「フィリピンビジネス オンボロタクシー1台からの出発」(セブ暮らし8)

はじめに(この投稿について)

長年勤めた公務員を46歳で早期退職し、2014年に初めてフィリピン セブの地に足を踏み入れてから、早いもので、今年で丸9年になろうとしています。

そこで、今まで投稿した「9年間の振り返り」を、整理したうえ再投稿いたします。

今回のブログは2017年12月5日の投稿(※1)と2017年12月7日(※2)、2020年2月14日の投稿(※3)の該当部分をまとめたものです。

(※1)現タイトル「『FREETEL』のプラスワン・マーケティングが民事再生申し立て」:旧タイトル「セブで始めたタクシービジネスについて」
(※2)現タイトル「セブでビジネスやるなら不動産関係?」:旧タイトル「セブで始めたタクシービジネスについてーその2」
(※3)現タイトル「フィリピン(スモール)ビジネスで思うこと」:旧タイトル「タクシービジネスを始めてみたら【セブの5年間を振り返る6(最終回)】」

ビザについて

前回、「フィリピンでジネスをしたい」と思うまでをお話したところですが、まず気になったのばビザです。

日本で外国人が働く場合の就労ビザ

日本で就労する場合に必要なビザは、外務省のホームページの「ビザ 就労や長期滞在を目的とする場合」で明示されていて、会社社長や役員などでビジネスを行うには、「経営・管理」ビザが必要になります。

短期滞在ビザ」では「報酬を受け取ることを目的とする就労」や「事業」を行うことはできません。

短期滞在ビザ(短期商用ビザ)【日本】」(C. S. AND P. 行政書士事務所)
就労ビザで就ける職業、就けない職業【日本】」(ビザサポートやまなし)
外国人が日本でビジネスをする場合の許認可【日本】」(外国人ビザステーション:金森国際行政書士事務所)
外国人が起業するために必要なビザの種類と取得の流れ【日本】」(会社設立JAPAN:さむらい行政書士法人)
外国人が日本で起業する4つの方法を詳しく解説【日本】」(さむらい行政書士法人)

当時のビザは「短期滞在ビザ(9a)」【フィリピン】

私は、当時、英語学校に通学していましたが、語学(英語)留学の場合は、日本のような「留学ビザ」を取得する必要はなく、「短期滞在(観光)ビザ」で、「SSP(特別就学許可:Special Study Permit)」取得すれば就学可能です。

日本での外国人の短期滞在ビザが最長90日なのに対し、フィリピンでは日本人の場合30日間無査証で滞在でき(ノービザ)、短期滞在(観光)ビザでも延長を行えば最長36か月(3年)まで継続して滞在できます。

(3年で短期・・・)

『外国籍の短期滞在者は、フィリピン入国管理局発行の就学許可(Study Permit)または特別就労許可(Special Work Permit/SWP)を有することなく、フィリピン国内で就学、就労、求職することは認められません。短期渡航者向けビザ9(a)で入国後、フィリピン国内にて報酬を得る活動に従事する外国籍の者は、フィリピン入国管理局から特別就労許可(SWP)を取得するため、現地のカウンターパート(受け入れ先機関)と調整する必要があります。』(在日本フィリピン大使館 非移民ビザ必要書類

フィリピンのビザについてはここでお話しすると非常に長くなるので、別の投稿でまとめて説明したいと思います。

日本人60人が逮捕された不法就労事件

不法滞在や不法就労に対しては、どの国も厳しい姿勢で臨んでいますが、特に先進国では、どうしても「発展途上国からの不法労働者」が多くなる傾向があります。

しかし、フィリピンでも、大勢の中国人が違法オンラインカジノで不法就労したり、不法滞在が増加したために摘発の強化ビザの発給要件の厳格化などが行われています。

一方、ちょうど私がビジネスをはじめた時期の2015年に「セブ島で日本人60人が不法就労で逮捕される」という、ちょっと耳を疑うような事件が起きました(※)。

簡単に言えば、「セブでコールセンター業務を行うかわりに、英語のレッスンを無償で受けられる(給与は支給されない)」というシステムが労働にあたると判断され、労働ビザを取得せずに観光ビザで滞在していた日本人が逮捕されたというものです。

(実は、後に(数年後)この事件と関係のあったフィリピン人ビジネスパーソンと知り合う機会があったのですが、その話はまた別の機会に・・・。)

