はじめに
海外生活スタイルの多様化
「海外在留邦人」1) の数は、「長期滞在者」が約72万人、「永住者(日本国籍者)」が約57万人で、合計約129万人(成人数は約102万人)に達します。2)
海外旅行は、1970年代以前は裕福層に限られていましたが、その後、渡航者数が100万人を超えるなど一般化し、航空運賃が大幅に安くなったことで、より身近なものとなりました。3)
ビジネスのグローバル化とともに世界を駆け巡る生活や、「(海外)ノマド」4)、「教育移住」、「リタイア後の短期移住(プチ移住)」など、海外生活スタイルも多様化しており、「日本か海外かのどちらか一方にだけ生活の拠点がある」とは一概には言えないケースも生じています。
住民票を抜くか、抜かないか悩むケース
海外への転出にあたって、自宅を売却したり、賃貸を解約しての完全移住や、長期間にわたる海外出張であれば、一般的には「国外転出届」を出して住民票を抜くことになります。
しかし、日本に居住できる家があるなど、日本と海外の両方に生活の拠点がある場合、「住民票を抜くか、それとも残しておくか?」と悩むかもしれません。
また、以下のような疑問や問題が生じることがあるかもしれません。
「国外転出届や転入届は、1年以上の滞在が基準なのか? 一時帰国で転入届を出すことは認められないのか?」
「役所によって扱いが異なるのではないか?」
「役所が転入届を受け付けてくれない場合、どうすればよいのか?」
「そもそも基準はあるのか?」
「インターネットに格安で住民登録ができると謳っているサービスが掲載されているが、これは合法なのか?」
私は以前公務員だったときに、住民票とも関係のある業務に携わっていたことがあります。その時の経験をもとに、これらについて次回に解説します。
今回は、海外移住をする際に住民票を抜いた場合と残した場合、それぞれのメリット・デメリットについてまとめています。
次回詳しく述べますが、住民票は、自分の意思のみで自由に入れたり抜いたりできるものではありません。
しかし、住民票を抜いてしまった後や、残しておいたために思いもよらなかった問題が生じることもあります。
ですから、住民票がある場合とない場合で、どのような違いがあるのかを知っておくことは大切です。
また、将来の移住計画の参考になる「住所」に関連する情報も合わせて取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
1)ここでいう「海外在留邦人」は、「旅券法」により、外国に住所または居所を定めて3ヶ月以上滞在する場合に提出が義務付けられている「在留届」を提出した者を指します。
「在留届」(在アメリカ合衆国日本国大使館)
2)「海外在留邦人数調査統計 令和5年(2023年)10月1日現在」(外務省)
3)「【第12号】3. 日本発運賃の歴史と変遷(その4)海外渡航自由化と運賃の変化」(Official Filing Company)
4)「ノマドとは」:「ノマド(nomad)」は、英語で「遊牧民」を意味します。近年、IT機器を駆使してオフィスだけでなく様々な場所で仕事をする新しいワークスタイルを指す言葉として定着しました。このような働き方を「ノマドワーキング」、こうした働き方をする人を「ノマドワーカー」などと呼びます。(コトバンク)
【注意事項】
(1)情報ソースは極力、公的機関や弁護士、税理士などの専門家によるものとし、参考Webサイトのリンクなどを貼っています。
本文中の「 」内は、引用または内容を損なわない範囲で文言を整理して記載しており、引用元は( )内に記載しています。
なお、市区町村のホームページからの引用は代表的な例を記載していますので、ご自身の住んでいる自治体をご確認ください。
(2)当ブログでは、以下の用語を略称で表記する場合があります。
「住民基本台帳」→「住基」
「国民健康保険」→「国保」
「外国為替及び外国貿易法」→「外為法」
(3)当ブログでは、以下の定義で用語を使用します。
【住所】
単に「住所」と記載した場合は、「住民基本台帳法上の住所」を指します。所得税法など「租税法上の住所」や「外為法上の住所」などとは必ずしも一致しない場合があります。
【非居住者】及び【国外転出者】
住民基本台帳法では、「国外転出届」を出し、いずれの市町村においても「住民基本台帳に記録されていない者」を「国外転出者」としています。
一方、所得税法では、「国内に『住所』を有し、または、現在まで引き続き1年以上『居所』を有する個人」を「居住者」といい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。1)
当ブログでは、特に明記しない限り、「国外転出者」も「非居住者」と表記します。「所得税法上の非居住者」を示す場合は、原則として「所得税法上の非居住者」と明記します。
【海外在住者】
法律上は「海外在住者」の定義はありません。
「国外転出者」や所得税法上の「非居住者」など、それぞれの意味で使われる場合がありますが、当ブログでは、広義の意味に用いて「在留届」2)を出すべき人(外国に住所または居所を定めて3ヶ月以上滞在する者)を意味するものとして表記します。
【居所】
「居所」とは、「一時帰国者や自宅に戻れない長期出張者、または避難者などが、継続して居住しているものの、『生活の本拠』というほど結びつきが強くない滞在地」3)をいいます。
「住所」と「居所」は民法上区別があります。「住基」では、生活の本拠ではない「居所」は「住所」として扱われません。
【在外公館】
「在外公館」とは、海外にある日本大使館、総領事館、領事事務所などの総称です。
【都道府県】及び【市区町村】
地方自治法では「都道府県及び市町村」は「普通地方公共団体」、東京都の「特別区」は「特別地方公共団体」と区別されています。
地方税法では「個人」及び「法人」について「道府県民税」及び「市町村民税」が規定され、「都」と「特別区」については、別の条文でその規定を準用する形を取っています。
国民健康保険法では「市町村(特別区を含む。以下同じ。)」という条文になっており、と特別区は市町村に含まれるものとされています。
正確には、それぞれの法令に関する記述では、このように明記すべきところですが、当ブログでは、総じて「都道府県」及び「市区町村」と表記します。
【保険者】
「保険者」とは、公的保険の実施主体のことで、「国民健康保険」の場合は「国民健康保険組合」と「都道府県及び市区町村」です。
(4) 当ブログでは、特にことわりがない限り、会社員(海外出張)ではなく、無職あるいは自営業などによる海外移住を想定して説明しています。
(5)「制度改正」によって情報が古くなっている場合や、「自治体や個別の事業者によって異なる」ケースもあります。また、例外規定などについて記載しきれない場合や、個別の事案と例示した内容では似ている事例でも異なる対応となる場合もあります。問題解決にあたっては、必ず最新の情報を関係機関に問い合わせるなど、ご自身の責任においてご確認ください。
1)「居住者と非居住者の区分」(国税庁)
2)「在留届は出さなくてはいけないものですか?」(外務省オンライン在留届)
3)「いまさら聞けない行政用語」(公益社団法人 東京市町村自治調査会)
住民票がある場合・ない場合のメリットとデメリット
住民票があるメリット【住民票がないデメリット】
住民票があるメリットとして、日本滞在中に住民を対象とした行政サービスを受けることができ、その一部は海外滞在中も利用できる、といった点が挙げられます。
また、逆に、住民票を抜いて非居住者になった場合に、銀行口座やクレジットカード、携帯電話の利用や維持が困難になったり、新規での開設や契約を行うことが難しくなるなど、トラブルが生じることがあります。
さらに、最近では、日本と海外の2重拠点で生活しているようなケースで、役所によっては、海外からの転入に関して「1年以上の滞在予定」でないとして、転入届がスムーズに受理されないというような対応がとられる例があるようです。このような場合、住民票を残しておくことで、トラブルを回避できる可能性が高まります。
以下は、住民票がある(残す)メリットと住民票がない (抜く)場合のデメリットの概要です。
- 住民票を残せば帰国の際にそのまま住民対象の給付やサービスなどが受けられる。
- 住民票を残せば帰国時に加入手続きをすることなく「国民健康保険」で保険診療を受けられるとともに、海外でかかった医療費は海外療養費が支給される場合がある。
- 「銀行口座」は、住民票を抜いた場合は維持できない可能性があり、また、新規開設も原則としてできない。
- 「クレジットカード」は、住民票を抜いた場合、新規では作れない可能性がある。また、銀行口座が使えない場合、維持できない可能性がある。
- 「携帯電話(ポストペイドで音声通話機能付)」は、住民票を抜いた場合、原則として新規の契約はできない。また、銀行口座やクレジットカードが使えない場合は維持できない可能性がある。
- 「証券口座(特定口座・一般口座)」は、住民票を抜いた場合、原則として解約となる(制限付きで維持できる口座を用意している証券会社もある)。
- 「NISA(少額投資非課税制度)」は、住民票を抜いた場合は原則として解約となる。
- 「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、住民票を抜いた場合は加入できない(国民年金に任意加入していれば可能だが、所得控除の税制優遇のメリットはない。)
- 「生命保険」は、住民票を抜いても一般的には維持できるが、新規加入はできない可能性がある。
- 介護保険は住民票を残せば加入することになり、原則として65歳以上からは、介護認定を受ければ「介護サービス」が受けられる(国内のみ)。
住民票がないメリット【住民票があるデメリット】
住民票がない(抜く)メリットとしては、「住民税」や「国民健康保険料」、「介護保険料」などがかからないという点が挙げられます。また、租税法上の非居住者となることで、所得税は日本国内で稼得した「国内源泉所得」のみが課税対象となります。
ただし、住民票を抜いたからといって、即座に租税法上の非居住者扱いにはならない点に注意が必要です。
一方、所得が少ない場合は、所得税は基本的には累進課税であり、住民税や国民健康保険料は、非課税扱いや、低所得者の軽減措置などの負担軽減措置があるので、負担感は軽減されます。
以下は、住民票がない(抜く)メリットと住民票がある(残す)場合のデメリットの概要です。
- 住民票を抜けば「国民健康保険料」や「介護保険料」などを支払う義務がなくなる。ただし、低所得者の場合は住民票を残した場合も軽減措置の対象になるため、住民票を残していても負担は少ない。
- 住民票を抜けば「住民税」がかからない。ただし、低所得者の場合は住民票を残しても非課税になる可能性もあり負担は少ない。
- 住民票を抜くとともに租税法上の非居住者になれば、所得税は「国内源泉所得」のみが課税対象となる。租税法上の居住者である場合、国外収入も課税対象となるが、低所得者の場合は非課税になる可能性もあり、負担は少ない。
- 住民票を抜けば、要件を満たした場合は一時帰国の際に消費税免税制度を利用できる場合がある
- 住民票を抜けば、国民年金への加入義務はなくなり、任意となる。
「住民票を残した場合」と「抜いた場合」のメリット・デメリットを挙げましたが、次回で説明する住所の定義を理解し、適正な手続きを行わないと、後日、住民票が遡って取り消されたり、逆に住所があるとして課税されるなどのトラブルが発生する可能性があるため、ご注意ください。
では、具体的に見ていきます。
税金・公的保険など
所得税
※この項目における「非居住者」は、所得税法上の「非居住者」を指します。
「タックスヘイブン」1)や「パーマネントトラベラー」2)という言葉がありますが、税負担を減らすため、日本よりも所得税率が低い国や地域へ移住し、日本では非居住者となることが検討される場合があります。このようなノウハウは書籍やインターネットで多く紹介されています。
さらに、最近では富裕層だけでなく、「海外ノマドワーカー」として海外で生活する人も増加しています。
「住所」と「税制」の関係は複雑です。インターネットなどで多くの情報が提供されていますので、ここでは簡単にポイントを説明します。
1)「タックス・ヘイブン(Tax Haven)」:課税が完全に免除されたり、著しく軽減されたりしている国や地域のことで、租税回避地、低課税地域とも呼ばれます。主に税制上の優遇措置を地域外の企業に対して戦略的に設けている国や地域を指します。「タックス・ヘイブン」(SMBC日興証券)
2)「パーマネントトラベラー(Permanent Traveler)」(パーペチュアル・トラベラー(Perpetual Traveler)ともいう):「永遠の旅行者」を意味し、各国で非居住者とみなされる滞在期間の間だけ滞在し、税金を国家へ合法的に払わない、もしくは納税する税金を最小にするライフスタイルのことです。
「パーペチュアル・トラベラー」(ウィキペディア)
【参考Webサイト】
「税率・税負担等に関する資料」(財務省)
- 「国外転出届」を提出して住民票を抜いても、直ちに所得税法上の非居住者になるわけではありません。非居住者となるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。たとえ住民税が非課税になったとしても、所得税法上は「居住者」と見なされる場合もあります。1)
- 「非永住者以外の居住者」は、所得が生じた場所が日本国内外を問わず、そのすべての所得に対して課税されます(全世界所得課税方式)。2)
- 海外に滞在している者の所得に対し、日本と外国間での二重課税を排除するため「外国税額控除制度」や「租税条約」などの制度があります。3)
- 非居住者は、日本国内において生じた所得(国内源泉所得)に限って課税されます。4)
