タクシーなどを運行するためには「LTFRB(陸上交通許認可規制委員会)」によるフランチャイズが必要なのですが、その更新にあたり、「1台につき1本の植樹」が条件とされました。
以前ビジネスパーミットのお話の時に「国家緑化プログラムNational Greening Program」にもとづく「Greening program fee」 という料金を支払っているというお話をしました。
フィリピンは日本と同様に、緑に恵まれた国ではありますが、近年、緑化推進のプロジェクトが進められてきました。しかし先般の台風被害により「治水対策」面で重要であるという認識が強まりました。
1台1木運動
LTFRBの通知
タクシービジネスの方は、ようやくフランチャイズの手続きに進展があり、車両の名義変更手続きを進めているのですが、カミさんが「またNew requirement(追加要求書類)がある。」とのことで、役所のフェイスブックを見せてくれました。(Region 7というのはセブ州の管轄区域のことです。)
日本では福岡市が「一人一花運動」というものを行なっています。それに倣うと「一台一木運動」あるいは「一台一本運動」でしょうか。
「 LTFRB tells transpo operators: Plant trees before acquiring franchise(LTFRBが『フランチャイズを取得する前に木を植える』ことを陸運事業者に指示)」(INQUIRER.net 2020年/11/21)
これによると、LTFRB( 陸運フランチャイズ規制委員会)は、政府の森林再生プログラムを後押しするため、12月1日からフランチャイズの申請者に植樹を義務づけを開始するとのことです。
もう少し詳しくいうと、フランチャイズの更新をするためには「CPC(※)」という証明書を取得する必要があります。この「CPC」の取得要件に『1台(ユニット)につき1本の木に相当する植樹』が加えられたのです。
このアイデアを提唱したのは、台風被害が大きかった「LTFRBリージョン(地域)II」のディレクター(所長)で、この地域はルソン地域の大部分が台風ローリー(Rolly)とユリシーズ(Ulysses)の被害を受け、多くの地域で大規模な洪水が発生しました。(セブも数年前にディレクターが代わったのですが、その権限や影響力は結構あると感じています。)
事業者は、植樹活動が許可されている地域の「LGU」(地方自治体:Local Government Units)または、「DENR」 (環境自然資源省:Department of Environment and Natural Resources)事務所から証明書を確保しなければならないとのこと。
なお、「LTFRB」はこの事業によって当面50,000本の植樹を目標としています。
※「CPC」とは、「Certificate of Public Convenience:公共の利便性の証明書」といって、2017年6月に実施された「公用車近代化プログラム(Public Utility Vehicle Modernization Program)」に基づき、「フランチャイズの更新において必要とされる手続きを完了した」という証明書です。
フィリピンの台風被害と「緑のダム」
11月にフィリピンを襲った台風被害の影響はまだ続いているようです。日本でもこの台風のニュースは取り上げられていました。
- 「今年最強の台風19号、フィリピンに上陸 30万人超避難」(AFP 2020/11/01)
- 「フィリピン、台風22号の死者27人に 最悪規模の洪水被害」(AFP 2020/11/13)
- 「 Gov’t to mitigate future calamities through environmental approach:環境への取り組みを通じて将来の災害を軽減する政府」 (OCHA:国連人道問題調整事務所 ReliefWeb 2020/11/18)
- 「Año orders crackdown on illegal logging, quarrying (内務自治大臣エドゥアルド・アニョは違法伐採、採石の取り締まりを命じる)」(Inquirer 2020/11/24)
フィリピンのウェブサイトニュースでは、大きな被害のあったマリキナ川流域は、2001年から環境保護地域となっていますが、違法伐採や違法砕石行為が行われているとされており、今回の台風ユリシーズによる広範囲にわたる洪水は、ダムの放水による増水という側面はあったものの、森林伐採による影響は見過ごせず、違法伐採、砕石についての調査及び取り締まりが進められているとの報道がされています。
フィリピンでは2011年には全国緑化プログラム(NGP:Enhanced National Greening Program)という植林プロジェクトが開始され、現在も進行中です。
大規模な違法伐採などはその実施から売却までを秘密裏に行うことは難しく、麻薬の不法輸入などと同様にやはり地方政府・役所などが関係している可能性もあると思われます。
セブでビジネスを始めてまだ6年ほどですが、ドゥテルテ大統領になって、役所の雰囲気は随分代わったと実感しています。
コロナ禍でも大きな汚職事件のニュースがありましたが、今回の違法伐採も地方政府や役所の腐敗が遠因にあるとしたら、まずはそこから改善していく必要がありそうです。
「出産後」及び「高校・大学卒業時」の植樹
フィリピンでは2020年9月7日に 、HB6930(※)「Family Tree Planting Act」(家族の木の植樹法)およびHB 6931「Graduation Legacy for Reforestation Act」(森林再生のための卒業遺産法)が議会で承認され、「CCC」(Climate change comission:気候変動委員会)はこれらを歓迎しているというニュースを政府ホームページに掲載しています。
(※HB6930とは下院議案番号6930号のことで以下同様)
「CCC Welcomes Final Reading Approval of House Bills Requiring Parents, Graduating Students to Plant Tree(CCCは、保護者と卒業生に植樹を義務付ける下院法案の最終承認を歓迎)」 ←リンク切れ
これらの法案は、出産と高校または大学の卒業の際に、それぞれ1本の木を植樹することを義務付けているものです。
HB6930は、国内に居住するすべての妊婦の両親に対し、法的に結婚しているかどうかに関わらず、子供の出生後30日以内に、自分の家の敷地内またはバランガイの指定された地域に、生まれた子供1人につき2本の木を植樹することを義務付けるもので、両親が新生児の出生証明書を請求するための要件となります。
一方、HB 6931は、高校および大学生の卒業者に対し、関係する地方自治体単位などと連携して、環境天然資源省(DENR)が指定した地域に2本の木を植樹することを義務付けるもので、卒業要件となります。
これら2つの法案は、「フィリピン人、特に家族や若者の間で、環境の現状と、地滑りや出水を防ぐための保水、二酸化炭素吸収源としての役割、自然の生態系や生物多様性の保護・回復など、気候の影響や災害を緩和するための樹木の役割についての認識を高めることに役立つ」としています。
いつまでも緑豊かな国であってほしいと願っています。
(以上英文はwww.DeepL.com/Translator(無料版)の翻訳を使用しました)
おわりに
フィリピンは日本と比べれば財政に余裕がありませんから、何か新しいことを始めようと思えば新たに財源をかき集めなければならないと理解できます。
使いみちがクリアで適正に執行され、かつ違法伐採といった不法行為や多額の汚職、無駄遣いなどの対策をしっかりやってもらえれば、賛同する人も多いのではないでしょうか。
ただ、これでまた、フランチャイズ手続きに待ったがかかってしまいました。なかなか思うように進みませんが、仕方がありません。
ツイッターで取り上げたユーチューブ動画、「のん」さんとあまちゃんファリミーによる「明日があるさ」を聞いて頑張ります。
「のん」さんが声優を務める「この世界の片隅に」は日本のNetflixで観ることができます。戦争のない時代に生きることのできるありがたさを、ひとのぬくもりの中に感じさせられる映画でおすすめです。
ところで、4歳の甥っ子が1週間ほどマクタン島の伯母夫婦の家に行っていました。甥っ子を気に入っていてコロナ前はたびたびお泊りで遊びに行っていたのですが、やっと行くことができたのです。
明日戻ってくるそうです。普段は喧嘩しているお姉ちゃんも、少し話せるようになってきた末っ子も、会うのが楽しみなのか、時々意味もなく名前を連呼しています。