日本人なら、日本国内であれば、たとえ犯罪を犯しても、また、自立する経済力がなくとも、憲法によって「生存権」保証され、日本で暮らすことができます。

しかし、「自国民でない」海外では、ビザが発給されなければ不法滞在者となり、強制送還の対象となってしまいます。

フィリピンでの暮らしについて、ネットでは、「フィリピンで〇〇ペソの賄賂で見逃してもらった」とか「お金さえ払えば何とでもなる」といった情報もみられます。

確かに、実際にそういったことがあったかもしれません(特に昔は多かったかも)。

しかし、以前の投稿で取り上げたように、ドゥテルテ政権以降、状況はかなり変わってきており、そういった行為で逆に逮捕されるというケースも起きています。

当然、犯罪歴があると、以降のビザ取得は困難になります

最近も『フィリピンへの入国手続きで職員にパスポートを投げつけ、申請フォームに不適切な言葉を入力したなどとして、米国人旅行者が生涯にわたり入国を禁止された。』という事件がありました(※)。

このケースの詳細は分かりませんが、役所などに腹が立ったり、フィリピン人とトラブルになったりといったケースなどで理不尽と感じる場面があったとしても、「外国人は、圧倒的に立場が弱い」という自覚を持ち、注意する必要があります。

フィリピン、不法就労容疑の中国人1300人を拘束」(2016/11/29 AFP )
政府が外国人違法就労者の取り締まりを強化」(2019/04/09 ジェトロ)
中国人向け到着ビザ発給要件を厳格化、不法滞在者の急増を受けて」(2020/01/23 ジェトロ)
フィリピンで日本人60人逮捕 不法就労の疑い」(2015/9/12 日本経済新聞)
セブのJICCコールセンターで働く日本人60名が逮捕!0円留学の闇?インターンは違法?」(2015/09/15 更新2023/02/16 フィリピン留学ラジオ)
セブ島で日本人60名が不法就労で逮捕!海外で身元を保証するビザは命の次に大事です。」(2015/09/14 更新2019/02/19 Borderless World )
申請フォームに不適切な入力、米国人男性が生涯入国禁止に フィリピン」(2023/11/20 CNN.co.jp)

ビジネスで収入を得ることができるか?

フィリピンでコールセンターなどで働くケースは事例も多く、ビザや納税などの役所手続きは明瞭になっており、会社側がビザの手続を進めてくれるのが普通です。

しかし、当時、起業して自分でビジネスを行った場合のビザや税金などについての情報は、まったく見つけられませんでした。

フィリピンの就労ビザ申請について:種類・取得方法・流れについて解説」(ヤッパン号)
就労ビザの種類とその取得方法:フィリピン」(調査時点:2015年9月 最終更新:2021年3月 ジェトロ)

税金について

日本の税金(海外在住者)

海外在住の場合の税金については、別途「住所」に関する投稿で詳しく触れたいと思いますが、日本の所得税に関しての主な注意点は以下の通り。(なお、いずれも「原則として」であり、例外もありうるので、十分確認されますよう。)

  • 居住者(非永住者以外)は、その源泉が国内であるか、国外であるかを問わず、全ての所得について所得税等を納める義務がある。
  • 非居住者は国内源泉所得に限り課税される。
  • 非居住者であっても日本国内に恒久的施設がある場合には、継続して発生する日本国内に発生源のある所得の国内源泉所得について確定申告が必要となる。
  • 非居住者であっても日本で不動産を所有している場合には、固定資産税がかかる。
  • 非居住者であっても遺産を相続した場合には、額に応じ、相続税を収める必要がある。

なお、海外在住者の場合、『1つの所得に対して、2ヶ国で課税された場合は、二重課税になります。その場合、居住地国と判定された国で、相手国で課税された税金分を控除します』『外国・日本の双方で、居住者と判定される場合は、二重課税の対象になります。それを防止するため、双方の国の租税条約により、居住者の判定方法を定めております。なお、必要に応じて、両国当局による相互協議が行われることもあります。』

【究極の自由人】パーマネントトラベラーとは?税金を払わず国を転々とする方法」( 2022/06/28 更新2022/08/24 FSIGMA Co., Ltd )
海外を拠点としたノマドワーカーやギグワーカーの税金はどうなるの?」(22/08/18 スキマバイトNEXT)
海外移住した際の、税金や確定申告についてわかりやすく解説」(2023/08/07 Wise)
海外勤務中の非居住者も確定申告が必要?課税のしくみや納税管理人の選定方法を解説!」(2023/08/29 マネークラウド)
No.2873 非居住者等に対する課税のしくみ(平成29年分以降)」(国税庁)
(別添6)居住者が国外で得た所得の申告について」(国税庁)
Q&A よくあるご質問」(国際税務ドットコム)

フィリピンの税金

フィリピンでの賃貸収入

例えば、コンドミニアムなどを購入し、賃貸物件で貸し出しをして、収入を得た場合の税金はどうなるでしょう?