- 非居住者に対する源泉徴収は別に定められており、例えば給与に係る税率は一律20.42%となります。なお、原則として、この税額が源泉徴収されることにより課税関係が完結するため、確定申告の必要はありません。5)
- 出向している従業員である非居住者が、一時帰国中にリモートワークで現地法人の業務を行った場合、出向元から給与が支払われるのであれば「源泉徴収」の対象となります。6)
- 非居住者となる場合、1億円以上の資産にかかる「国外転出時課税制度」の対象となる場合があります。7)
- 日本国内で不動産所得などがある場合は確定申告をしなければならないため、納税管理人などの準備が必要です。8)
- 年の途中で海外に転勤し非居住者になる場合は、出国までに年末調整を行う必要があります。なお、出国後の非居住者に給与等を支払う場合は、役員と使用人で源泉徴収の仕方が異なります。9)
1)「居住者非居住者、住民税との関係」(山口国際税務会計事務所)
2)「『非永住者』とは、居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいう。非永住者は、所得税法に規定する国外で生じた所得(国外源泉所得)以外の所得と、国外源泉所得で日本国内において支払われ、または日本国内に送金されたものに対して課税される。」
2)「納税義務者となる個人」(国税庁)
2)「【税務の基礎知識(国際税務)】国際的な個人所得税の課税方式」(税理士法人ディレクション)
3)「所得税の外国税額控除とは?概要や受けるための条件について解説」(辻・本郷 税理士法人)
3)「租税条約とは?二重課税を排除するための内容とは」(freee税理士)
3)「居住者に係る外国税額控除」(国税庁)
4)「海外勤務中の非居住者も確定申告が必要?課税のしくみや納税管理人の選定方法を解説!」(ジェトロ)
4)「海外勤務中に株式を譲渡した場合」(国税庁)
4)「モナコは所得税ないけど 海外在住者、株売却益33億円無申告で追徴」(朝日新聞DIGITAL 2024/07/22)
5)「日本における給与に係る源泉徴収制度の概要 令和4年版」(国税庁)
5)「非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率」(国税庁)
6)「一時帰国した従業員がリモートで現地法人の業務、三菱電機が源泉徴収漏れで追徴課税」(読売新聞オンライン 2022/05/28 )
7)「国外転出時課税制度」(国税庁)
7)「国外転出時課税制度(FAQ)」(国税庁)
7)「国外転出時課税制度とは?相続・贈与時の適用についても解説」(税理士法人レガシイ)
7)「日本の国外転出時課税制度について」(在ニューヨーク日本国総領事館)
8)「非居住者(海外に住んでいる人)の確定申告について」(税理士事務所 TIME)
9)「【日本の不動産を保有している海外在住の方】日本での確定申告を徹底解説」(プロビタス税理士法人)
9)「海外勤務中に不動産所得などがある場合」(国税庁)
9)「国内に住所を有さなくなった場合の確定申告書の提出先」(国税庁)
9)「海外に転勤する人の年末調整と転勤後の源泉徴収」(国税庁)
【参考Webサイト】
「非居住者等に対する課税のしくみ(平成29年分以降)」(国税庁)
相続税
ポイント
- 非居住者と相続税の対象とならない「海外資産」
- 「国際相続」(日本国内の資産・財産と異なる手続き)
- 非居住者の相続と「国外転出時課税制度」
- 非居住者と「印鑑証明書」
1.非居住者と相続税の対象とならない「海外資産」
被相続人と相続人の両者が10年以上前から非居住者である場合、海外にある財産については、日本の相続税はかかりません。
(2017年に相続税法が改正され、それまでの5年以上から10年以上に延長されました。)
【参考Webサイト】
「相続の知識 海外在住者の相続税はどうなる?国際相続の課税ルールと節税のポイント」(税理士法人レガシィ)
「相続人が外国に居住しているとき」(国税庁)
「海外居住者は要注意! 相続税・贈与税の納税義務範囲の見直し」(チェスターNEWS 2017/03/28)
「平成29年度税制改正 相続税の納税義務の範囲」((一社)東京法人会連合会 2017/03/10)
2.「国際相続」(日本国内の資産・財産と異なる手続き)
遺産に海外の財産が含まれる場合、国際相続となり、日本の法律だけでなく、関係する国の法律も適用される可能性があります。
その場合、例えば「検認裁判」1)のように、遺産分割の手続きや相続税の計算方法が、日本の相続と異なる場合があります。」
1)「検認裁判」:アメリカの相続は、日本の相続と異なり、英米法体系の国で広く採用されている「検認裁判(プロベート:A probate court (a surrogate court))」により、裁判所の監督のもとで遺産の確定、負債の弁済、相続人への分配が行われます。
【参考Webサイト】
「アメリカ不動産の相続は大変!…やっておきたい事前準備」(あおぞら銀行)
「国際相続が発生する海外資産について網羅的に解説」(税理士紹介エージェント パスクリエイト)
「海外にある不動産などの資産の相続はどうなる? 弁護士が解説」(ベリーベスト法律事務所・税理士事務所)
「在日フィリピン人の相続手続きガイド|相続法適用から税金、必要書類を解説」(外国人登記ビジネスナビ)
3.非居住者の相続と「国外転出時課税制度」
1億円以上の有価証券などを保有し、日本国内に居住していた者が死亡した場合に、その資産を海外に居住する親族などが相続すると、国外転出時課税制度の対象となる場合があります。
この場合、相続が開始される段階で、対象となる相続資産は時価で売却されたものとみなされ、故人の所得税として課税されます。
【参考Webサイト】
「相続時の国外転出時課税制度」(税理士法人レガシイ)
「国外転出時課税制度」(国税庁)
4.非居住者と「印鑑証明書」
相続手続きには通常、相続人の印鑑証明書が必要ですが、海外在住で日本に住所登録をしていない相続人の場合は、印鑑証明書の代わりに、海外の公館で発行される「署名証明書」や「在留証明書」などの書類が必要となります。
※「印鑑証明(実印)」の項目もご参照ください。
【参考webサイト】
「海外相続人の必要書類」(三菱UFJ信託銀行)
住民税
住民税とは
「住民税」は「地方税法」で定められた地方税の一つであり、各地方公共団体は「都道府県民税」と「区市町村民税」を徴収します。これにより、個々の地域の住民に対して、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得に関わらず定額の負担を求める「均等割」が課されます。
住民税の計算方法は法律で定められており、基本的にはどの自治体でも同じ計算方法が適用されますが、自治体によっては税率や税額に違いがあったり、「均等割」や「所得割」の非課税基準が異なる場合があります。
【参考Webサイト】
「住民税額は自治体によって異なるのでしょうか?」(東京都中央区)
「個人住民税」(総務省)
「全国1,718市区町村の住民税を一覧化!最も高い&安い自治体の差額の例を紹介」(カケハシ スカイソリューションズ)
「住民税が高い/安い自治体はどこ? 差額はいくら?【2024年版 最新ランキング】」(INTERNET.Watch)
ポイント
- 「住民税」の「賦課期日」は1月1日(賦課期日に住民登録がなければ課税されない)
- 年の途中で国外転出しても税額は同じ(月割りにはならず1年分の納付義務)
- 前年の所得が課税対象
- 「国外転出」と「納税管理人」
- 1月1日に住民票がなくても「家屋敷課税」がかかる場合
- 「減免制度」と「国外転出」
1.「住民税」の「賦課期日」は1月1日(賦課期日に住民登録がなければ課税されない)
海外転出届を提出したことにより、1月1日(賦課期日)時点で住民登録がない場合、その年度の住民税は課税されません。
【参考Webサイト】
「海外に転出した場合は、住民税(市民税・県民税)はどうなりますか?」(千葉県富里市)
2.年の途中で国外転出しても税額は同じ(月割りにはならず1年分の納付義務)
年の途中で国外に転出しても税額は変わりません。「国民健康保険料」は月割りで計算され、精算されますが、「住民税」はその年度の1年分を納付する必要があります。
【参考Webサイト】
「納税義務者が国外転出するときの住民税の手続きについて教えてください。」(東京都板橋区)
3.前年の所得が課税対象
課税対象となる期間は、その前年の1月から12月までの1年間です。この1年間の所得に対して、翌年度に課税されます。
例えば、仕事を辞めて現在は無職で収入がゼロでも、前年の所得に対して課税されることになります。
【参考webサイト】
「住民税の仕組み」(東京都練馬区)
「令和5年度個人住民税検討会報告書」(個人住民税検討会)
4.「国外転出」と「納税管理人」
国外へ転出する場合には、納税義務者の代わりに納税通知書を受け取り、納税するための「納税管理人」を選任する必要があります。
出国前に全額納付していても、1月2日から6月中(納税通知が届く時期)に出国した場合など、翌年度の住民税が課税される場合は、「納税管理人」の選任が必要となるため、注意が必要です。
【参考Webサイト】
「国外転出するときの個人住民税の手続き」(東京都中央区)
5.1月1日に住民票がなくても「家屋敷課税」がかかる場合
1月1日現在、区市町村内に住所がなくても、区市町村内に事務所や事業所、または家屋敷を有する場合は、住民税の均等割が課税されます。
これを「家屋敷課税」といい、土地や家屋そのものに課税される固定資産税とは区別して、市区町村や都道府県の行う公共サービス(消防、防災、道路、衛生など)に対して、一定の負担をするものです。
【参考Webサイト】
「事業所課税・家屋敷課税とは」(千葉県富里市)
「家屋敷課税とは」(大分県杵築市)
「地方税法第294条第1項第2号」(e-GOV法令検索)
6.「減免制度」と「国外転出」
火災や風水害などの災害に遭った場合や失業などで「生活が困難で特別な事情」がある場合には、その事情に応じて、条例の定めに基づき、住民税の減免を受けられることがあります。
しかし、一般的に国外転出する場合は「減免制度」の利用は難しいと考えられます。
【参考Webサイト】
「減免制度について」(兵庫県姫路市)
「地方税法(第三百二十三条)」(e-GOV法令検索)
国民健康保険(国保)
国民健康保険(国保)とは
日本は、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」を採用しています。「国民健康保険制度(国保)」もその一環であり、職場の「健康保険」や「後期高齢者医療制度」に加入している人、または「生活保護」を受けている人以外で、住民登録をしている人は、原則として加入しなければなりません。
国保では、家族一人ひとりが被保険者ですが、保険料の納付などは世帯単位で行います。保険料の納付義務は「世帯主」にあります。1)
安心して医療を受けることができる
海外で、滞在国の公的医療保険や民間医療保険に加入していない場合、「自由診療」2)で医療を受ける際、医師や医療機関によって治療方法や医療費の算出方法が異なることがあります。また、医療機関側も治療費の未払いに対する懸念が生じます。3)
一方、保険診療であれば、医療機関は「診療報酬」4)に基づいて診療と価格が決められているため、誰でも平等に適正な料金で医療を受けることができます。
また、医療機関側にとっても、一部負担金を受け取れば、残りの費用は保険者が直接医療機関に支払うため、未払いの心配もありません。5)
がんの最新治療法などの「先進医療」6)は保険診療の対象となりませんが、「先進医療に係る費用」以外の通常の治療と共通する部分については、一般の保険診療で治療を受けることができる制度もあります(保険外併用療養費制度)。
さらに、交通事故など「第三者の行為」によるけがの治療に保険証を使用することもできます。
この場合、窓口で支払う一部負担金以外の医療費(保険給付分)は「保険者」が加害者に代わって立て替え、後日加害者に請求します。7)
このような「公的医療保険制度」は、世界的に見ても、とても充実した制度といえるでしょう。
1)「世帯主」が他の健康保険に加入していても、「国民健康保険料」の納付義務はありますが、この「世帯主(擬制世帯主)」は国保の被保険者ではありません。そのため、国保で診療を受けることはできず、保険料算定の計算からも除外されます(ただし、軽減算定には含まれます)。
1)「保険料の算定」(奈良県奈良市)「国民健康保険税の軽減制度について」(群馬県千代田町)
2)「【アメリカ合衆国の医療費】都市別の医療費と事例」(損保ジャパン)
1)「自由診療の治療費は高額になる場合もある」(SBI損保)
3)「外国人受け入れ病院、2割で未払い発生 最高1846万円も」(日本経済新聞 2024/08/15)
4)「診療報酬制度について」(厚生労働省)
3)「診療報酬関連情報」(厚生労働省)
5)このように、患者が医療機関の窓口で一部負担金のみを支払い、残りは「保険者」から直接医療機関に支払われる仕組みを「現物給付」といいます。一方、例外的に、「療養費」のようにやむを得ない場合に医療機関に全額を支払った後、後日「保険者」に請求して払い戻しを受けることや「出産育児手当金」などのように金銭で支給されることを「現金給付」といいます。
6)「先進医療の概要について」(厚生労働省)
7)「交通事故にあったとき」(北海道別海町)
6)「犯罪被害や自動車事故等による傷病の保険給付の取扱いについて」(厚生労働省)
6)「交通事故のケガで健康保険は使える?」(アディーレ法律事務所)
6)「交通事故では健康保険を使って通院したほうがいいのか?」(弁護士法人せせらぎ法律事務所)
6)「交通事故に遭った際は健康保険をつかうべき?保険診療と自由診療のメリット・デメリット」(弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所)
