTFRB(Land Transportation Franchising and Regulatory Board)によってダッシュボードカメラ(ドライブレコーダー)の設置などいくつかの新しい規則が施行されています。
ドライバーはプロフェッショナルライセンスをとっていればなれたのですが以前お話ししたように初めての免許でとれてしまい実地試験もありません。
今まではシートン(セブ市の交通を取り締まる市の機関)が発行するドライバーのIDはあったのですが今後はLTFRBで実施する1日の講習を受けID(資格証)を得たドライバーでないと雇用できなくなりました。
悪質ドライバーでクレームがあって処分したドライバーはLTFRBでチェックされ、記録が残るかと思ったのですがカミさんによるとそれはないとのこと。まあ少しづつ前進です。
また、駐車場に関しても新しい規則が施行されます。
今まではビジネス許可を得るには駐車場が必要で市役所の職員が実地で見に来たりしたのですがその後の確認は一度もありません。
フィリピンはこういうように最初だけ厳しくてあとはザルといったことがよくあります。今回、LTFRBにすべての台数分の駐車場を登録することになりました。
私も以前は自分で整地などを整備する代わりに1台分月50ペソという格安で駐車場を借りていてそこは十分な広さがあったのですがもう引き払ってしまいました。
24時間システム(1台の車両を2人で24時間交代で運行する)の場合、駐車場は必要ない(基本的にドライバーは近所同士の組み合わせ)ので今は正直なところ駐車場は台数分のスペースがありません。
駐車場を探さなければならないと思っていたところカミさんが知り合ったタクシーオペレーターが市街地からは少し離れますが格安で土地の借り手を探しているというので今度見に行くことになりました。
しかもそこにはアパートが建っていて今は誰も住んでいないのですがその家賃収入も得ることができるというのです。
おいしい話には裏がありそうですが次にお話しするようにタクシービジネスに問題が生じる可能性がありゲストハウスを始めるためのトライアルとしては初期投資もあまりかからないので一歩進めることができたらとも考えています。
その問題というのは、以前からLTFRBはフランチャイズの名義変更事務を停止したりといったルールを突然施行したりするのですが、今後のタクシービジネスに大きな影響が出そうな新しいルールの計画の話があるようなのです。
はてさてどうなることやら 気を緩めず頑張ります。