「象は鼻が長い」【セブでつぶやき】

ユーチューブチャンネル「ゆる言語学ラジオ」

ユーチューブのジャンルで教養系と呼ばれるものがあって、東大の「東大TV / UTokyo TV」1)のような大学の公開講座から、「中田敦彦のYouTube大学」のように、一般の視聴者が楽しみながら教養を学べるものなど数多く開設されています。

以前も、英語学習にもつかえる「TED」や、同志社大学神学部の小原教授の授業動画のお話をしたところですが、そんななかで、最近、ユーチューブで「ゆる言語学ラジオ」というチャンネルを見始めています。

1)東大TV(ホームページ) 東大TV / UTokyo TV(チューチューブチャンネル)(東京大学)

日本語は難しい?

現在、カミさんの友人や親戚など、4、5人が日本で働いています。しかし、少し前に、「ある友人が日本で働こうと思っていたのをやめて、韓国にする」という話を聞きました。

理由は、「日本語が難しいから」とのこと。

実際のところは、日本の労働条件は近年あまり魅力的でなくなっているということもあるかもしれません。日本は先進国では最低レベルの最低賃金で、「最低年収」「最低時給」「平均年収」とも韓国を下回り1)、かつては物価の高い国であった日本も、欧米だけでなく、アジアの海外旅行客にとっても物価が安いと認識されている2)ほどです。

また、(私の周りの)フィリピン人にとって、人気の働きたい国はアメリカ、カナダ、オーストラリア、シンガポールで、それが叶わない場合に日本や韓国、中東などを選択するという傾向がみられます。

その理由はやはり英語が通じやすい「言葉」の面と、フィリピン人にとって、企業体質や風土、慣習といったものが、欧米スタイルの方が合うということがあるかもしれません。

(今回は言葉の話なので、海外労働については別の機会に)

たしかに「外国人にとって、日本語の取得は難しい」という話は何かで聞いたことがあります。

日本語というのは音が少なく、諸説あるが、音の最小単位である音節が英語は3,000以上(数万という説も)あるのに対して、日本語は100くらいだという。このため同音異義語がやたら多い3)のも、日本語が難しいとされるひとつの要因と思われます。

さらに、看護師のように、読み書きまで必要とされる仕事ですと、やはり漢字がネックになるでしょう。

1)世界の最低賃金ランキング(2019年版) | 「平均年収」「最低年収」「最低時給」から解説(Digima-出島- 2021/05/24)
2)日本人が直視できない現実、アジア人観光客が訪日するのは「ただ安いから」(FinTech 2020/01/27)
3)日本語は本当に特殊な言語か?(Newsweek 2021/03/24)

SVOなどの「5文法」

さて、文法について、「英語はSVO(主語→動詞→目的語)型、日本語はSOV(主語→目的語→動詞)型の文型が基本です。」1)というように習います。

(もっとも世界的には5文型というのは一つの考え方にすぎず、「現在はこの5文型の理論は日本人以外は誰も英文法を学ぶ中で使ってない」のだそうです。2)

ちなみに、私の場合、昭和一桁の親のもとで、全くといっていいほど英語と触れ合うこともなく、中学に入って初めて出会った英語で、5文型だけでなく、時制の一致とか現在完了・過去完了など、初めて遭遇する未知のルールに挫折したのでした。

1)英語の基本5文型を徹底おさらい!特徴と見分け方をわかりやすく解説(シェーン英会話 2019/04/17)
2)5文型の弱点と海外の英文法【ネイティブと学ぶ英文法シリーズ】(PN English School 2010/05/13)←リンク切れ

「象は鼻が長い」「こんにゃくは太らない」「僕はうなぎだ」の主語は?

英語が大の苦手だった私も、国語の文法の授業の内容というのはほとんど覚えていませんが、英語の5文型で英語にはかならずSV(主語・術後)があるというのは覚えています。

一方、日本語はあいまいで、それが「日本語は難しい」とされる一つに理由だろうということは理解できます。

「象は鼻が長い」「こんにゃくは太らない」「僕はうなぎだ」の主語は何か?