【参考Webサイト】
「国民皆保険制度と国民健康保険について」(香川県高松市)
「我が国の医療保険について」(厚生労働省)
「国民健康保険組合について」(厚生労働省)
ポイント
- 【資格】住民票がなければ対象外
- 【保険料】市区町村によって異なる保険料
- 【保険料】所得が多い場合の限度額
- 【保険料】所得が少ない場合の負担軽減
- 【高額療養費】医療費が高額になる場合の自己負担の限度額
- 【海外療養費】海外で医療を受けた場合の給付
- 【不妊治療】不妊治療も保険適用(国内のみ)
- 【出産育児一時金】海外で出産した場合も支給対象
- 【葬祭費】葬祭を行った場合に支給
1.【資格】住民票がなければ対象外
国保加入者が国外転出し、住民登録が抹消された場合、その時点で国保の被保険者ではなくなります。
「海外在住者と日本の医療保険、年金」(厚生労働省)
2.【保険料】市区町村によって異なる保険料
国民健康保険料の額は市区町村ごとに異なります。1)これは、各市区町村の医療費の違いや、「国保特別会計」への「一般会計」からの繰り入れ額の違いなどが原因です。
保険料の水準をできるだけ統一するため、2018年に、都道府県が財政運営の責任主体となるなどの制度改正が行われました。2)
また、国民健康保険料は「後期高齢者支援分」と「介護納付金分」とを合わせて徴収します。
なお、市区町村は、国民健康保険料を「税」として徴収することが認められています。3)
1)「県内市町村の国民健康保険料(税)率」(千葉県)
2)「保険料水準統一加速化プラン(第2版)」(厚生労働省)
1)「県内国保の保険料水準の統一に向けた取り組みについて」(総務省)
1)「『どこに住んでも保険料は同じ』市町村で異なっていた国保保険料、水準を統一…全国初」(読売新聞オンライン 2024/04/04 )
1)「国民健康保険制度改革について」(厚生労働省資料より抜粋:大阪府)
3)「国民健康保険税」(総務省)
3.【保険料】所得が多い場合の限度額
例えば新宿区の場合、総所得金額が850万円以上(単身世帯)で保険料が限度額に達し、年間89万円(医療分が65万円、後期高齢者医療制度への支援分が24万円で、介護保険料分の17万円を含めると106万円)となります。1)
健康であまり病院に行かず、所得が多い人にとっては、負担が大きいと感じられるかもしれません。
1)この「賦課限度額」は政令で定められており、基本的にはすべての市区町村は政令に合わせて条例で定めます。1)
【参考Webサイト】
「保険料の計算方法について」(東京都新宿区)
「国民健康保険の保険料・保険税について」(厚生労働省)
「国民健康保険料、上限2万円引き上げ 24年度に106万円」(日本経済新聞 2023/10/25)
「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」(令和5年10月27日)(厚生労働省)
4.【保険料】所得が少ない場合の負担軽減
国民健康保険料は、所得に応じて軽減措置が設けられています。法令により定められた所得基準を下回る世帯については、「応益割(均等割・平等割)」額が7割、5割、または2割減額される制度があります。1)
例えば、新宿区の場合、単身世帯で給与収入が98万円の場合、給与所得は43万円となり、基礎控除43万円で所得割がゼロになります。このケースでは、均等割が7割軽減され、年額82,100円(支援金含む・介護分あり)が24,630円に減額されます。
また、災害や出産など特別な事情により、一時的に生活困難となり、国民健康保険料を納められなくなった世帯は、申請により一定期間に限り保険料が減額・免除される場合があります。
1)市区町村(保険者)の保険料は、被保険者の保険料負担能力に応じて賦課される「応能分(所得割、資産割)」と、受益に応じて等しく被保険者に賦課される「応益分(被保険者均等割、世帯別平等割)」から構成されます。ただし、市区町村によっては資産割がなく所得割のみであったり、世帯別平等割がなく被保険者均等割のみの場合など、算定方法が異なることがあります。
【参考Webサイト】
「国民健康保険料(税)の概要について」(WAM NET)
「国民健康保険料・保険税の軽減について」(厚生労働省)
「保険料の計算方法について」(東京都新宿区)
「国民健康保険料の減額・減免制度」(東京都江戸川区)
5.【高額療養費】医療費が高額になる場合の自己負担の限度額
例えば、70歳未満で「世帯主及び国保加入者全員が住民税非課税」の人が入院した場合、1か月の自己負担額が35,400円を超えた分が「高額療養費」として支給されます。今は保険診療でも何千万円というような高額な治療が行われることもありますが、自己負担は「限度額」までとなります(食事療養費は別途必要です)。
高額療養費の限度額は上記の表のように年齢や所得の区分によって異なります。また、一つの世帯内での医療費を合算(世帯合算)したり、直近1年間で4ヶ月目以降の自己負担額が軽減される制度(多数回該当)など、とても複雑なので十分ご確認ください。なお、限度額などの高額療養費制度は政令で定められており、全国一律です。
窓口の一部負担金の額が高額療養費の限度額を上回った場合、本来は一部負担金を支払った後に高額療養費を申請して還付されますが、「(限度額適用)認定証」を医療機関の窓口に提示すれば、窓口で支払う一部負担金は限度額までとなります。
なお、この高額療養費制度は療養費の場合も適用され、後述する海外療養費の支給にあたっても、最終的な自己負担額は高額療養費分を除いた額となります。
【参考webサイト】
「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(厚生労働省)
「高額療養費支給制度」(神奈川県横浜市)
6.【海外療養費】海外で医療を受けた場合の給付
海外で病気やけがにより、やむを得ず現地の医療機関で診療を受けた場合、帰国後に申請により一部医療費の払い戻しを受けられる制度です。1)
海外療養費は「療養費」の規定に基づき支給され、対象となるのは日本国内の保険診療として認められた治療に限られるため、審美や矯正など保険診療の対象にならない歯科治療や美容整形、自然分娩などは支給対象とされません(出産に関しては出産育児一時金の対象となる場合があります)。
また、一般的に、国内で治療できるにもかかわらず、治療目的で海外に渡航した場合は、療養費の支給要件である「やむを得ないものと認めるとき」に該当しないとして支給対象外とされます。
なお、臓器移植は国内で保険対象です。海外療養費が支給されない例として案内している市区町村も多いですが、いくつかの要件を満たし、「やむを得ない」に該当する場合は支給対象となります。2)
不妊治療、性転換手術などは国内で保険対象となる場合もあります。保険対象であっても治療目的の渡航で「やむを得ない」に該当しないと判断され、支給対象とならない場合があります。
交通事故やけんかなど第三者の行為や不法行為が原因の病気・けがの場合は、保険診療の対象外であることや現物給付ではないことから支給対象外としている市区町村3)が多い一方、対象として案内している市区町村4)もあります。
なお、海外療養費の支給事務に関しては、「会計検査院」から誤りや不適切な事務処理が指摘されており、適正な審査が求められています。5)また、支給基準や手続きは各市区町村によって若干異なる場合もありますので、各保険者にご確認ください。
手続きは煩雑
現地の医療機関が記入した「診療内容明細書」と「領収明細書」、及びその日本語訳が必要になります。また、パスポートで渡航期間の確認が行われ、日本に居住実態がない場合は、遡って住民票の抹消を求められる可能性があります。
さらに、海外療養費の申請から支給まで数ヶ月かかる場合もあり、その間は、申請内容の確認などで役所とのやり取りが必要になる可能性があります。
申請のサポートを行っている事業者
通常、海外の医師は日本の保険診療の内容を知らないため、診療明細に不明瞭な記載があると保険診療相当と認定されない可能性があります。
フィリピンの「ジャパニーズヘルプ」のように、民間の「海外旅行保険」などの申請手続きに加え、「海外療養費」のサポートも行っている事業者もあります。6)
1)「海外で診療を受けたとき(海外療養費)」(千葉県船橋市)
2)「臓器移植に係る海外療養費の取扱いについて〔健康保険法〕」(厚生労働省)
2)「海外療養費の手引き(保険者担当用)」(静岡県)
2)「東京都北区国民健康保険療養費支給要綱」(東京都北区)
3)「海外療養費制度について」(島根県浜田市)「海外療養費のご案内」(長野県飯山市)
4)「海外療養費」(東京都北区)「東京都北区国民健康保険療養費支給要綱」(東京都北区)
5)「国民健康保険等における海外療養費の支給について(平成28年度決算検査報告)」(会計検査院)
3)「海外療養費の支給申請及び審査等に係る事務の取扱いについて」(厚生労働省)
3)「現金給付等の見直しについて(海外療養費・傷病手当金・出産手当金)」(厚生労働省)
6)「【フィリピン】海外メディカルサポートプログラムの販売開始」(フィリピン:ジャパニーズヘルプサービス)
4)「ジャパニーズメディカルデスク・タイランド(JMD Thailand) サポート内容」(タイ:JMDタイランド)
7.【不妊治療】不妊治療も保険適用
2022年から、従来は自費診療だった体外受精など不妊治療に係る医療費が保険適用されるようになりました。
「海外療養費」の対象になるかについては、上記で説明したように「やむを得ない」に該当するかの判断となりますので、各保険者にご確認ください。
なお、2022年の出生数は約77万人で、不妊治療の体外受精で誕生した子どもは約7万7千人と、およそ10人に1人が体外受精で生まれた計算になります。
【参考Webサイト】
「不妊治療が保険適用されています」(厚生労働省)
「体外受精児、10人に1人 保険適用で増加か」(共同通信社 2024/08/30 )
8.【出産育児一時金】海外で出産した場合も支給対象
国民健康保険の被保険者等が海外で出産した場合も、出産育児一時金が支給されます(50万円)。ただし、日本に居住実態がない場合は、遡って住民票の抹消を求められる可能性があります。1)
出産費用は保険診療適用が検討されている
「こども未来戦略」2)において、「2026年度を目途に、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め、出産に関する支援等の更なる強化について検討を進める」とされたことを踏まえ、有識者による検討会での議論が行われています。3)
1)「国民健康保険被保険者が海外で出産した場合の出産育児一時金について知りたい」(熊本市コールセンター)
1)「出産育児一時金の支給額・支払方法について」(厚生労働省)
1)「『海外療養費及び海外出産に係る出産育児一時金等の支給の適正化に向けた対策等について』の一部改正について」(厚生労働省)
2)「子育て支援」の項目を参照のこと。
3)「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」(厚生労働省)
3)「出産診療報酬「50万円以内」、妊婦は自己負担ゼロ・現行一時金との差額支給も…政府検討」(読売新聞 2024/08/13)
9.【葬祭費】葬祭を行った場合に支給
国民健康保険の加入者が死亡したときは、葬祭執行者(喪主)に「葬祭費」が支給されます。金額は自治体によって異なります。
「葬祭費」(横須賀市)
海外における死亡に伴う葬祭料の支給について記載されているホームページはみあたりませんでしたが、遺体を日本に搬送し火葬する場合は、一般のケースと同様の手続きが可能なため、問題はないかと思われます。
出産育児一時金同様に、適正に日本に住所があることが前提ですが、海外で火葬、葬儀、埋葬される場合は「保険者」にご相談、ご確認ください。
トピック
マイナンバーカードと健康保険証の一体化
現行の「健康保険証」の発行は2024年12月2日に終了します。ただし、終了時点で手元にある有効な保険証は、その時点から最長1年間使用することができます。
医療機関に受診の際は「顔認証付きカードリーダー」で受付けが行われ、「医療機関窓口での高額療養費の限度額以上の一時支払いが不要」、「確定申告の医療費控除が『e-Tax』に連携」、「手術の履歴など医師等と情報を共有」、「電子処方箋システムの拡大」と、利便性の向上とともに、簡単に作れることによる「偽造」や「なりすまし」、「使い回し」といった犯罪の抑止につながることが期待されます。
※「マイナンバーカード」の項目も御覧ください。
【参考Webサイト】
「マイナンバーカードの健康保険証利用について」(厚生労働省)
「マイナンバーカードの健康保険証利用について~医療機関・薬局で利用可能~(令和4年1月)」(厚生労働省)
「電子処方せんはどうやって使うの?」(厚生労働省)
「日医総研ワーキングペーパー(電子処方箋導⼊の現状と課題)」(⽇本医師会総合政策研究機構 2024/05/29)
「電子カルテ情報共有サービスにおける運用について(2024(令和6)年1月24日)」(厚生労働省)
「健康保険証のなりすまし被害、スマホの契約で多く各社が本人確認書類としての取り扱いを終了済み」(Yahooニュース 2023/7/17)
介護保険
介護保険制度とは
介護保険制度の被保険者は、「65歳以上の者(第1号被保険者)」と「40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)」の2種類に分けられ、被保険者は介護保険料の納付義務を負います。
介護保険サービスは、65歳以上の人が原因を問わず要支援・要介護状態となったときに受けられ、40〜64歳の人は、末期がんや関節リウマチなどの老化による病気が原因で要支援・要介護状態になった場合に受けられます。