この場合、『賃貸運用時には、「不動産収入税」がかかります。フィリピンでの滞在期間が180日未満の外国籍の非居住者には、賃貸収入の25%が課せられます。
一方、滞在期間180日以上の外国籍の非居住者・居住者の場合の税率は5~32%となっています。』とのこと
フィリピン不動産投資にかかる税金と向いているタイプ」(2021/06/11 更新2023/05/23 GSR株式会社)

(実際にビジネスを行うにはビジネスパーミット(営業許可)など様々な手続きが必要ですし、規制などもあるかもしれません。私自身、今後は賃貸・民泊・宿泊業を行いたいと思っているので、詳しく調べたいと思います)

納税者識別番号(TIN)
フィリピンで税金を収めるに当たっては「納税者識別番号(TIN:Tax Identification Number」の取得が義務付けられています。

外国人が取得しなければいけないケースとして、例示されているのは

  • 『フィリピンでの仕事や商取引を計画する外国人』
  • 『フィリピン国内で所得を得る非居住の外国人』
  • 『フィリピンで給与を受け取らないサービスサプライヤー、ジャーナリスト、コンサルタントなど14職種で6カ月未満の特別就労許可(SWP)を取得する外国人』
  • 『フィリピンでの仕事や商取引を計画する外国人』など。

一方、『日本とフィリピンの租税条約では、滞在期間が暦年で合計183日を超えず、フィリピン国外から報酬が支払われている場合、個人所得税は免除される。』とされています。いわゆる「183日ルール」です。

私の場合は、のちに会社を設立するにあたり「TINナンバー」を取得することになります。

フィリピンの税制については、これもまた大変細かくなるので、別途投稿したいと思います)

納税者番号取得、短期就労の外国人も義務」(2019/06/04 NNA ASIA)
各国・地域の税制概要とホットトピックス フィリピン 令和3年度 経済産業省 委託事業
(2022年1月 デロイト トーマツ税理士法人)
短期滞在者免税の適用を受けていた者の滞在日数が事後的に183日を超えた場合」(国税庁)
183日ルール(短期滞在者免税制度)とは?超えた場合も含めてわかりやすく解説」(2023年02/09 Wise)
『183日海外にいれば日本の非居住者になる』は本当か」(2013年8月 青山総合会計事務所 青山総合税理士法人)

リタイアメントビザ(SRRV)取得

先程お話ししたように、ビジネスをしたいと思ったとき、ビザは短期滞在(観光)ビザでした。

フィリピン人ビジネスパートナー名義で行うとすると、当然ながらビジネスパートナーの収入でビジネスパートナーに納税義務が発生します。

私の収入にするには、投資としての配当をもらう形だと、前回お話したネガティブリストに反し、アンチダミー法にひっかかってしまう可能性が考えられます。

しかし、実際にはフィリピン人名義のビジネスというケースはあるように思えます。

いったい、どうしているのだろう?

少なくとも会社形式にすればクリアできそうなのですが、いきなり会社というのも・・・。

とりあえず1台やってみて、手応えがあって続けられそうなら会社形式にするというプランをたてました。

タクシーの場合、会社にすれば4割分は適法に確保できます。

初期投資を回収できるまでに、最低でも数年はかかるので、それまではビジネスパートナーに貸し付けているという形をとれば問題はないかと考えました。

実際のところ、しばらくは預金を切り崩して生活することになり、収入で生活費を賄えるようになるのは、ずっと後になってからになります。

そして、ビザですが、とりあえず、「リタイアメントビザ」を取ることに。

リタイアメントビザを持っていれば、「労働ビザ(9a)」が不要で「外国人雇用許可証(AEP)」のみで就労することができます。

今後コールセンターなどで働く事になった場合、煩雑な労働ビザの手続が必要なくなります。

「リタイアメントビザ」は、現在は50歳からでないと取得できませんが、当時は35歳から取得できました。

最新版【リタイアメントビザ】フィリピン・セブ島で永住権を取得する方法」(2022/10/27 cebupot)

