セブで4日間入院した場合の費用

また久しぶりのブログ更新になってしまいますが、この間に日本に帰国しセブに帰ってきたところです。そしてまたすぐに日本に戻ります。

なんだか慌ただしく疲れ気味ですが年が明けたら来年からはセブに腰を落ち着けられるのではと思っています。

前回お話ししたところですが先月、義弟が入院いたしました。これまでに友人の家族が盲腸の手術やバイク事故、病気などでのお見舞いをしたことは何度もあるのですが家族が入院したのは初めてです。

日本では国民健康保険や健康保険などの公的医療保険でどんなに高額な医療費がかかっていても高額療養費制度があるので自己負担額は一定額ですみますが海外生活で医療を受ける場合は質と費用など大きな問題の一つです。

また、フィリピンでも マニラ首都圏は別格でセブとは多少医療事情も異なると思いますしセブとさらに周辺の地方や離島なども同様です。

セブはショッピングモールなども多くて生活の便もよくビーチリゾートなどにも近いためロングステイや英語留学などで長く滞在する方も多い都市です。

今後は海外移住にあたっての医療保険やセブの病院などに関する情報も投稿していきたいと思いますが今回はフィリピンの医療制度と実際にかかった費用についてお話ししたいと思います。

フィリピンの医療

公立病院と私立病院

公立病院は安価で医療が受けられるのですが多くの患者が駆け付けるため待ち時間が長く診療も最低限のレベルといえます。ある程度満足できる診療を受けるには私立病院に行かなくてはなりませんが病院間における設備や医療内容の格差や費用の差がかなりあります。

経済産業省HPでフィリピンの医療に関する情報が掲載されています。 「アウトバウンドに関する取組 医療国際展開カントリーレポート(フィリピン)」(PDF)  
アウトバウンドに関する取組~フィリピン~」(経済産業省)

これによればフィリピン全土の1200医療機関(総合病院、専門病院)のうち 保健省管轄医療機関 (国立病院: National Hospital, Retained Hospital) は70か所、州政府が管理する公立病院( 州立病院(Provincial Hospital) 地区病院(District Hospital) )は約350か所、民間医療機関は約770か所あります。(2016年)

医療機関は基本的なサービスを行うレベル1から高度な医療を提供するレベル3までの3段階に分けられています。

公的医療保険

フィリピンにも公的医療保険はあります。ジェトロ「 ASEANにおけるヘルスケア市場動向;ASEANのヘルスケア制度・政策調査 (フィリピン) 」  https://www.jetro.go.jp/industry/life_science/healthcare_asean.html    

フィリピンにはフィルヘルスという公的保険があります。この調査によれば「フィリピンでは全国民を公的医療保険でカバーすることを 目指している。」「給付額は傷病の程度や受診する医療施設のレベル によって異なる」「医療費のうち、償還額を超える部分が被保険者の自己負担額となる。なお、保健省 (DOH)の認可を受けていない医療機関ではフィルヘルスの利用はできない。」

「給付額は受診する医療機関(設備の充実度などを基準に1から3のレベルに分類される。レベル3が最も 高度な医療を提供できる医療機関である)や医師のランク、また病状により異なる。それぞれの項目に 応じて給付額の上限が設定されている。」

「給付例:デング熱(初回感染)を患い、レベル3の病院に5日間入院した場合(症状は軽度を想定)給付額合計:19,900ペソ ※個人負担なし。」

この調査では「全国民の 91%がフィルヘルスに加入している(2016年現在)」とありますがうちの家族の大人8人中誰も入っていません。我が家の加入率は0%です。 源泉徴収される労働者であれば基本的には強制加入なのでこのくらいの加入率になると思うのですが、どういう調査なのか不思議です。

付き添い制度

入院した場合ですが、日本では現在では完全看護が前提とされており家族の夜間の付き添いは例外的なものとなっています。

しかしフィリピンでは今も家族の付き添いが一般的のようで今回も病院から夜間2名以上の付き添いを求められました。私の場合は個室だったのでエアコン、トイレ、シャワー付きでソファーや床で横になることもできるので付き添いの負担は軽減されています。

以前チョンワ病院(セブではセブドクターズ病院と並んで規模も大きく高い質の医療が期待できる私立病院で外国人も多く利用しています。)の大部屋に友人の見舞いにったことがあるのですが付添人は横になるスペースもなくエアコンもなく仕切りのカーテンが風でばたばたたなびいておりました。大部屋だと付き添いも結構辛いです。

医師の勤務形態の違い

日本だと基本的に病院に勤務する勤務医と個人経営の開業医に分かれますが(内科など開業医が病院の外来で診察するようなケースもあるようですが)、フィリピンの病院は施設や設備を提供するもので医者は日本の勤務医のような形態ではなく個々に契約して働くのが一般的(テレビドラマ「ドクターX」はフリーランスの医者という設定ですがそれに近い感じ)のようです。