介護度に応じて市町村が「介護認定」を行い、「ケアマネージャー(介護支援専門員)」1)が作成した「介護(介護予防)サービス計画書(ケアプラン)」に基づき、介護サービスが提供されます。介護認定の有効期間は原則1年で、更新が必要ですが、「介護認定審査会」の判断により、最長48ヶ月まで延長される場合があります。2)
介護サービスを利用する際の自己負担額は、介護給付額の1割が原則ですが、要介護度によって限度額が定められています。3)
介護保険は、基本的に「介護認定を受けて『現物給付』4)でサービスを受ける」というシステムであり、国保の海外療養費のような海外での「現金給付」4)はありません。5)
国外転出して住民登録が抹消されれば、介護保険被保険者の資格を喪失します。
ただし、40歳以上65歳未満の医療保険加入の方(第2号被保険者)の場合、国内に被扶養者がいる場合など、引き続き保険料が発生する場合があるため、勤務先や加入する医療保険者に確認が必要です。6)
1)「介護支援専門員(ケアマネジャー)」(厚生労働省)
2)「要介護認定に係る有効期間の取扱いの変更について」(広島市)
1)「要介護認定の1年ごとの更新手続きがわずらわしい。どうにかならないでしょうか。」(東京都港区)
3)「介護保険の自己負担は所得に応じて1割から3割までのいずれかです」(東京都多摩市)
4)「現金給付」「現物給付」:サービス利用時には一部負担金のみを支払い、残りは「保険者」から直接サービス事業者に支払われることをいいます。サービス利用時に利用者が一旦全額を支払った後、後日「保険者」から給付を受ける場合は「現金給付」といい、介護保険では福祉用具の購入など例外的に「現金給付」が行われています。
5)「制度の持続可能性の確保」(厚生労働省)
6)「海外に滞在する場合、介護保険料を支払う必要があるのか。」(川崎市)
【参考Webサイト】
「介護保険制度の概要」(厚生労働省)
「介護サービスの種類」(厚生労働省)
健康保険・厚生年金
健康保険・厚生年金とは(社会保険)
「健康保険」は、会社員など被用者が加入する「医療保険」で、「全国健康保険協会(協会けんぽ)」や各企業の「健康保険組合(組合健保)」が運営しています。
また、「厚生年金保険」は、「国民年金」に上乗せされる年金制度で、被保険者は「健康保険」と同じく会社員などが対象となります。
【参考webサイト】
「社会保障とは何か」(厚生労働省)
「社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入手続きはお済みですか?」(厚生労働省)
「労働保険・社会保険とは?」(行政書士・社会保険労務士せきぐち事務所)
ポイント
- 国外転出した場合の「被保険者」の資格
- 退職等で資格を喪失した場合の「任意継続制度」と非居住者
- 国外転出した「被扶養者」の認定
1.国外転出した場合の「被保険者」の資格
出向などで、住民票を抜いて海外に居住している人も、「適用事業所」と「使用関係」1)があれば、健康保険及び厚生年金の被保険者資格が継続する場合があります。
(この点は国外転出して住民登録を抹消すると資格を喪失する国民健康保険や国民年金(任意加入は可能)と異なります)
ただし、健康保険の海外療養費は「現金給付」2)であり、現地の医療機関で「現物給付」2)で保険診療を受けることはできません。
なお、海外赴任した場合の相手国の公的保険との「二重加入」や「年金受給資格(期間)」の問題解消のための「社会保障協定」については「社会保障協定」の項目を御覧ください。
1)「使用関係」は、「労務の提供」、「賃金等の支払い」、「人事管理」等について総合的に判断されます。
2)「現金給付」「現物給付」:医療機関で受診した際に、医療費を全額支払った後に保険者負担分を給付したり、かかった医療費に関わらず手当のような形で支給されるのが「現金給付」であるのに対し、患者が医療機関の窓口で一部負担金のみを支払い、残りは「保険者」から直接医療機関に支払われる仕組みを「現物給付」といいます。
【参考Webサイト】
「年金・健康保険の被保険者区分について」(厚生労働省)
「海外在住者と日本の医療保険,年金」(厚生労働省)
「海外勤務者の報酬の取扱い」(日本年金機構)
2.退職等で資格を喪失した場合の「任意継続制度」と非居住者
海外留学や海外移住にあたって、それまで勤めていた会社を退職するという方もいらっしゃるかもしれません。
「任意継続被保険者制度」は、健康保険の被保険者が退職後も、選択によって最大2年間、退職前に加入していた健康保険の被保険者であり続けられる制度です。
資格喪失後は、企業が負担していた保険料も自己負担となるため、住民票を抜かない場合は、国民健康保険に加入するかどうかを比較検討する必要があります。
いずれにしても、項目1で説明したように、継続した場合も海外では「現物給付」での受診はできません。
【参考Webサイト】
「海外へ赴任する際の社会保険等の取り扱いは?わかりやすく解説します」(社会保険労務士法人とうかい)
「任意継続被保険者制度について」(厚生労働省)
3.国外転出した「被扶養者」の認定
会社を退職し「失業手当」が受けられる場合でも、受給が始まるまで、あるいは受給金額によっては、被用者保険に加入している家族の「被扶養者」として認定される可能性があります。
2020年に制度改正が行われ、被扶養者認定は、「生計維持要件」に加え、原則として「日本国内に住民票があること」が必要となり、国外転出して住民票を抜いた場合には、被扶養者認定が取り消される可能性があります。
ただし、国外転出する被扶養者のうち、「外国に留学する学生」、「外国に赴任する被保険者に同行する者」1)、「観光、保養またはボランティア活動など、就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者」など、渡航目的やその他の事情を考慮し、日本国内に生活の基礎があると認められる者は、「国内居住要件の例外(海外特例要件)」として、届出を行うことで、被扶養者認定が可能となります。
1)「外国に赴任する被保険者」は、国民年金第3号被保険者を扶養する国民年金第2号被保険者を含みます。
【参考webサイト】
「従業員の家族が海外居住の場合の手続き」(日本年金機構)
「健康保険法等の一部改正に伴う国内居住要件の追加(令和2年4月1日施行)」(日本年金機構)
「【事業主の皆様へ】被扶養者における国内居住要件の追加について」(日本年金機構)
国民年金(老齢基礎年金)
国民年金とは
国民年金は、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金制度です。加入者は「第1号被保険者(自営業・自由業・農林漁業・学生・無職の方など第2号、第3号被保険者以外の方)」「第2号被保険者(厚生年金に加入している会社員や公務員など)」「第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている配偶者)」の3つに分かれます。
「国民年金や厚生年金の保険料を納めた期間」や「年金制度に加入していなくても資格期間に加えられる期間(「カラ期間」と呼ばれる合算対象期間)」を合計したものが「資格期間」であり、10年(120か月)以上の資格期間があれば、納付した期間に応じた年金を受け取れます。
【参考Webサイト】
「海外在住者と日本の医療保険、年金」(厚生労働省)
「日本の公的年金は『2階建て』」(厚生労働省)
「年金を受けとるために必要な期間が10年になりました」(厚生労働省)
「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(厚生労働省)
ポイント
- 国外転出した場合は「任意加入」が可能
- 「任意加入」する場合の手続きと保険料の支払い(クレジットカード払い)
1.国外転出した場合は「任意加入」が可能
国外転出した場合、任意加入が可能です。任意加入しない場合、海外在住期間は合算対象期間として老齢基礎年金を受給するための資格期間に算入されますが、受給する年金額には反映されません。1) また、任意加入して保険料を納めることで、海外在住期間に死亡したときや病気やけがで障害が残ったときに「遺族基礎年金」や「障害基礎年金」が支給されます。2)
日本国内で国民年金に加入している場合、所得が少ないなどの理由で保険料の納付が困難な場合は、「保険料の免除(全額、4分の3、半額、4分の1)」を受けることができ、この期間中は、本来の2分の1(税金分)の年金を受け取れます。また、「保険料納付の猶予制度」もありますが、任意加入している人は、どちらも申請できません。3)
1)「合算対象期間」(日本年金機構)
2)「国民年金の任意加入の手続き(日本の年金制度への継続加入)3.将来の年金」(日本年金機構)
3)「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」(厚生労働省)
3)「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」(日本年金機構)
2.「任意加入」する場合の手続きと保険料の支払い(クレジットカード払い)
「任意加入」の手続きは、これから海外に転居する場合、住所地の市区町村が窓口となります。現在海外に居住している場合は、日本国内の最後の住所地を管轄する「年金事務所」、日本国内に住所を有したことがない場合は、「千代田年金事務所」が窓口となります。
保険料の納付方法は、国内にいる親族などに代行してもらう方法や日本国内の預貯金口座からの引き落としがあります。クレジットカードでの支払いも可能ですが、海外発行のクレジットカードは、「国民年金保険料の指定代理納付者」でない場合、有効期限が到来した際に手続きが必要になり、また、引き落としが何らかの理由でできなかった場合にも、対応が必要ですので、年金事務所に確認することをお勧めします。
【参考Webサイト】
「海外に住むことになりますが、保険料はどのように納めるのですか」(日本年金機構)
「クレジットカードでのお支払い」(日本年金機構)
「今般の国際情勢を受けたロシア国内カード会社発行のクレジットカードによる国民年金保険料の納付について」(日本年金機構)
3.海外からの年金請求(代理人による申請も可能)
「年金請求書」の提出先は、「日本国内の最終住所地を管轄する年金事務所」または「街角の年金相談センター」です。郵送や代理人による請求も可能です。
ただし、「社会保険労務士でない者が、有償無償を問わず年金相談に応じることについては問題はないが、報酬を得て、年金請求書の作成や、提出に関する手続きを代わってしてはならない」(社会保険労務士法)」とされています。
社会保険労務士や弁護士など、法律により業務を行える者以外が有償で申請業務を行う場合、違法となる可能性があるため注意が必要です。
【参考Webサイト】
「海外にお住まいの方の年金の請求」(日本年金機構)
「来訪せずに年金請求書のみ郵送してもよいですか。その際の郵送先を教えてください。」(日本年金機構)
「年金相談や手続きを代理人に委任するとき」(日本年金機構)
「年金相談コンプライアンス」(Financial Adviser)
「社労士の独占業務|他の士業でもできるのか、今後の社労士のあり方についても解説」(クレアール)
4.海外金融機関の口座での年金受領
海外にお住まいの年金受給者は、届出を行うことで海外の金融機関の口座への振込を依頼できます。ただし、国ごとに送金通貨が指定されています。1)
1)「海外にお住まいの年金を受けている方が海外の金融機関の口座への振込を希望するとき」(日本年金機構)
5.海外在の住年金受給者の「現況届」
「海外在住で年金を受け取る場合、年1回「現況届」の提出が必要です。日本年金機構から、誕生月の前月下旬に現況届が発送されます。提出する現況届には、日本領事館等が発行した在留証明書の添付が必要です。」
「海外にお住まいの年金を受けている方が誕生月を迎えたとき」(日本年金機構)
「在留証明」(在フィリピン日本国大使館)
社会保障協定
社会保障協定とは
日本から外国に派遣され就労している被用者及び外国から日本に派遣され就労している被用者について、生じている「二重加入」1)や「年金受給資格(期間)」2)の問題を解決するために、「適用調整」と「保険期間の通算」の2つを主な内容とした「社会保障協定」があります。
2024年4月1日現在、23カ国との間で「社会保障協定」が締結されています(ただし、英国、韓国、中国、及びイタリアとの協定は、「保険料の二重負担防止」のみとなっています)。
〚適用調整〛
相手国への派遣期間が5年を超えない場合は、原則として日本の法令が適用され、5年を超える場合は、原則として相手国の法令が適用されます。ただし、例外規定も存在するため、詳細は各協定の内容をご確認ください。
〚保険期間の通算〛
両国間の年金制度への加入期間を通算して、年金を受給するために最低必要とされる期間以上であれば、それぞれの国の制度への加入期間に応じた年金がそれぞれの国の制度から受けられるようにします。
1)「二重加入」: 相手国に派遣され就労している人については、派遣中でも自国の年金制度に継続して加入している場合が多く、自国の公的年金制度と相手国の公的年金制度に対して二重に保険料を支払うことを余儀なくされていることをいいます。
2)「年金受給資格(期間)」:日本の公的年金制度に限らず、外国の公的年金制度についても老齢年金の受給資格のひとつとして一定期間の制度への加入を要求している場合がありますが、相手国に短期間派遣され、その期間だけ相手国の公的年金制度に加入したとしても老齢年金の受給資格要件としての一定の加入年数を満たすことができず、年金受給資格を確保できない場合があります。
【参考Webサイト】
「社会保障協定」(厚生労働省)
「社会保障協定」(日本年金機構)
