2021年今年もよろしくおねがいします(きっと花は咲く)

2020年はひたすらグローバル化に向けて進んでいた世界が立ち止まった一年でした。

年が明けてもまだ、この混乱はしばらく続きそうな気配です。

2021年の幕開け

フィリピンではCQ(コミュニティ隔離措置)が続いており、昨今の変異ウィルスへの対処のため、国外からの入国規制の強化、学校の対面授業再開延期といった措置が取られています。

特にセブ市は一時期の感染拡大時に強化した外出時の「有効なID及び検疫パス(Quarantine Pass)」の義務付けが当面続く見通しです。

一定の規制は何らかの形で今後も当分の間は続くことが予想されますが、フィリピン全体の陽性者、死亡者は8月、9月をピークに、徐々に下降傾向にあり、最終的には、ニューノーマルと呼ばれる状態を目指すことになります。

陽性者数(青線は7日間平均)

死亡者数(赤線は7日間平均)

The Philippines reports 883 new Covid cases today—our lowest case count since 14 July」(news.ABS-CBN.com 2020/12/27更新)

明けない夜はない

「明けない夜はない」というのはシェークスピアの「マクベス」に書かれている言葉ですが、原文は”The night is long that never finds the day.”で、(マクベスを倒せない)「明けない夜は長いからな」という翻訳本もあり、こちらのほうが直訳に近く、一般に知られているのは意訳で、また、誤訳という指摘もあります。

しかしこの言葉は一般に浸透しており、コロナ禍において、作曲家の松本隆さんが、神戸新聞にコロナ禍のメッセージを掲載したり、

文化庁の長官からの「文化芸術に関わる全ての皆様へ」という文では「明けない夜はありません!今こそ私たちの文化の力を信じ、共に前に進みましょう」と結ばれています。

他にも一般に、「やまない雨は無い」「春の来ない冬はない」などは使われますし、世界中に似た言葉はあるのではないかと思います。“今日がだめでも明日がある”という内容の、坂本九さんの「明日があるさ」も同様の趣旨をもった曲です。

神は乗り越えられる試練しか与えない

私が好きだったテレビドラマ「JIN-仁-」(2009年放映)では、主人公が幾多の困難に直面しますが、「神は乗り越えられる試練しか与えない」という言葉を噛みしめて、立ち向かっていきます。

この言葉は、聖書の「(神は)あなたがたを耐えられないような試錬に会わせることはない」(口語訳聖書 コリント人への第一の手紙 10:13)という聖句から引用されているといわれています。

本来の意味
一方、この聖句についてツイッターで「上馬キリスト教会(@kamiumach)」というアカウントで活動をしているMAROさん(この方は牧師ではないそうです)のツイートでは以下のように解説されています。

「『神は乗り越えられる試練しか与えない』という有名フレーズはかなり誤解されています。ここでいう『試練』とは『誘惑』のことを指しています。大切な人との死別など、世の中には越えられない『試練(本来の意味)』はあります。だからこそ神様が必要なんです。みなさん、どうか背負いすぎないで下さい」
とあります。
(なお、この「誘惑」というのは聖句の文脈では偶像崇拝に関して使われます。)

羽生選手
靱帯じんたい損傷」から奇跡的な復活で2018年2月の平昌冬季オリンピックで金メダルをとった羽生結弦ゆづる選手がインタビューで「試練は乗り越えられるものにしか与えられない」という感覚は、自分の中にあります。試練は成長するときに訪れるものだと思うし、自分が強くなれるきっかけになっていると思います」と述べています。「『YUZU DAYS』(第30回逆境を力に変える)」bilibiliから

池江選手
また、16種目の日本記録を保持し、東京オリンピックのでの活躍が期待されながら、19歳という若さで白血病と診断され、現在、治療とともに復帰を目指している水泳の池江璃花子選手は、病気を公表したツイッターで「私は、神様は乗り越えられない試練は与えない、自分に乗り越えられない壁はないと思っています。」と綴っています。「池江璃花子「神様は乗り越えられない試練は与えない」(SANSPO.COM 2019/02/13)から

乗り越えられない試練
世の中には乗り越えられない試練はたくさんあります。

一人のオリンピックの金メダリストの後ろには、何千、何万人という敗者がいます。しかし、エジソンの「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ」という言葉のように乗り越えられなかった失敗というものは考え方によっては勉強であったり経験値になります。

また、人生にはどう頑張っても自分の力ではどうにもならないこともあります。「気力で病気や障害に打ち勝て」という考えは時には残酷です。私は、肢体不自由児の特別支援学校に勤めていた時がありました。

多くの児童・生徒がいましたが、特に病院に併設されている訪問教育を受けている重度障害児は意思や感情を伝えることも困難です。流動食をがんばって食べること、その日生きることで精一杯です。その頃は聖書も読んだことはありませんでしたが、漠然と神様がいるのであれば、一生懸命に生きているこの子達が救われるように、と思わずにはいられませんでした。

