ドライバーを解雇した話【タクシービジネス備忘録2021年7月】

ドライバーの離職と解雇

セブは昨年の8月以降MGCQが続いていますが、経済は厳しい状況が続いています。また、ここに来て、新規陽性者が増加してきており、夜間外出制限やリカーバン(酒類提供禁止)などの規制強化が行われそうです。

タクシービジネスも、依然として減額したバウンダリー(ドライバーへのタクシー貸し出し料)さえ全額は払えず、一部は、預かりとして後日(といってもニューノーマル後と大分先)支払う状況がつづいています。

6月は古い2車両がバウンダリーを維持修繕費が上回るという赤字状態となりました。

その要因として、1つ目は依然として続く人流と消費・購買力の少なさ。2つ目はガソリンの値上がり。3つ目としてドライバーの話によると、「従前のジプニーと比べ快適なミニバスが普及してきたことで、競合性がでてきた」のではないかとのこと。(ただ、3つ目については、従来のタクシー利用者層とジプニー利用者層はわりとはっきり分かれているので、それほど大きな影響とはいえませんが、若干は流れるかもしれません。)

グッドドライバーとバッドドライバー

これまでにもお話してきましたが、タクシービジネスにとって一番重要なのはドライバーです。グッドドライバーをいかにして雇い、引き止めておくか、そして、バッドドライバーを抱え込まないかが重要です。

特にバッドドライバーに関しては、私がビジネスを始めた7年前頃は、麻薬を使用して運転する者や、車を盗む者、いわゆるボッタクリドライバー、安全運転を守らない者などが数多くいたと聞きました。

うちの場合は、以前お話しましたが、1年目に「ホテルの旅行客に対しボッタクリをしたのではないか?」とホテルのスタッフが役所(LTFRB)に通報し、連絡のあったドライバーを普段の態度の悪さもあって解雇したことがあります。

また、同じく1年目にセブシティから南のカルカルに行く途中のハイウエイで事故を起こし、100万ペソ近い損害を被ったりしたのでした。

幸い、それ以降は、全く問題がないわけではありませんが、頭を抱えてしまうようなドライバーは現在はいなくなりました。

離職

グッドドライバーは、辞めたいと言われても留意しなければなりません。

以前、息子さんを交通事故で亡くされて、弔問に伺った話をしたことがあります。そのドライバーから退職したいという話がありました。

彼の場合は、引き止めたいドライバーではあったのですが、正規職員の船員に採用されたという話でした。

タクシードライバーよりも安定した収入が得られるし、外洋ではないとのことで、おそらくタクシードライバーよりも仕事としてハードではないということもあったようです。

また、タクシードライバーの方が事故のリスクも大きいですし、自営業になるので病気や怪我の保障もありません。

しっかりした船会社であれば、現状のタクシーを続けるよりは船員の方がベターな選択でしょう。

「また戻りたくなったらいつでも連絡してくれ」と伝え、快く送ったのでした。

解雇

そんななかで、2ヶ月ほど前に雇ったドライバー(A)が、問題となりました。バウンダリーの一部未払いは、他のドライバーも同じなのですが、最近になって、全く支払わず、連絡もないことがありました。

現在、全車両はGPSが装備されているため、リアルタイムで位置を把握できます。調べるとセブ市から80km以上も離れたセブ島北西部のタブエランに近い場所にいます。

そのまま持ち逃げされたら最悪です。ドライバーを採用する場合は、必ずドライバーなどからの紹介のみで雇っており、彼を紹介したドライバー(B)にも連絡を取り、必ず戻るようにとメセージを送るのでした。(電話は通じません)

彼については、奥さんの方からこちらに連絡があり、最近生活費をいれてくれていないとのこと。基本的にはプライベートには立ち入らず、巻き込まれたくもないのですが、どうやら愛人をつくってしまったよう。

子供は一人いてもう成人しているようなのですが、よくある話ではあります。

生活費を稼がずブラブラしているものもいれば、稼ぎがあると家族を顧みずギャンブルや女性関係に走ってしまう。どちらも本当によく目にし、聞く話です。

結局、彼がドライバー(B)の家に訪れ、半額のバウンダリーを渡したときに、あらかじめ打ち合わせていたとおり、ドライバー(B)が強制的にその車両を引き取ったのでした。

そのとき、ドライバー(A)は、その愛人と再びタブエランに引っ越しする予定だったようで、車には荷物が積んであったそうです。(フィリピン人は引っ越しも、手で持ち運べるかばん2、3個というように驚くほど身軽なことが多いです。)

結局、そのまま解雇となりましたが、丸3日分のバウンダリーとそれまでの一部未払い分で4000ペソ以上、それにガソリンもかなり減っていて、満タンにして2,500ペソ近くの出費でした。