「社会保障協定」【国別年金・医療適用状況一覧】(日本私立学校振興・共済事業団)
「海外在住者と日本の医療保険、年金」(厚生労働省)
「協定を結んでいる国との協定発効時期および対象となる社会保障制度」(厚生労働省)
「非居住者となった場合の社会保険の加入義務について」(あすか税理士法人)
「海外赴任者の社会保険」(多田国際社会保険労務士法人)
「海外在住の日本人または外国人を雇用するときの社会保険」(栗城社会保険労務士事務所)
【主なフィリピンとの社会保障協定内容】
1.一時派遣期間の延長(派遣先の年金制度の免除)
予見できない事情により5年を超えて派遣期間が延長される場合は、申請に基づき、両国で個別に判断の上合意すれば3年までは派遣先の年金制度が引き続き免除されます。
その後も派遣期間が8年を超える場合、申請に基づき、両国で個別に判断の上合意すれば、日本の年金制度に継続して加入できます。
2.フィリピンの労災制度
フィリピンの労働災害に起因する給付(労災保険制度)は、フィリピンの法令に基づき年金制度と一体的に運用されています。そのため、日本からフィリピンに一時派遣され、日本の制度のみが適用される場合は、日本及びフィリピンのいずれの国においても強制的な労災保険が適用されない状態になります。
日本国内の使用者に雇用されている海外派遣者は、日本の労災保険制度の「特別加入制度」や労働災害を補償対象とする民間保険への加入により備えることができます。
3.「フィリピンの年金(SSS)」1)の加入期間要件への日本の期間の通算
フィリピンの年金保険期間だけで給付要件を満たさない場合、重複しない範囲で日本の年金保険期間を通算できます。通算により年金の受給資格要件を満たせば、フィリピンの年金保険期間に応じた年金が支給されます。
ただし、フィリピンの保険期間が1年未満の場合、この取り扱いは行われません。
フィリピンの老齢年金については、年金保険期間が10年以上ある場合、65歳(退職していれば60歳)から給付を受け取れます。
1)「SSS」:フィリピンの民間企業等に勤務する者を対象とした年金制度で正式名称は「社会保障機構(Social Security System)」
4.日本の年金加入期間要件へのフィリピンの年金(SSS)加入期間の通算
日本の年金保険期間だけで受給資格要件を満たさない場合、重複しない範囲でフィリピンの年金保険期間を日本の年金保険期間に通算できます。
通算により年金の受給資格要件を満たせば、日本の年金保険期間に応じた年金が支給されます。
5.フィリピンの年金(SSS)の日本国内での受領
フィリピンの年金については、フィリピン国内の金融機関で口座開設などの手続きを行うことで、日本国内で受け取れます。
6.フィリピン在住者の日本の年金に対する所得税はフィリピンで課税対象
フィリピンに居住している人が日本の年金を受給する場合、年金に対する所得税はフィリピンで課税対象となり、日本では課税されません。
この取り扱いを受けるためには、「租税条約に関する届出書」を提出する必要があります。
【参考Webサイト】
「協定相手国別の情報(フィリピン)」(日本年金機構)
「協定相手国別の注意事項(フィリピン)」(日本年金機構)
「日・フィリピン社会保障協定説明会(2018年7月10日(火)・11日(水))」(厚生労働省年金局国際年金課日本年金機構事業企画部国際事業グループ)
障害年金
障害年金とは
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事が制限されるようになった場合に、現役世代(原則として20歳から65歳未満)の人も含めて受給できる年金です。
障害年金には、国民年金に加入していた人が受給する「障害基礎年金」と、厚生年金に加入していた人が受給する「障害厚生年金」の2種類があります。
なお、障害年金を受け取るには、年金の納付状況や障害認定基準などの条件が設けられています。
【参考Webサイト】
「障害年金」(日本年金機構)
「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」(日本年金機構)
「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」(日本年金機構)
ポイント
- 障害基礎年金の支給要件と国民年金の任意加入
- 障害年金受給者の海外旅行及び海外移住
- 20歳前に傷病を負った人の障害基礎年金受給者の海外居住と「支給制限」
1.障害基礎年金の支給要件と国民年金の任意加入
過去に年金に加入していた期間があったとしても、海外移住などで年金に加入していない期間に障害を負った場合は、障害年金の支給対象にはなりません。
海外在住時に「任意加入」したうえで保険料を納めれば、他の支給要件を満たした場合、死亡したときや病気やけがで障害が残ったときに障害基礎年金が支給されます。
【参考Webサイト】
「海外在住者と日本の医療保険、年金」(厚生労働省)
「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」(日本年金機構)
2.障害年金受給者の海外旅行及び海外移住
障害年金受給者であっても海外旅行や海外移住は可能ですが、更新手続きに注意が必要です。
「海外在住で障害年金を受給可能?ワーホリや海外移住での受け取り」(障害者グループホームラボ)
【参考webサイト】
「障害状態確認届(診断書)が届いたとき」(日本年金機構)
「障害年金の更新を知っていますか?」(名古屋障害年金サポートセンター)
3.20歳前に傷病を負った人の障害基礎年金受給者の海外居住と「支給制限」
20歳前に傷病を負った人の「障害基礎年金」は、年金の加入期間に関わらず支給される場合がありますが、海外居住や刑務所への入所など、一定の条件下では支給が停止されることがあります。
【参考Webサイト】
「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」(日本年金機構)
遺族年金・遺族厚生年金
遺族年金とは
「遺族基礎年金」及び「遺族厚生年金」は、「国民年金」及び「厚生年金制度」の一部で、受給要件を満たした場合に受給できます。
なお、「遺族厚生年金」については、現役世代で子どもがいない配偶者(妻)が受け取れる期間を現行の無制限から5年に制限するなど、大幅な法改正が検討されています(トピック参照)。
【参考Webサイト】
「遺族年金」(日本年金機構)
「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」(厚生労働省)
「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(厚生労働省)
ポイント
- 【遺族基礎年金】国外転出しても国民年金に任意加入していれば対象
- 【遺族厚生年金】海外在住であっても受給資格を満たしていれば申請可能
- 海外からの申請(配偶者が外国人の場合等で代理人の請求など)
1.【遺族基礎年金】国外転出しても国民年金に任意加入していれば対象
「遺族基礎年金」は、国民年金加入中の被保険者が死亡した場合、その方によって生計維持されていた「18歳到達年度の末日までにある子(障害の状態にある場合は20歳未満)のいる配偶者」または「子」が受けることができます。
海外在住であっても、国民年金に「任意加入」し、受給要件を満たせば対象となります。
【参考Webサイト】
「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」(日本年金機構)
「遺族基礎年金を受けられるとき」(日本年金機構)
「国民年金の任意加入の手続き(日本の年金制度への継続加入)」(日本年金機構)
2.【遺族厚生年金】海外在住であっても受給資格を満たしていれば申請可能
老齢厚生年金を受給できる方(または受給資格があった方)が死亡し、厚生年金の保険料納付期間が25年以上あり、他の支給要件を満たした場合、その配偶者は「遺族厚生年金」を受給できます。
その納付期間に婚姻している必要はなく、例えば、退職後に結婚して、死亡時に婚姻関係にある場合でも受給要件を満たしていれば対象となります。
また、死亡時に、本人や遺族が海外在住で日本に住所がなくても対象となります。
【参考Webサイト】
「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」(日本年金機構)
3.海外からの申請(配偶者が外国人の場合等で代理人の請求など)
海外在住の人が遺族年金を請求する際には、日本国内の書類に代えて、居住国の公的機関の発行する証明書が必要になることがあります。
また、故人が死亡した時の居住国の医療機関・医師などによる「死亡診断書」の添付が必要です。なお、日本語以外の証明書には、「日本語の翻訳文」を添付する必要があります。
「遺族年金を受け取るには」(行政書士・社会保険労務士 永井弘行事務所)
代理人に申請を代行してもらう場合
配偶者が外国人で、日本語による申請書の作成が難しい場合は、代理人に依頼することが多いでしょう。
国民年金(老齢厚生年金)の「海外からの年金請求」の項目でも説明しましたが、社会保険労務士や弁護士など、法律により業務を行える者以外が有償で申請業務を行う場合、違法となる可能性があるため注意が必要です。
【参考Webサイト】
「海外にお住まいの方の年金の請求」(日本年金機構)
「来訪せずに年金請求書のみ郵送してもよいですか。その際の郵送先を教えてください。」(日本年金機構)
「海外でも受け取ることができる遺族年金」(行政書士・社会保険労務士 永井弘行事務所)
「海外の遺族年金」(高輪経営労務事務所)
「家族にかかわる年金(遺族年金、加給年金)」(ライフメイツ)
「日本の遺族年金~将来の請求手続きのために準備しておくこと〜」(U.S. FrontLine)
「国際結婚、海外在住の年金について | 遺族年金編①」(タイ北部チェンマイ情報ステーション)
「遺族年金の請求手続き、お手伝いします!」(望月総合事務所)
トピック
「遺族厚生年金」の法改正が行われる可能性が高い
現行の「遺族厚生年金」は、18歳以下の子どもがいない場合、女性は夫が亡くなった時点で30歳未満なら5年間、30歳以上なら生涯受給できますが、男性は妻が亡くなった時点で55歳未満の場合は受給できないなど、60歳未満で受け取る際の要件に男女差があります。
厚生労働省は、共働き世帯が主流となっている現状にそぐわないとして、配偶者が亡くなった時に60歳未満で子どもがいない場合、受給期間を男女ともに5年間とする案を「審議会」に提示しました。
ただし、妻の受給期間の5年間への短縮は、20年以上かけて段階的に実施するとしており、現在受給中の人や40代以上の女性には影響がないとしています。
その他の改正点として、「夫が亡くなった時点で40歳以上だった妻の遺族年金に64歳まで加算される『中高齢寡婦加算』の段階的廃止」、「5年間の遺族厚生年金の受給額増加措置」、「年収850万円未満の人が対象となる収入要件の廃止」などがあります。
なお、子どもがいる世帯については、制度改正が行われても、子どもが18歳になる年度末までは給付額に変更はありません。また、配偶者が亡くなった時に60歳以上の人の給付(本人が死亡するまで)は、現行どおりです。
スケジュールとしては、来年(2025年)の通常国会に法案の提出を目指す方針ですが、厚生年金受給者によっては、遺族の生活設計に大きな影響がでる改正となりそうです。
【参考Webサイト】
「遺族年金制度等の見直しについて」(厚生労働省)
「遺族年金制度等の見直しについて(第17回社会保障審議会年金部会 2024年7月30日)」(厚生労働省)
「[年金制度の仕組みと考え方]第13 遺族年金」(厚生労働省)
「遺族年金制度の仕組みと論点」(社会保険研究所)
「遺族厚生年金、男女差是正へ 子なし現役世代は5年給付―厚労省」(時事ドットコム 2024/07/31
「遺族厚生年金 見直し内容は?子どもいない現役世代は5年間の案」(NHK 2024/07/30)
国民年金基金
国民年金基金とは
国民年金に上乗せされる厚生年金に加入している会社員と比べ、自営業者などの「国民年金第1号被保険者」は、受け取る年金額に差が生じることがあります。
「国民年金基金」は、この差を解消するために、国民年金に上乗せして、老後の所得保障の役割を担うため、「国民年金法」に基づいて設立された公的な年金制度です。
掛金の上限は月額6万8,000円で、その範囲内で給付の種類や口数を選択できます。ただし、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」1)にも加入している場合は、両者の合計額が上限となります。
掛け金に応じた年金額は国民年金基金のホームページでシミュレーションできます。2)
税制上の優遇などのメリットがありますが、任意で自由に脱退できないので注意が必要です。
1)「iDeCo」は自営業者などの「国民年金第1号被保険者」の場合、「国民年金基金」と上限が合算される制度ですが、資産形成において「NISA」と比較されることが多いため、「NISA」と同じ「その他」の項目で説明しています。そちらもご覧ください。
2)「掛け金について」(国民年金基金連合会)
【参考Webサイト】
「国民年金基金制度とは?」(国民年金基金連合会)
「給付の種類」(国民年金基金連合会)
「掛金・年金額を調べる」(国民年金基金連合会)
「国民年金基金のメリット・デメリットは?」(ほけんの窓口)
ポイント
- 国外転出しても国民年金に任意加入している場合は加入可
- 掛金の納付はクレジットカード不可
- 掛金の所得控除と非居住者
1.国外転出しても国民年金に任意加入している場合は加入可
国民年金基金は、一定の条件下では、60歳以上65歳未満の方や、海外在住で「国民年金」に「任意加入」している方も加入できる場合があります。
【参考Webサイト】