ビジネスパートナーを探す

のちに、セブでも日本人オーナーの方と知り合うこともできましたが、奥さんがフィリピン人でフィリピン人名義で行っているケースばかりでした。

当時は結婚していないので、友人のフィリピン人ビジネスパートナーを得ることに。

しかし、ただでさえ、日本でも共同経営は難しい面がありますし、結婚だってやがて離婚するケースはあるのですから、最初のうちはよくても、十年、二十年先はどうなるか分かりません。

英語学校を出て一人暮らしも始め、そのころは友人を増やそうと積極的でした。失敗もありましたが、ビジネスに興味をもっている友人も何人かできました。

正直なところ「人物」の見極めというのは、やってみなければ分からないところがあります。

真面目で、誠実で、スマートで、人当たりもよく、身元もしっかりしている人物というような視点で絞っていきました。

ビジネスパートナーを決める

最初のビジネスパトナーの名前を「ジョン」としておきます。

ジョンと一緒に、彼の親戚の家を訪ねてミンダナオ島まで行ってきました。そこでは総勢100人以上の親族と会いました。

もっとも注意すべきは、乗っ取られたり(前回お話したように、当初は、そもそもフィリピン人名義なので乗っ取られるもなにもないのですが・・・)、持ち逃げされたりという事態です。

もともと詐欺目的というケースですと問題外ですが、親族と知り合いになるというのは、後々のそういったトラブルの抑止にはなると思われます。

また、ビジネスパートナー名義でビジネスを行うに当たり、権利保全は必要で、フィリピンでビジネスをしている人を訪ねて、その方法を教えもらったり、弁護士に相談したりしました。
しかし、何より重要なのは「信頼」できるかどうかです。

(しかし、二人目のビジネスパートナーでは、失敗を犯してしまうのですが、それはまた、次回以降に・・・)

何はともあれ、ビジネスパートナーが決まり、フィリピンビジネスの第一歩を踏み出したのでした。

銀行口座開設

当時、銀行口座を開設するために必要なものは、2種類の身分証明書住所の確認などでした。

身分証明書はパスポートリタイアメントビザのID、それに、このときはすでにフィリピンの運転免許証を取得していたので問題なく取得できました。

日本からの送金

まずは資金です。

一時帰国して、まずは普段使っている都市銀行からセブで開設した口座に送金しました。

しかし、当時(2015年)はアベノミクスによる「円安」の真っ只中です。

額はとりあえず200万円くらいだったか。

でも、送金目的とか結構しつこく聞かれて、担当者が「最近マネーロンダリングの関係で監督官庁が厳しいんで」みたいなことを言ってました。

2度めの一時帰国では「新生銀行」を使って、こちらは簡単でした。

3回目は「三菱UFJ銀行」に口座開設して送金。こちらも問題なく、海外送金に強いのはやはり「三菱UFJ銀行」かなあと感じました。

当時はあまりネットも使いこなせていなかったのですが、どうなんでしょう?今は銀行送金以外にもいろいろな送金方法があるようです。

Wise(ワイズ:旧トランスファーワイズ)が、一番レートがいいようです、(日本からフィリピンへの送金のみでフィリピンから日本へは対応していません。)

【2023年版】おすすめ「海外送金サービス」5つの手数料を比較! | 海外進出ノウハウ | Digima〜出島〜」(2023/10/31 Digima)
【2023年改訂】海外送金手数料の4社を比較した結果」(2023/01/21更新 2023/04/07 Bloomstreet)

フランチャイズ購入

ジョンが近所で中古のタクシーフランチャイズを車両込みで売りたいというオーナーを見つけてきました。

最初の打ち合わせにやってきたのがドライバーのリチャードでした。

オーナーは1台しか所有しておらず、リチャードにメンテナンスから何から任せており、同席したのです。

それは、超がつく中古のおんぼろタクシーでした。

車種はトヨタのビオスで、もう10数年というモデルです。

オーナーの奥さんは愛着があったようで、引き渡しの際に、ビオスと一緒に記念写真を何枚も撮っていました。

購入後、1週間もせずエアコンが故障するは、収入より修理代の方が高くつし、一刻も早く新車に交換したいと思ったのでした。

このあと、DTI(個人事業主)への登録やビジネスパーミットの取得を行いますが、それは次回へ・・・

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