私立病院のチョンワ病院やセブドクターズ病院も病院の近くにクリニックが集まる建物があって医者は部屋を借りていて外来の場合は基本的にはそこで主治医の診察を受けます。

今回の明細書でも入院の場合であっても医者の報酬は病院費用とは別の欄に掲載されています。

一般的ではないかもしれませんが私の知り合いは公立病院に入院していて私立病院のチョンワ病院の医師に胆石だったかの手術をしてもらったそうで、病室の費用は抑えていい医者に執刀してもらいたい場合はそういうこともできるようです。

フィリピンの医療ツーリズム

上記の経済産業省の資料によると 「フィリピンは、低価格を武器に外国人患者受入/医療渡航を強化しようとしている。保健省内にも専門部署(Philippine Medical Tourism Program)があり、病院リスト等を作成している。」

これによると「 米国人医師による優れた医療でありながら、 欧州の半分以下の価格で受けられる医療を目指している。 2010年には、医療渡航で 約8万人がフィリピンを訪れたとされ、 世界8位にランキングされている。」とのことです。

以前きいた話ではフィリピンは医療系の大学もあり医者や看護師はたくさん養成されているが医師免許を持っている場合フィリピンで”医師”で働くよりアメリカなどで”看護師”として働く方が給料が高いので優秀な人材は海外に流出してしまうと聞いたことがあります。

これは医療に限らずOFW(海外フィリピン人労働者:Overseas Filipino Workers)の問題点ですが、この話題はまた別の機会に。

  • 病室です。まだ点滴はしていますが症状は落ち着いています。
  • 奥にトイレとシャワーもついています。

  • 二日目から少しずつ食事もとれるようになりました。
  • 入院食ですがやはり日本と比べるとおかずはこってりしてます。

治療内容

その日、私はカミさんと用事があって朝から出かけてました。義弟が具合が悪く公立病院のヴィチェンテ・ソット・メモリアル・メディカル・センター(ビンセントソート:VICENTE SOTTO MEMORIAL MEDICAL CENTER)へ行ったという話は聞いたのですがそれほど深刻な状態とは思っていませんでした。

用事が済み帰宅途中に「どうなった?」と聞くと「ずっと待ったあげくよく分からないと言われ別の公立病院に行く」とのこと。

本人は苦しがっているようですし私立病院に行くように伝えました。

私は家に戻りカミさんは病院に向かいました。 結局セブ市でも比較的安価なクラスの私立病院に行ったのでした。

夕方に連絡があり「心臓がかなり悪く入院する。付き添いが2名必要なので今日は泊まる」とのこと。

私は翌日に病院に見舞いに行ったのですが心臓のレントゲンとエコーの件だなどをし、検査結果は心臓が肥大していて心機能が通常の半分くらいに落ちており、感染症の可能性もあるので抗生物質を点滴しているとのこと。

ともあれ4日の入院で自宅療養となり後日また検査で経過を見ることとなりました。幸いなことにひと月経過しましたが、落ち着いています。

本人はスモーカーとのことですが当分は禁煙です。

明細書

私はフィリピンの法令が分からないので勝手に特定病院の医療費を公開してよいか分かりません(日本でしたら保険診療であれば全国統一なのですが自費診療なので)ので病院名は伏せています。セブ島でのプライベート病院ですが比較的安価な病院です。

  • 実際の明細書です
  • 病院名や個人名は伏せてあります
  • 中段には医者の名前と報酬が記載されています

  • 2枚目以降は診療報酬明細書に当たる詳細な項目別の明細です
  • カテゴリ別で日付順に一覧になっています
  • 非常に細かく記載されていますが入力したまんま出力されている感じです

  • ホントに細かいです

  • 黒塗りのところはドクターの名前が記載されています。

支払内訳

『ROOM&BOARD』 4Day(s) 7,600 ペソ(PHP) (@1,900)

部屋代です。チョンワ病院などはいろいろなタイプがありますが一泊1万ペソ以上の部屋もあるようです。そこに比べるとかなり安いと思います。

私の家族が利用した部屋は6畳ワンルームくらいの大きさでしょうか。教育病院のようでドクターの回診で若い研修生を10人くらい引き連れてきましたが余裕の広さです。

部屋にはシャワー付きトイレもあります。この病院では2名が夜間看護で付き添うように求められています。

PHARMACY SUPPLIES 3,369.75 ペソ(PHP) 及びMEDICINES(薬) 23,216 ペソ(PHP)

この二つの項目は明細のPHARMACYに記載されているものです。

入院中は3種類の点滴をしており一つは抗生物質なのですが、あとは飲み薬でしょうか明細にたくさんの種類が記載されています。

LAMORATORY(検査所) 17,060 ペソ(PHP)

血液検査やエコーなどの検査を行いました。

X-REY 300 ペソ(PHP)

レントゲンです。画像写真はもらえます。日本のより小さめですが安いです。

ER FEE 1,370 ペソ(PHP)