「国民年金基金に加入できる方」(国民年金基金)
2.掛金の納付はクレジットカード不可
掛金の納付は、金融機関からの口座振替によって行われます。クレジットカードは利用できません。
【参考Webサイト】
「掛け金について」(国民年金基金連合会)
「FAQ Q2-1」(国民年金基金連合会)
3.掛金の所得控除と非居住者
掛金は全額、所得税の「社会保険料控除」の対象となります。ただし、海外に居住している人は原則として「社会保険料控除」の対象となりません。
【参考Webサイト】
「よくあるご質問」(国民年金基金連合会)
付加年金
付加年金とは
「付加年金」とは、自営業者などの「国民年金第1号被保険者」や「任意加入被保険者」が、定額保険料に月額400円の「付加保険料」を追加して納付することで、「老齢基礎年金」に加算される制度です。
「付加年金」は終身年金ですが、定額で「物価スライド(増減)」はありません。
例えば、40年間付加保険料を納付した場合、受給額は、200円 × 12ヵ月 × 40年 = 96,000円(年額)となります。一方、支払った額は、400円 × 12ヵ月 × 40年 = 192,000円なので、支払った付加保険料は、受給開始から約2年間で元を取れる計算になります。
ただし、受給条件や個々の状況によって、実際に受け取れる年金額は異なる場合があります。
「国民年金基金」に加入している場合は「付加年金相当」が含まれているため、「付加保険料」を納めることはできません。
「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「付加年金」は同時に加入できますが、「iDeCo」には拠出限度額があるため、ご注意ください。1)
国外転出しても国民年金に任意加入していれば付加年金に加入可能で、掛金の納付は国民年金と同じく口座振替が可能です。
1)「国民年金の付加保険料を納付している場合、iDeCoの掛金額の限度はどうなりますか?」(関西みらい銀行)
【参考Webサイト】
「付加年金」(日本年金機構)
「毎月400円払うだけ!将来の年金が増える「付加年金」って何?」(オリックス銀行)
「よくある質問(基金に加入しても国民年金の付加保険料(月400円)を納めることはできますか?)」(国民年金基金)
「付加保険料の納付」(日本年金機構)
「国民年金付加年金制度のお知らせ」(日本年金機構)
雇用保険
失業手当とは
失業した場合、離職日以前の2年間に12カ月以上(特定の条件に該当する場合は1年間に6カ月以上)「雇用保険」に加入していれば、「基本手当(いわゆる失業手当)」が受給できます。
「自己都合退職」や、身体や精神上の理由で「特定理由離職者」に該当する場合、「有期契約満了」などの場合、「雇用保険加入期間」やその他の条件によって「受給期間」は異なります。
【参考Webサイト】
「雇用保険制度」(厚生労働省)
「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和5年(2023年)8月1日から~」(厚生労働省)
「基本手当について」(ハローワークインターネットサービス)
「雇用保険とは?加入条件や給付金額の計算方法、手続きのしかたや受給期間を徹底解説」(三井住友カード)
ポイント
- 失業手当の申請には個人番号(マイナンバー)の確認が必要
- 非居住者と雇用保険の被保険者
- 海外転出して就職活動を行わない場合の「失業認定」
- 失業手当を受け取る前に海外留学を行う例
1.失業手当の申請には個人番号(マイナンバー)の確認が必要
失業手当の申請手続きには、マイナンバーカード、通知カード、または個人番号が記載された住民票(住民票記載事項証明書)など、個人番号を確認できる書類が必要です。
「雇用保険の具体的な手続き」(ハローワークインターネットサービス)
2.非居住者と雇用保険の被保険者
海外出張や海外支店等への転勤、または海外の現地法人等への出向の場合、国内の出向元との雇用関係が継続している限り、被保険者となります。
ただし、海外で現地採用された場合は、被保険者とはなりません。
「雇用保険事務手続きの手引き」(厚生労働省)
3.海外転出して就職活動を行わない場合の「失業認定」
「失業手当」の受給要件の一つは、「就職しようとする積極的な意思があり、ハローワークに来所して求職の申込みを行い、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても職業に就くことができない『失業の状態』にあること」です。
そのため、原則として、日本国内で就職活動を行っていない場合は、「失業手当」は受給できません。また、4週間に1回、指定された日に管轄のハローワークに行き、失業認定(失業状態にあることの確認)を受ける必要があります。
【参考Webサイト】
「雇用保険の具体的な手続き」(ハローワーク インターネットサービス)
「基本手当について」(ハローワーク インターネットサービス)
「留学中は失業保険が受け取れない?」(UK 留学情報センター)
5.失業手当を受け取る前に海外留学を行う例
会社を辞めて、初めて長い自由な時間が持てたことを機に、語学留学をしたいと考えている方もいらっしゃるかもしれません。「失業手当」をもらう前に海外留学を行う方法がネットで紹介されています。
自己都合で退職した場合、受給手続き日から原則7日経過した日の翌日から2か月間は、基本手当が受給できない「給付制限期間(待機期間)」があります。
また、「失業手当」を受給できる期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間(受給期間)です。この期間内で、所定の給付日数を限度として基本手当が支給されます。
この「待機期間」に短期留学を行う方法や、退職直後ではなく、給付日数を勘案して1年以内に受給できるスケジュールで申請し、その受給前に海外留学を行うことが可能のようです。
【参考Webサイト】
「『給付制限期間』が2か月に短縮されます~ 令和2年10月1日から適用 ~」(厚生労働省)
「【退職留学part2】知らないと損!失業保険をもらいつつ留学に行く方法がある【新たなチャレンジをしたい方へ】」(グローバルダイブ)
「海外留学でも失業保険をもらう!」(株式会社ルーサースティックル)
労災保険
労災保険とは
「労災保険」とは、業務上の事由や通勤による労働者の負傷、疾病、障害、または死亡に対して、労働者やその遺族に対し保険給付を行う制度です。
「労災保険」は、原則として、一人でも「労働者」を雇用する事業には、業種や規模を問わず適用されます。「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業に使用され賃金が支払われる者を指します。アルバイトやパートタイマーなどの雇用形態も問いません。
「海外派遣」の場合は「特別加入」
「海外派遣」とは、現地法人など海外の事業場に所属し、現地の使用者の指揮命令に従って業務を行うことを指します。この場合、「特別加入」の手続きが必要となります。
一方、海外での業務が「海外出張」として扱われる場合、国内での災害と同様に「労災保険給付」を受けることができます。これらの判断基準は「海外勤務の長さ」ではなく、労働者の勤務実態に基づいて総合的に判断されます。
【参考Webサイト】
「労災保険とは」(厚生労働省東京労働局)
「労災補償」(厚生労働省)
「海外派遣と海外出張の区別について」(厚生労働省 神奈川労働局)
「海外出張先で事故に遭った場合、労災保険の適用はどうなるのでしょうか。」(厚生労働省)
消費税免税
非居住者に対する消費税免税制度とは
「輸出物品販売場(免税店)」の許可を受けた事業者が、外国人旅行者などの非居住者に対して、所定の方法で販売した場合に、消費税が免除される制度です。
【参考Webサイト】
「免税購入に関する情報はこちら(旅行者向け)」(国土交通省)
「免税制度の概要」(全国免税店教会)
「消費税免税制度が変わります〚日本国籍を有する方〛(2023年4月1日スタート)」(官公庁)
「消費税免税制度にかかるQ&A」(観光庁)
ポイント
- 日本人の消費税免税対象者の範囲が変更(2023年から)
- 在留証明の取得に必要な書類
1.日本人の消費税免税対象者の範囲が変更(2023年から)
2023年からの変更点として、非居住者として「国内以外の地域に引き続き2年以上住所または居所を有することが在留証明または戸籍の附票の写しにより確認された者」が対象となります。
なお、在留証明に「本籍の地番」を記載するためには、戸籍謄本(または戸籍抄本)など、現在の本籍地を確認できる公文書(写しでも可)が必要ですが、日本から取り寄せる必要があります。
【参考Webサイト】
「日本における消費税免税制度改正のお知らせ(2023年4月1日以降に日本に一時帰国中の日本国籍者が免税購入を行う場合)」(在ドイツ日本大使館)
「消費税免税制度変更のお知らせ」(在フィリピン日本大使館)
2.在留証明の取得に必要な書類
「在留証明」の取得に必要書類は「申請書」、「有効な日本国旅券」、「戸籍謄本(または戸籍抄本)(記載内容に変更がなければ古いものでも可、コピーも可)」、「現住所を立証する3ヶ月以内に発行された公文書」、「現住所を立証する2年以上前に発行された公文書」、「過去2年以内に転居した人は、そのすべての住所の居住期間(住み始めと住み終わり)を立証する公文書」です。空白の期間がないようご注意ください。
「免税購入のための在留証明」(在オークランド日本国領事館)
トピック
免税品の転売防止のため「消費税免税制度」の見直しが検討中
2022年度中に、「消費税免税制度」を利用して計1億円以上購入した訪日客57人を検査したところ、1人しか免税で購入した物品の国外への持ち出しが確認できず、55人は納税せずに出国していました。滞納額は約18.5億円に達しています。
訪日客が免税で購入した品物を国内で転売していると疑われるケースが相次いでおり、現在の「免税店で消費税が免除される」というシステムを見直し、「免税店で消費税を含めた金額を支払い、税関で購入品を提示して国外へ持ち出すことを確認後、クレジットカードや電子マネーで消費税相当額を返金する」方式への変更が検討されています。
政府・与党は「2025年度税制改正大綱」に具体的な制度設計を盛り込む方向です。
このため、海外在住者の「消費税免税」も、同様となると考えられます。
【参考Webサイト】
「訪日客免税、転売防止で対策 出国時に確認後返金へ―政府・与党」(時事ドットコム 2024/08/13)
「第213回国会 財務金融委員会 第17号(令和6年(2024年)4月12日(金曜日))」(衆議院)
「高島屋に5.7億円追徴 免税要件満たさず販売―大阪国税局」(時事ドットコム 2024/08/01)
「大黒屋に追徴課税 転売目的疑われる外国人客に免税価格で販売」(MHK 2024/04/30)
「免税品の転売防止 レジにアラート機能―ビックカメラ」(時事ドットコム 2024/05/01)
行政サービス・行政手続きなど
マイナンバー、マイナンバーカード
マイナンバーとマイナンバーカード
日本国内に住所を有する全員にマイナンバーが付与されています。
2015年10月5日時点で住民票に記載されていた住民に対し、マイナンバーの「通知カード」が市区町村から住民票の住所へ簡易書留で送付されました。
マイナンバーカードの発行は本人の申請に基づく任意ですが、各種証明書との一体化などにより、普及が推進されています。
マイナンバーカードの更新
マイナンバーカードの有効期間は、発行日から10回目の誕生日(未成年者は5回目)まで、「電子証明書」の有効期間は、年齢問わず発行日から5回目の誕生日までです。
なお、「電子証明書」の更新は市区町村または市区町村が指定する郵便局の窓口でもできます。
「更新可能期間」は、有効期間が満了する直前の誕生日の3ヶ月前からで、有効期限の2~3ヶ月前を目途に「有効期限通知書」が送付されます。
この通知書に「申請書ID」の記載のある場合は、「スマホ申請」が可能ですが、記載のない場合は、市区町村窓口での申請が必要になります。
「交付申請」を行うと、概ね1ヶ月(現在は1ヶ月から1ヶ月半と案内している市町村が多い)で、市区町村から交付場所と期限が記載された「交付通知書(はがき)」が自宅に届きます。
新しいカードを受け取る際には、更新前のカードを返納する必要があり、紛失した場合は、再交付手数料がかかります。
また、新しいカードを受け取る前に有効期限が過ぎると、「本人確認書類」や「電子証明書」としての利用ができなくなるため、余裕を持って申請する必要があります。
【参考webサイト】
「マイナンバーカード」(総務省)
「よくある質問:マイナンバー(個人番号)について」(デジタル庁)
「更新手続きについて」(地方公共団体情報システム機構)
「電子証明書の更新手続(パンフレット)」(地方公共団体情報システム機構)
「マイナンバーカードと電子証明書の有効期限及び更新手続きについて」(岡山県岡山市)
ポイント
- 国外転出時のカード返却が不要(継続して利用可能)
- 海外在住者で新規カード申請が可能な者(2015年10月5日以降の国外転出者)
- カードの作成ができない者(2015年10月5日時点で国外転出しており、以降、住民票が無い)
- 海外在住者のカード利用の今後
1.国外転出時のカード返却が不要(継続して利用可能)
以前は「国外転出届」を出した際に、マイナンバーカードを返納しなければなりませんでしたが、2023年5月27日から手続きを行うことにより、引き続き利用できるようになりました。
【参考Webサイト】
「マイナンバーカードを国外で利用する」(マイナンバーカード総合サイト)
「『マイナンバー法等の一部改正法』の一部が5月27日付で施行 海外での『マイナンバーカード』発行など、利用者の利便向上を狙う」(ITmedia 2024.05.27)