希望の言葉

かつて、病院付近で布教活動を行うという人の弱みにつけ込んだ勧誘方法が報道され、その後教祖が詐欺罪で逮捕された新興宗教団体がありました。

私の母は、もともと体が弱く、私の出産でさえ大変だったようですが、私が小学生の頃に乳がんになり、それ以降、肺の切除などもしていました。その頃はまだ、ガンの告知が社会問題となるように、まだ、不治の病というイメージが残っていた頃でした。

そんな母からがある日、病気によく効く温泉があるから連れて行って欲しいといわれ、父と一緒にでかけたことがあります。行ってみると、そこは、新興宗教団体が運営しており、その霊験あらたかな?水を買って飲み続けるとどんな病でも治るというものでした。母も、それを飲み続けることはしませんでしたが、その後も普通に暮らしています。

人生における「健康」や「命」という切実な問題は、弱みに付け入ろうと企むものに利用されがちです。コロナ禍における「不安」もそうです。

「希望」を持っていないと付け込まれてしまうかもしれません。

キリスト教社会のフィリピンにいると、「信仰」はそれを持つ人に生きていく中での「希望」を与えてくれるということを感じます。

でも、それでなくとも、希望を与えてくれるものは、自分のすぐそばの「家族」や「ペット」であったり、「仕事」や「趣味」「ボランティア活動」のようなものであるかもしれません。ひとそれぞれ、さまざまです。

「明けない夜もある」かもしれないし、「乗り越えられない試練」があって当然です。人生の最終地点までどう生きるかが問題で、そこから先は「神様におまかせ」です。それまでは、今を生きるしかありません。

今回紹介した2つの「言葉」も、本来の意味がどうであれ、生きていく上で、その言葉を持つ人に「希望」を与えてくれています。

コロナとの闘いは、まだもう少し続きそうですが、もうひと頑張りです。

ローズ(冬に眠る種も春には花を咲かせる)

前回に続き「コロナ禍に聴きたい曲」です。

私は、前回のお話と同様の二十歳の頃、夜に勉強している時期に、(きっかけは忘れたのだけれど)「サマータイム(Summertime)」「心のカケラ(Piece of My Heart)」などの代表作を持つ、1970年に27歳という若さで逝った伝説的なロックシンガーであるジャニス・ジョプリンをよく聴いていました。

後に、テレビでみたベット・ミドラー「ローズ」(原題:The Rose 1980年公開)がジャニス・ジョプリンがモデルになっていると知り、外見のイメージのギャップは感じたものの、彼女の歌と演技と作品の中身に魅了されました。

ジャニス・ジョプリンアルバム Amazon.com.jpから

映画「ローズ」 Amazon.com.jpから

ずっと観ていない作品で、いつかまた観たい作品の一つです。(劇中で歌われる「男が女を愛する時」(カバー曲)も名曲です)

この作品の主題歌が主人公の名前でもある「ローズ」です。

最初のパートで
I say love, it is a flower (私は言う、愛とは花だと)
And you, its only seed(そしてあなたは、その唯一の種)

と歌われ、そして、最後のパート、
Just remember in the winter  ((そんな時)ただ思い出して、冬に)
Far beneath the bitter snows (厳しい雪のはるか深くには)
Lies the seed that with the sun’s love (種が眠っていて、太陽の愛を浴びて)
In the spring becomes the rose (春にはバラの花を咲かせるということを)

で、終わります。

英語が大の苦手で大嫌いだった私ですが、授業前にときどき自分の好きな曲を流してくれる先生がいて、「英語の詩は特に韻を踏むところがいい」と強調していたことを思い出します。この曲もたくさん韻を踏んでいて、そういう良さは日本語に訳してしまうと伝わらないのは仕方がありません。

でも、「冬に眠る種も春には(バラの)花を咲かせる」という最後の歌詞に至る内容は詩としてもとてもいいなあと思います。

(歌詞は多くのサイトで紹介されています。「洋楽cafe」 など

ところで「花が咲く」といえば、東日本大震災のチャリティソング「花は咲く」は岩井俊二監督が作詞です。岩井監督の中山美穂主演の映画「Love Letter」は大好きな映画です。明日への希望を込めた、このような表現は古今東西問わず、胸をうちます。 

モデルとなったジャニス・ジョプリンは壮絶な人生を送ったとされ、映画でも破滅型のシンガーとして描かれ、決してハッピーエンドではない結末だったと思います。小さな「希望」が語られているこの曲が歌われることで一層の切なさがこみあげてきます。

今年は新しい事業に向けて情報関係の投稿も増やしていきたいとも思っています。何より、コロナで大変ですが、あまりしんどくならないように、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

2021年1月1日    Yoshi

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