「象は鼻が長い」は「象の鼻が長い」のであれば、鼻が主語でその鼻の説明として象があるといえるかもしれません。「象は鼻が長い(動物だ)」であれば象が主語とも考えられます。また、結局、主語がふたつあるということでもいいのかもしれません。

「こんにゃくは太らない」は「こんにゃくは(食べても)太らない(食べ物だ)」であればこんにゃくが主語になると思いますが、この文ではこんにゃくを主語としてしまうとこんにゃく自体が太るか太らないかという意味になってしまいますが、太る太らないはあくまで人です。

「僕はうなぎだ」はたしか、高校のときの国語の授業で、先生が「あいまいな日本語」というテーマのなかで例文であげた記憶があります。

日本人なら、このフレーズが使われるシチュエーションとして、定食屋さんで注文するときに「僕は天丼」、「じゃあ僕はうなぎだ」という会話が容易にイメージできるでしょう。でも英語で「I’m eel(うなぎ)」はありえません。これも、うなぎに対する主語が“僕”ではないということは想像できます。

この問題に関する動画の解説については、ネタバレになるのでここではふれません。

つぎに、英語と日本語の違いの視点について、「英語は荒野行動!?日本語に「時制の一致」が要らない理由 #5」では、動画の概要欄で「英語は『荒野行動』であり、日本語は『Call of Duty』である。日本語と英語の違いを生んだのは「神の視点」があるかどうか。日本語はカメラを切り替えるので時制の一致が要らない。」という説明があります。

※『荒野行動』及び『Call of Duty』はゲームで、いずれもプレーヤーが主人公となりプレイされるシューティングゲームですが、『荒野行動』はカメラが自分の背後にあり自分が画面に映り込む画像に対し、『Call of Duty』は完全に自分目線で、銃のみが映り込むのだそうです。(私自身、どちらもやったことないのでスミマセン)

英語というのは神の視点という考え方はおもしろいように思えます。

「コメント」のなかに、「昔、英語は神の視点で、日本語は虫の視点だと聞いたことがあります。 川端康成の雪国の冒頭、『トンネルを抜けるとそこは雪国だった』という文章を読んだ日本人と外国人に、そのときの絵を描いてもらうと、日本人は列車の窓から見える景色を描くけど、外国人は列車がトンネルを抜けつつある様子を真上からドローンのような視点で描いたと聞いたことがあります。」というものもありました。

(このチャンネルの動画はコメント欄もおもしろいものが多く、全部読んでしまいます。)

「なぜ、日本にキリスト教(一神教)は根付かないのか?」という問題を、以前から何度かこのブログでも話題にしていますが、言語面での違いにおける神の存在というのも興味深いところです。

教養動画を楽しむうえでの注意点

そして、この動画では、後日、別の動画で「3点の誤りの訂正とお詫び」がされています(概要欄で案内されています。下記動画の32分43秒から)。

この動画は、タイトルの「ゆるゆる」からも分かるように台本どおりに話す講演スタイルではなく、長時間の雑談トークを編集で切り抜いたスタイルとなっています。アドリブでの話もあって、そこが魅力ともなっています。

ですから、間違いもあって当然です。今回の誤りについてはコメントで指摘があったとのこと。

さきほど紹介した「中田敦彦のYouTube大学」も、誤りが指摘されたり、炎上したりしているようです。

動画を見る側の心構えとして、たとえ専門家の話であっても「うのみにしないこと」が重要です。

このチャンネルのように、訂正をちゃんと報告しているのは良心的だと思います。(なかにはそういたことをしていないチャンネルもあるでしょう。)

おわりに

ネットフリックスで「7月22日」(2018年10月10日に配信)というオリジナル映画を観ました。ネットフリックスは、単なる娯楽作品ではなく、良質な作品が多いですね。

CM収入ではなく、サブスクリプション(定額料金払)にこだわっているとのことで、いい結果に結びついているようです。

(少し前は、クメール・ルージュ時代のカンボジアを生き抜いた少女を描いた「最初に父が殺された」も観たのですが、これも見応えのある作品でした。)