2.海外在住者で新規カード申請が可能な者(2015年10月5日以降の国外転出者)
令和6年5月27日より、現在マイナンバーカードを持っていない海外在住者(2015年10月5日以降に国外転出をしている人に限る)も新規のマイナンバーカードの申請ができるようになりました。
申請は、「本籍地市区町村に郵送または来庁」、「本籍地以外の市区町村(一時帰国の滞在先等)に郵送または来庁」、「居住国内の在外公館に郵送または来庁」のいずれかで行うことができます。
「海外在住者でも申請できますか?」(マイナンバーカード総合サイト)
3.カードの作成ができない者(2015年10月5日時点で国外転出しており、以降、住民票が無い)
2015年10月5日時点で国外に在住しており、一度も住民票を取得していない場合は、マイナンバー自体が付番されていないため、マイナンバーカードは発行できません。
「よくある質問:マイナンバー(個人番号)について」(デジタル庁)
4.海外在住者のカード利用の今後
デジタル庁は、「健康保険証」や「運転免許証」1)、「出生届の申請書」2)、「こども医療費などの受給者証や診察券」との一体化、「図書館カード」等としての利用拡大や、「救急業務における受診歴、薬剤、手術、診療、検診などの情報の活用」3)など、マイナンバーカードを活用したデジタル化の取組を進めています。
また、マイナンバーカードの保有者は、スマートフォン(現在はAndroidスマートフォンのみ対応)に「電子証明書」の搭載ができる「電子証明書搭載サービス」4)の利用が可能になっており、2025年1月から確定申告にも対応する予定です。5)なお、「iOS(iPhone)」は、2025年夏までに対応予定です。6)
海外在住者に対する行政手続きについても、「従来のマイナンバー利用事務からの拡大を図り、利用者のアクセシビリティを確保しつつ、デジタル完結を図る。」と検討が進められています。7)
将来的には、海外でも選挙の電子投票や、運転免許証更新手続きが講習も含めオンラインで完結できたり、ペーパーレス化が進み、役所や在外公館に足を運ぶ必要がなくなるかもしれません。8)
マイナンバーカードについては課題も多くありますが、将来的には利用範囲が拡大されていくこと思われます。
一方、現在の「法律」9)では、国外転出者のマイナンバーカードの住所欄には、「国外転出者である旨及びその国外転出届に記載された転出の予定年月日」のみが記載されており、住所の証明書としては機能しません。10)
また、海外での住所をマイナンバーカードに組み込む場合、現状では、海外転出後の個人情報の管理主体が明確に定められておらず、「在外公館」や「最終所在地又は本籍地の市町村」、あるいは、これらの機関が連携する案などが法改正時の国の研究会で出されていますが、具体的な制度設計はまだ進んでいません。11)
1)「運転免許証との一体化」(令和6年度(2024年度)末までに実現)
1)「【マイナ免許証】来年3月24日開始へ マイナカードと運転免許証一体化 現行免許証の選択・併用も可能だが手数料はマイナ免許証より割高に?」←リンク切れ(FNNプライムオンライン)
1)「マイナンバーカード 来年3月から運転免許証一体化へ 内容は?」(NHK 2024/09/12)
2)「出生届の申請書と一体化」(令和6年(2024年)12月までに実現)
3)「救急業務における活用」(2024年度末までを目途に全国展開を目指す)
1)~3)「マイナンバーの利活⽤拡⼤に向けたロードマップ(フォローアップ 2023 年度版)」(デジタル庁)
4)なお、スマートフォンでマイナンバーカードを読み取る(マイナポータルアプリに対応)には「NFC(Near Field Communication:近距離無線通信)」機能が必要ですが、「電子証明書に対応(搭載できる)機種は、それとは異なりますのでご注意ください。
4)「スマホ用電子証明書搭載サービス」(デジタル庁)
4)「マイナポータルアプリに対応しているスマートフォン等を教えてください。」
4)「スマホ用電子証明書に対応しているスマートフォンを教えてください。」(マイナポータル)
5)「確定申告、スマホ電子証明書対応 25年は“スマホだけ”申告も」(Impress Watch 2024/09/05)
6)「iPhoneにマイナンバー搭載 身分証明機能、25年夏までに」(日本経済新聞 2024/05/30)
7)「利用者目線の行政サービス実現に向けたトータルデザインとマイナンバー法の検討」(マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ(第5回)令和4年8月25日)
8)「電子証明書の海外利用等について」(総務省)
9)「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(e-GOV法令検索)
10)「11_国外転出者向けマイナンバーカードについて」(品川区)
11)「海外に在留する者への行政サービスの提供のあり方」(平成26(2014)年12月26日 総務省「個人番号を活用した今後の行政サービスのあり方に関する研究会(第5回)」)
【参考Webサイト】
「マイナンバーカードの普及・利用について2024年6月6日 デジタル行財政改革会議」(内閣官房)
「マイナンバー法改正案、今国会成立へ 全機能をスマホに」(日本経済新聞 2024/05/29)
「運転免許も母子手帳も…マイナカードと一体化、範囲は広がる?」(東京新聞 2023/08/04)
トピック
※紛らわしいですが、マイナンバーと預金口座に関する以下の「公金受取口座登録制度」と「預貯金口座付番制度」は、異なる制度です。
【公金受取口座登録制度】「年金受給者」に対する公金受取口座の登録のひも付け
「公金受取口座登録制度」は、預貯金口座について、給付金等の「公金受取口座」として、国(デジタル庁)に任意で登録する制度です(本人名義の預貯金口座(1人1口座)で、子どもも本人口座であることが必要)。
「行政機関等経由登録の特例制度」とは、「年金受取口座」を対象に、日本年金機構からの通知に対し、「受取口座の登録に同意しない」旨の回答をしない限り、特段の手続きなく「口座登録」が行われるというものです。実施時期は未定です。
【参考Webサイト】
「公金受取口座登録制度」(デジタル庁)
「公金受取口座を利用して受け取ることができる給付金等」(デジタル庁)
「公金受取口座登録制度の概要」(内閣府)
「マイナンバーと口座情報の自動ひもづけ まずは年金受給者から」(朝日DIGITAL 2023/02/10)
「“マイナンバーが口座に強制ひも付け?” 不正確な情報が拡散」(NHK 2024/04/16)
「よくある質問:公金受取口座登録の「特例制度」について(対象:年金受取口座)」(デジタル庁)
「公金受取口座の登録における「行政機関等経由登録の特例制度」の創設 改正概要」(厚生労働省)
【預貯金口座付番制度】預金口座とマイナンバーの付番(ひも付け)
「預貯金口座へのマイナンバーの付番制度(預貯金口座付番制度)」は、金融機関へマイナンバーを届け出する制度です。
預貯金口座にマイナンバーを付番することで、2024年度末頃(予定)から、相続時や災害時に一つの金融機関の窓口でマイナンバーが付番された預貯金口座の所在を確認できるようになります。
預貯金口座の開設時には、金融機関からマイナンバーの届出の意向を確認されますが、本人の届出なく預貯金口座にマイナンバーが付番されることはありません。また、金融機関等から郵送通知が行われ、その通知に回答しないと勝手に預貯金口座にマイナンバーが付番されることもありません。
【参考Webサイト】
「マイナンバー制度とは」(デジタル庁)
「よくある質問:預貯金口座付番制度について」(デジタル庁)
「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要」(デジタル庁)
住民対象の給付等
「住民票がある者」を対象とした給付金等
2020年の「10万円のコロナ給付金」1)や、その後の「物価高騰を受けた非課税世帯等への支援」2)などの支援は、国内に住民登録がある者に限られていました。
また、1999年及び2009年の地域振興を目的とした「地域振興券」3)や、消費税率10%への引き上げに伴い低所得者向けに実施された「プレミアム付商品券」4)、コロナの時期に行われた「全国旅行支援」5)なども同様で、住民を対象としたものでした。
1)「現金10万円一律給付 対象や手続きは」(NHK 2020/05/18更新 (2020/06/12・07/27追記))
1)「給付対象者について」(総務省)
2)「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金(5万円/1世帯)のご案内」(内閣府)
2)「令和5年度住民税非課税世帯に対する物価高騰対策支援給付金 (7万円)の支給」(東京都杉並区)
2)「令和6年度新たな住民税非課税世帯等に対する物価高騰対策支援給付金(10万円)の支給」(東京都杉並区)
3)「地域振興券」(JTB総合研究所)
4)「プレミアム付商品券」(内閣府)
5)「全国旅行支援 よくある質問」(日本旅行)
児童手当ほか子育て支援
少子高齢化・人口減少社会
日本の「公的年金」は、現役世代が納めた保険料を、その時の年金受給者に支払う「賦課方式」1)で運営されています。
この方式では、少子高齢化が進むと、現役世代が減り、年金受給者が増えるため、年金財政が逼迫し、年金水準の低下や年金支給開始年齢の遅延につながる可能性があります。
また、人口減少が進めばインフラの維持費など国民一人当たりの税負担の増加や、医療や福祉水準の低下をもたらし、社会保障制度全体の抜本的見直しが必要となる可能性があります。
海外在住の日本人にとっても「日本の少子化」は影響を受ける可能性が高い問題です。2)
こども未来戦略
2022年の出生数は約77万人で、統計を開始した1899年以来、最少の数字となりました。
第1次ベビーブーム期(1947〜1949年)は約270万人、第2次ベビーブーム期(1971〜1974年)は約210万人で、今後も減少が見込まれます。
このような状況から、新規財源で3兆円規模となる「こども未来戦略」及び「加速化プラン」が策定され、「児童手当の拡充」なども盛り込まれました。
児童手当とは
児童手当は、児童を養育している者に支給されるもので、対象となる児童は「日本国内に住民登録がある中学校修了までの児童」で、養育者に支給されます。
2024年10月からの「児童手当法改正(拡充)」により、所得制限が撤廃され、支給対象児童の年齢が中学生から高校生に拡大されます。また、第3子以降の支給額が増額され、カウント方法も変更されます。3)
児童が国外転出した場合は原則として「児童手当」の対象外
児童手当は、日本国内に居住していないと受給できません。このため、「家族全員が国外へ転出する場合」は支給されません。また、「児童のみ国外へ転出し、海外に居住している場合」は「留学等の事情がある場合」4)を除き対象とはなりません。
1)「賦課方式と積立方式」(厚生労働省)
2)「人口減少は国力の衰退(上)」(公益財団法人資本市場研究会)
2)「人口減少は国力の衰退(下)」(公益財団法人資本市場研究会)
3)「2024年10月より児童手当最大3万円へ拡充!所得制限なしへ支給時期は12月から」(寺田税理士・社会保険労務士事務所)
3)「令和6年10月から児童手当制度が変わります」(岩手県一戸町)
4)「【引越等】日本国外へ転出した場合、児童手当はどうなるのでしょう」(岡山県岡山市)
1)「Q10.こどもが海外に住んでいる場合は、そのこどもの分の児童手当は受け取れないのですか?」(こども家庭庁)
【参考Webサイト】
《日本の人口》
「2023年の日本の総人口 前年より60万人近く減少と推計 総務省」(NHK 2024/04/12)
「日本の人口ランキング都道府県別・市区町村別まとめ!人口密度や世界ランキングも調査しました」(ニフティ不動産 2024/02/28)
《少子化対策》
「こども・子育て政策の目指す社会像と基本理念とは~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」(内閣官房内閣広報室 2023/04/11)
「令和2年度少子化の状況及び少子化への対処施策の概況(令和3年版少子化社会対策白書)」(内閣府)
「こども基本法(令和4年法律第77号)第8条第1項に基づく年次報告(「こども白書」)」(こども家庭庁)
「少子化対策の諸財源」(国立国会図書館)
《こども未来戦略》
「こども未来戦略 『加速化プラン3.6兆円』の施策詳細」(総務省)
「『こども未来戦略』きょう決定 児童手当の拡充など盛り込む」(NHK 2023/12/22)
「『こども未来戦略』~ 次元の異なる少子化対策の実現に向けて ~」(厚生労働省 第32回社会保障審議会 参考資料2令和6年1月26日)
「『支援金制度』」創設 子育て支援法改正案成立 少子化対策の強化目指す」(福祉新聞 2024/06/17)
《児童手当》
「児童手当-概要」(神奈川県 横浜市)
「児童手当とは、どういう制度ですか」(参考)ちば健康福祉ブック「児童手当」(千葉県)
「児童手当制度のご案内」(こども家庭庁)
自治体運営の施設やその他サービスの利用
住民対象のサービスや施設
住民であれば、住民のみが対象のサービスや施設を、無料や安い料金で利用できるなどのメリットがあります。
- 公立図書館の貸出し
- スポーツセンター(体育館)、公民館・生涯学習センター、文化センターなどの利用・割引
- 公営斎場の利用・割引
- 住民対象(限定)の講座・教室・セミナーの受講
- シルバーパス(高齢者向け公共交通機関の補助)
- 公営住宅への入居
- 粗大ごみなどの処分
- 保健事業1)
1)各自治体では国保の被保険者を対象として「保健事業」を行っており、健康診断を無料で受診できたり、オプションでがん検診や人間ドックなどの補助を受けることができます(内容は各市町村によって異なります)。