「ER」とは「Emergency Room」の略です。「北米型ERシステムの特徴は、24時間・365日全ての救急患者(救急車来院および独歩来院)を受け入れ、一義的にERドクター(ER専門医)によって全ての科の診断および初期治療(Advanced Triage)を行い、必要があれば各専門科にコンサルトするというシステムである。」(ウィキペディアより)

私が30代の頃「ER救急救命室」という大好きなドラマがありました。NHKの海外ドラマ枠でやっていたのですが、シカゴの公立病院を舞台にした名作ドラマです。私はそれで初めて知った言葉です。 (ちなみにこの作品は15シーズンまで続いたのですが私はDVDすべて持ってます )

日本では「北米型ER」とはシステムは少し異なりますが「 二次救急で対応できない複数診療科領域の重篤な患者に対し高度な医療技術を提供する三次救急医療機関」としての救命救急センター(2018年12月31日現在全国289ヶ所) 及び 高度救命救急センター(2019年7月18日現在 全国42ヶ所)がERとして機能しています。

ちなみに厚生労働省により「救命救急センターの評価結果(平成30年度)について」が公表されています。    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188907_00001.html

私の英語力が足りないせいもありフィリピンの医療情報はよく分からないところはありますが今後情報収集していきたいと思います。

CSR SUPPLIES 660.3 ペソ(PHP)

「CRS」は「CENTRAL SUPPLIES ROOM」です。アルコールやコットンIDバンドなどが計上されているので最初の処置などの費用かと思われます。

DOCTOR 4名 17,570ペソ(PHP)

フィリピンでは病院は直接医者を雇用しないのが一般的のようです。ですので明細書に医師の報酬が載っています。日本と異なるところです。

TOTAL(合計金額) 71,146.05 ペソ(PHP)

入院する前にはデポジットが必要で10,000ペソです。

入院費は日本円にすると4日間で約15万円くらいでした。点滴のみで手術したわけでもないのですがこれくらいかかります。

以前ブログでもお話ししましたがタクシービジネスを始めて1年も品頃に大きな事故を起こしインド人の乗客が大腿部骨折をし半分ビジネスをあきらめかけたことがありました。そのときの手術費用は60万ペソ以上かかりました。

私の友人は家族が入院したとき土地を売って工面したと聞きましたし、私も友人から「知り合いががんになって治療費がかかるので車を売りたがっているので買ってもらえないか」と持ち掛けられたことがあります。

義弟は末っ子でまだ20代です。これまで私の20代の友人が2名、ほぼ同年代の知人、元ドライバーと4人も心臓が原因とのこと。私にとって費用は結構かかりましたが、命に別条がなかっただけよかったと思います。

※もっとも、 有名人の死亡報道などではよく死因に「心不全」が使われます。 厚生労働省の「死亡診断書(死体検案書)マニュアル」では「死亡の原因欄」には「疾患 の終末期の状態としての 心不全、呼吸不全等は書 かないでください」とあるのですが最終的には人は誰も心臓が止まるので心不全という症状で亡くなるわけです。日本だと死因を公表したくないというケースもあるかもしれませんがフィリピンですと亡くなる直前まで病院に行かないというケースも多く詳しい死因を調べずに心不全のようにされているケースは多いのかなとも思います。

日本も一昔前と今では医療の質も異なります。30年前にがんで亡くなった人も今だったら元気に回復するといったケースはたくさんありますがそれはしかたのないこと。

フィリピンで日本と同じ医療の質や制度を望むことは無理でその違いもしかたのないことと、ある程度は割り切ることもフィリピンで暮らす以上は必要なのかなと思っています。

(もっとも日本もさらに少子高齢化が進み医療財政は悪化していくことが予想されます。これからは医療制度だけでなく、医療費内容、終末期医療の在り方なども議論されていくのでしょう。)

深夜食堂

全く話が変わるのですが、以前テレビでやっていたドラマで「深夜食堂」というのがあって今ネットフリックスでオリジナルの続編が観られます。

様々な人生を送ってきた人々が交わる深夜食堂。舞台は日常なのですが客として登場する人物がみなちょっとした何かしらの背景があって「めしや」という場所で人生が交差します。時にはハッピーエンド、時には切なく。

原作の漫画もいいですが、原作の実写化は多くが失敗するなかとてもよく作られています。

このドラマに浸って思うことがあって、日常では通えませんが心を休ませることのできる場所をセブに作れたらと思ったりします。私はドロップアウトしてセブに来ましたが羽休めの場があってまた日常に戻るというのもいいのでは、あるいはリタイアして日常と異なった場に少し身を置く場としてなど。

セブはだんだんとクリスマスの雰囲気になってきました。「セブの5年間を振り返る」の最後タクシービジネスについて、「海外移住での親の介護」「相続放棄について」など書き残している投稿があるので年内におえたいと思っています。

来年は大きな転換期になるのではと思っています。日本はどんどん寒くなっています。私も風邪をひかないように気を付けなくては。皆様もお気を付けください。

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