さて、この作品は、2011年の「ノルウェー連続テロ事件」とその余波を描いている作品です。

「ノルウェー連続テロ事件」とは2011年7月22日、オスロにおいて行政機関の庁舎 が爆破され8人が死亡、続いてウトヤ島での銃乱射事件により労働党の青年部の関係者69人が殺害され、両事件で77人が死亡した大事件で、単独犯による政治的主張を目的とした犯罪です。

2012年8月23日、オスロ司法裁判所は禁錮最低10年、最長21年の判決を言い渡しました。

犯人のアンネシュ・ベーリング・ブレイビクは1979年2月13日生まれ、つまりあと10年ちょっとで、そのときまだ50代半ばで出所してくることになります。

日本でも、戦後、国民を震撼させた「オウム真理教による一連の事件」、「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」、「池田小学校事件」、「相模原障害者施設殺傷事件」、「京都アニメーション放火殺人事件」など。ほかにも大量・連続殺人事件ではありませんが、「女子高生コンクリート詰め殺人事件」、「光市母子殺害事件」など、理解できない凄惨な事件として私の記憶に残っています。

死刑廃止の議論はもうかなり前から行なわれています。

「国際人権団体アムネスティ・インターナショナル日本によると、2017年末現在、198カ国・地域のうち142カ国が死刑制度を廃止・停止しています。経済協力開発機構(OECD)に加盟する36カ国で制度が残るのは日本と米国、韓国の3カ国だけで、韓国は1997年の執行以来、停止しています。米国でも半数近い州が死刑を廃止したり、停止したりしています。2)」とのこと。

しかし、現実的に、そのような犯罪者が刑期を終えて、家族の住む家の隣に引っ越してきたとしても、誰かが守ってくれるわけでもありません。特に、宗教や政治的思想など確信的に犯行を行い、その信念が変わっていなかったとしたら…。また、自分の家族が被害者であったなら…。

一方、犯行を否認しているにも関わらず死刑判決が下るケースもあります。もし自分が冤罪の身になったら…。

この映画をみて、犯人が出所するであろう10数年後のことも、とても気になるのでした。

フィリピンでは、2006年6月24日に死刑制度が廃止されています。

死刑を巡っては、1987年にコラソン・アキノ政権時に死刑制度を廃止しますが、ラモス政権の下で1993年に復活しました。

2006年、アロヨ政権で1,230人の死刑囚の刑が終身刑に減刑され、同年6月24日、死刑を廃止する共和国法No.9346が可決され、正式に死刑制度が廃止されました。

しかし、2016年の大統領選挙で、ドゥテルテは死刑制度復活を政策のひとつに挙げ、大統領選で勝利しました。2016年12月、特定の「凶悪犯罪」に対する死刑を再導入する法案は、2017年の2月に下院において可決されましたが、2017年4月、上院においては票が足りず、法案は否決されました。

2017年に行われた調査では、フィリピン国民の67%が死刑制度復活を支持しており、2019年7月、上院議員のマニー・パッキャオおよびボン・ゴーらにより、死刑復活を求める法案が上院に提出されています。

フィリピンにおいても死刑制度廃止が維持されているものの、凶悪犯罪などにより世論も揺れています。

(参考)
連続テロから5年 復讐という選択肢を拒むノルウェー 遺族や生存者が当時の悲惨なSMSを公開(Newsweek Japan 2016/07/21)
フィリピン:死刑制度復活を巡って 割れる議会と世論(DIGIMA–出島 2019/09/26)
ウィキペディア

1)日本の死刑執行「情報あまりに不足」キャンベル氏(朝日新聞 2018/09/09)←リンク切れ

ブログランキング

ブログランキングに参加しています。毎回押していただくとランキングが上がる仕組みになっており励みになり、とてもありがたいです。よろしくお願いします。(どれでもひとつポチッとおしていただけると嬉しいです。ブログ村のページが開きます)

にほんブログ村 海外生活ブログ フィリピン情報へ
にほんブログ村

にほんブログ村 海外生活ブログ セブ島情報へ
にほんブログ村