これまでも何度もお話してきていますが、フィリピンのタクシービジネスは日本と異なり、タクシードライバーは従業員ではなく自営業で、オペレーター(オーナー)から一日いくらといった形で利用用金(バウンダリー)を支払い営業するという形が一般的です。

(ですから正式には解雇ではなく、契約破棄と言うべきかもしれません。しかしDORE(フィリピン労働雇用省)は紛争があった場合には、雇用関係に準じるとしています。)

まあ、私としては、最悪の事態として、事故を起こされたり、解体されて売り飛ばされたりしなかっただけよかったかなと。

とにかく、フィリピンのタクシービジネスでいちばん大事なのは “ドライバー” 。バッドドライバーは頭痛の種です。

6月の状況

今月は維持費がかかりました。

主な車両の維持修繕

6月の車両維持費合計  103,510ペソ

No1 23,140ペソ
内訳  ラジエターファンモーター(1.800)、ショックマウント(1,800)、クラッチリリースベアリング(630)、クラッチライニング(1,200)クラッチカバー(1,650) トランスミッションとショックマウント(1,750)、エアコンクリーニング(2,500)、エアコンコンプレッサー取替え(850)エアコンコンプレッサー new Y008 ND 12V 4PK(7,000)ほか

No2 24,670ペソ
内訳 ECU(Engine Control Unit・box)(8,000)、イグニッションコイル(1,200)、追加3個イグニッションコイル @1,760(5,280)、工賃(2,000)、エンジントラブル対応レスキュー(2,500)、スパークプラグ(600)、イグニッションコイル(3,500)、工賃(300)

No3 1,290ペソ
内訳 エンジンオイル交換のみ

No4 9,135ペソ
内訳  キャブレタークリーナー(120) エアクリーナー(395)  ガソリン(充填・燃料タンク清掃)(1,000)、 2pcs ショックマウント(1,300)、工賃(2,000) 、 コネクター(220) 、 トランクルーム修理工賃(300) 、スパークプラグ・ワイヤー(610) 、カーステレオ(新品)(1200)、 工賃(1,000)

No5 2,130ペソ
内訳 ブレーキライト・パーキングライト(350)、エアフィルター・カーブクリーナー(490)

No6 1,290ペソ
内訳 エンジンオイル交換のみ

No7 2,790ペソ
内訳 バンパー修理工賃(1,500)

No8 1,290ペソ
内訳 エンジンオイル交換のみ

No9 1,290ペソ
内訳 エンジンオイル交換のみ

No10 1,290ペソ
内訳 エンジンオイル交換のみ

No11 2,510ペソ
内訳  ワイパー左右(320)、トランスミッション・ショックマウント(900) ほか

No12 8,285ペソ
内訳 ガソリン(500)、GPS設置(6,495)

エンジンオイル交換は全車共通で各1,290ペソ

その他タイヤ 7,800ペソ

主な手続費用

合計10,600ペソ 

  • LTO登録(3,200)
  • LTO登録追加 (1,700)
  • SCCI (強制保険) (3,840)  
  • MVIS & SOP(定期手続) (500)
  • 中古で購入した車両の名義変更のための新聞公告 (500)
  • 11台分 GPS月額(3,300)、配車アプリ(2,700)

ほか

おわりに

オリンピックも開会しました。

オリンピック開催に関しては、厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」のなかで「オリンピック自体でしっかり感染対策ができても、(開催中は)どうしてもお祭りムードになる。人出が増えて、感染が広がる」という意見もあったようですが1)、始まってしまえば、それまで批判的だったメディアも、お祭り騒ぎを煽る盛り上げるような報道になっているようです。

一方、感染者数は急増していますが、データから高齢者の割合が減り、若年層が増加し、このため、重傷者数は40代、50代にシフトし、死亡者数も比較的低い数字で推移しているいるようです。

今後、高い重症化率・死亡率の変異株が発生しなければ、若年層へのワクチン接種が進むにつれ、収束に向かう希望は持てそうです。

また、治療薬や国産ワクチンの開発も進んでおり、こちらも期待できます。

オリンピックに関しては、「感染爆発を引き起こし、多くの死者をだしかねない無謀なイベント」という否定的な意見から、「ポストコロナに向かう転換期としての希望となるイベント」いうような前向きな意見まで様々あります。

どちらが正しいかは、10年後くらいまでに評価されるでしょうし、神のみぞ知るです。(結局、すっきりとどちらが正しかったとは言えないということもありえます。)

ただ、始まった以上は、中止にならない限りは、選手や運営スタッフの皆さんには、頑張っていただきたいし、最後まで無事終えて成功となることを祈ります。(組織のマネジメントに振り回される現場の苦労は大変だったでしょう)

1)ステージ4でも開催?観客は? コロナ専門家、五輪開催の「リスク評価」提言へ(東京新聞 2021/6/4)

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