なお、被用者保険の加入者に対しては、被用者保険の「保険者」が実施しています。
「国民健康保険制度の保健事業について」(厚生労働省)
電子図書館
電子図書館とは、実際に総合図書館や各分館に行かなくても、インターネットを通じてパソコンやタブレット、スマートフォンなどから電子書籍を無料で借りて読むことができるサービスです。
公立図書館の「電子図書館」は今後増える見込みで、海外でも利用可能と思われますが、一般的に利用できる対象者は、その自治体に在住、在勤、在学している人です。
「国立国会図書館」も利用にあたって18歳以上であれば本登録ができますが、本人確認として住所の記載のある証明書(運転免許証、健康保険証、学生証、またはマイナンバーカード、住民票など)が必要で、勤務先や学校等の所在地を現住所として登録することはできません。
【参考Webサイト】
「電子図書館とは何ですか?」(福岡市総合図書館)
「国立国会図書館デジタルコレクションについて」(国立国会図書館)
「Webサービス一覧」(国立国会図書館)
「国立国会図書館の利用者登録(個人)について:本登録」(国立国会図書館)
義務教育
「義務教育」と「海外留学」
学習指導要領が見直され、2020年度から英語教育が大きく変わり、小学校3年生からスタートする一方、中学校では英検準2級、高校では英検2級以上を目指した授業が展開されています。1)
2023年度「英語教育実施状況調査」の結果によれば、英検3級相当以上の英語力がある中学3年生の割合は50.0%、英検準2級相当以上の高校3年生は50.6%で、いずれも初めて5割に達しました。2)
それに先駆け、2016年から小学1年生からの9年間、一貫して英語を学ぶ「グローバル・スタディ」を導入した埼玉県さいたま市は、英検3級相当の英語力を持つ中学3年生の割合が、全国平均の49.2%を約40ポイントも上回る86.6%と成果を見せています。3)
こういった状況も背景にあり、義務教育の段階から、夏休みや冬休み、春休みなどを利用した短期留学だけでなく、1学期から1年以上に及ぶ長期留学や海外の学校への進学を選択するケースも増えてきているようです。4)
1)「英語教育改革が2020年度からスタート、小中高校で英語の授業はどう変わる?」(日本教育新聞 2019/06/26)
1)「2020年度、子供の学びが進化します!新しい学習指導要領、スタート!」(政府広報オンライン)
2)「中高英語力、向上続く 初の『5割』達成―文科省調査」(時事ドットコム 2024/05/09)
2)「令和5年度『英語教育実施状況調査』の結果について」(文部科学省)
3)「さいたま市の英語教育“グローバル・スタディ”」(さいたま市)
3)「中学3年生の86.6%が「英検3級」相当…さいたま市の子どもはなぜ「全国トップレベルの英語力」を有するのか?」(現代ビジネス 2023/11/06)
4)「日本人小中学生の『海外留学』最新事情…マレーシアのインターナショナルスクールに増えている『母子留学』とは?」(THE GOLD ONLINE 2024/05/16)
4)「学費は年700万円超!それでもイギリス全寮制学校に『留学させたい』日本人親子が増えている理由」(AERAKids PLUS 2023/11/29)
ポイント
- 「教育の機会均等」「義務教育無償」を定める憲法第26条と海外在住者
- 海外における教育支援
- 「一時帰国など国内で住民票がない場合の就学」についての相談先
1.「教育の機会均等」「義務教育無償」を定める憲法第26条と海外在住者
「憲法第26条第2項」1)などにより、誰でも無償(授業料免除)で国公立学校で義務教育を受けることができます。2)しかし、これらは原則として日本国内に適用されるため、直接的には海外在住の子どもには適用されません。3)
また、学校教育法第17条で規定された就学義務も国内居住の日本国民に課され、外国に居住する日本国民には適用されません。
1)「憲法第26条」「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。②すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。」
2)「家庭の教育費負担や公財政による教育分野への支出等 小学校・中学校 義務教育の無償」(文部科学省)
3)「国際教育Q&A:「教育の機会均等」「義務教育無償」を定める憲法第26条は在外邦人に適用されますか。」(文部科学省)
【参考Webサイト】
「外国から帰国した学齢児童生徒の就学手続について」(文部科学省)
2.海外における教育支援
一部地域には日本人学校や補習授業校、私立在外教育施設などの「在外教育施設」が、主に現地の日本人会などによって設置・運営されています。
外務省は文部科学省など関係機関と協力し、「校舎借料支援」、「現地採用教師・講師給与支援」、「安全対策支援」を柱に支援を行っています。1)
文部科学省では、義務教育教科書を無償配布2)しており、また、「海外子女教育振興財団」が国の補助金を受け、配布された教科書を踏まえた内容の通信教育3)を行っています。
さらに、タブレットなどを利用した「民間の通信教育」4)も、海外で受講できるものがあります。
一方、「義務教育でない幼稚園や高等学校段階への政府支援は現状では難しい」5)としています。
1)「海外教育」(外務省)
1)「在外教育情報」(文部科学省)
2)「日本の教科書(無償配付)」(海外子女教育振興財団)
3)「海外子女のための通信教育」(海外子女教育振興財団)
4)「【2024年最新】海外受講OKの小学生向け通信教育・タブレット学習は?おすすめ7選を比較」(ホムスタ)
3)「海外で受講できるタブレット学習は?教材の選び方とおすすめの通信教育5選」(プラス二)
5)「国際教育Q&A」(文部科学省)
3.「一時帰国など国内で住民票がない場合の就学」についての相談先
住民票がない場合でも「居住の実態」があれば、市区町村教育委員会に入学を希望し、入学の許可を得ることで、当該市区町村の公立学校(小・中学校)に入学できます。
住民登録を行わない場合の「居住の実態の確認方法」については、当該市区町村にお尋ねください。
【参考Webサイト】
「国際教育Q&A」(文部科学省)
「海外から一時帰国中又は一時帰国を予定しているお子様の保護者向けお問合せに寄せられたFAQ」(文部科学省)
「一時帰国中の区立小中学校への就学について」(東京都世田谷区)
「海外からの帰国、または一時帰国中の区立小中学校への就学について」(東京都台東区)
「【一時帰国】小学校へ体験入学!成功のカギは準備にあった!」(アンジーのバイリンガル子育て奮闘記)
「一時帰国時の体験入学についてのアンケート報告」(ニューヨーク育英学園)
4.「期間が未確定」など、国外転出届を出さずに海外で暮らす場合の「学齢簿」の取扱い
学齢児童生徒が「国外転出届」を出さずに海外転出した場合、住民票が残り、それに伴い「学齢簿」も残ることになります。
「国外転出届」が提出されると住民登録は消除され、それに伴い「学齢簿」も消除(学校からは除籍)されます。
海外の滞在期間が1年未満(未定を含む)で、海外への国外転出届の手続きをしない場合は、出国前に手続きを行うことで「休学・欠席」の扱いとなります。
国外転出の期間について確認ができない場合、転出してから1年までは欠席として扱い、1年を超えた場合には、「学齢簿」には居所不明である旨を「異動事項欄」に記入し、「就学義務の猶予または免除のあった者」と同様に別に簿冊を編製し、「指導要録」は別に整理して保存することになります。
また、国外への転出期間と国内における中学校の卒業時期が重なったり、日本の高等学校に進学するために海外から帰国したりする場合は、保護者や受験生は、どの資格をもとに受験・進学するか検討しておくことが望まれます。
なお、実際の運用については状況に応じてケースバイケースでの対応となるため、個別に関係機関にご相談ください。
【参考Webサイト】
「学齢児童生徒が国外に転出した場合における学齢簿や学籍の取扱いについて」(文部科学省)
「海外からの転入・海外への転出」(神奈川県 藤沢市)
「日本に住所をおいたまま海外の小学校に通える手続き」(韓国で就職、子育て、旅育からの、親子留学?)
印鑑証明(実印)
印鑑登録証明書とは
「印鑑登録証明書」とは、自分が普段使っている印鑑(実印)を、住所地の市区町村役場に登録したことを証明する書類です。「登録した印影」「住所」「氏名(通称・旧氏)」「生年月日」が記載されており、主に「不動産の登記」「自動車の登録」「公正証書の作成」など、法令に基づいて提出が義務付けられる場合や「消費者金融の契約」「保証人になる場合」「住宅ローンを組む場合」など、広く利用されています。
外国に居住しているため、「印鑑証明書」を取得できない場合
不動産登記手続きにおいては、本人が外国に居住している場合には、「印鑑証明書」を取得できないため、代わりに日本の領事が発行した「署名証明書」を添付することが認められています。
このほか、居住地が日本の在外公館の所在地と離れている場合など、領事が発行した「署名証明書」を取得することが困難な場合には、外国の公証人が作成した「署名証明書」を添付して登記申請をすることも認められています。1)
「署名証明」は、本人が直接領事館に出向き、担当官の目の前で署名と拇印を押す必要があります。事前に署名済みの書類は、証明の対象外となります。2)
1)「外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて」(法務省)
2)「署名証明」(在トロント日本国総領事館)
【参考Webサイト】
「鑑登録証明書」(神奈川県小田原市)
「印鑑登録証明書が必要となるのは」(京都法律事務所)
「なぜ実印と印鑑登録証明書が求められるのか?」(弁護士法人 青山法律事務所)
「住民票・車検…行政手続き、認め印全廃へ 登記は実印で」(朝日新聞DIGITAL 2020/11/04)
運転免許証
自動運転社会
近い将来、「完全自動化」の自動運転である「レベル5」だけでなく、その前段階である特定の地域やルート、気象条件などの「特定条件下」での自動運転が認められる「レベル4」も含めて、「運転免許証なしでの乗車」が検討されています。1)
とはいえ、現段階で、せっかく取得した免許証を失うのは、もったいない気もします。
海外在住で運転の機会が少なくとも身分証明書として活用できるかもしれません。しかし、更新時期に一時帰国できない場合の対応など、更新手続きについて知っておくことは大切です。
なお、2025年3月からの運転免許証とマイナンバーカードの一体化に伴い、手数料の変更やオンライン講習の実施も予定されています。2)
1)「自動運転は免許不要?自動運転のレベルと免許証の必要性」(カーライフ 更新日:2020/06/09)
1)「国土交通省自動運転戦略本部」(国土交通省)
1)「自動運転に係る対応」(警察庁)
1)「自動運転移動サービス社会実装・事業化の手引き」(国土交通省・経済産業省・警察庁 2024.6)
2)「【マイナ免許証】来年3月24日開始へ マイナカードと運転免許証一体化 現行免許証の選択・併用も可能だが手数料はマイナ免許証より割高に?」(FNNプライムオンライン)
ポイント
- 運転免許証の新規取得には住民票が必要
- 日本に住所がない場合は、一時滞在先を住所地として免許証更新が可能
- 更新時期前(海外渡航前や一時帰国時)の更新手続き
- 海外滞在期間を「やむを得ない理由」とする運転免許の期限切れ(失効後)の申請
- 免許が失効して帰国した際の「外国免許からの切り替え」
1.運転免許証の新規取得には住民票が必要
運転免許証を新規取得する際には「本籍が記載された住民票の写し(発行から6か月以内)」が必要です。
取得後は、住民票の有無に関わらず、更新手続きを行う必要があります。もし失効してしまった場合、以下の項目のように「再取得」や「外国免許からの切り替え」を行うことができます。
【参考Webサイト】
「普通免許(運転免許センターで直接学科試験及び技能試験を受験する方)の手続について」(神奈川県警)
「海外滞在者の運転免許証の更新等に係る特例について」(警察庁)
2.日本に住所がない場合は、一時滞在先を住所地として免許証更新が可能
免許証の更新は、住所地を管轄する公安委員会で行うこととされていますが、日本に住所を有しない人が一時帰国した際に日本の免許証を更新する場合、「一時滞在先」を住所地として免許証の更新を行うことができます。
【参考Webサイト】
「海外滞在中で日本の免許をお持ちの方 免許証を更新する場合」(警察庁)
一時滞在先の実家やホテルを住所地とする滞在証明書の書き方(例:神奈川県の場合)
「滞在証明書(日本での一時滞在先を証明する書類)は、実家に滞在する場合、その家の方に書いてもらってください。ホテルに滞在する場合には、トラブル防止のため、ホテル側に免許の住所がホテルの住所となることを説明し、ホテルの支配人等から了承を得てください。
また、滞在証明書を書いた人の住民票の写しなど(氏名と住所が証明できる書類)が必要になります。ホテルに滞在する場合は、ホテルの支配人の名刺のコピーをもらってください。証明された住所が運転免許証に記載される住所になります。」
「海外に居住(滞在)していて日本の運転免許証をお持ちの方の手続について」(神奈川県警)
3.更新時期前(海外渡航前や一時帰国時)の更新手続き
やむを得ない理由(海外旅行も含む)があり、運転免許証の更新期間内に更新することが困難な人は、事前に申し出れば更新期間前でも更新手続きをすることができます。
また、海外赴任中の人は、更新期間前でも、一時帰国の際に更新することができます。
【参考Webサイト】
「期間前更新」(福岡県警)
4.海外滞在期間を「やむを得ない理由」とする運転免許の期限切れ(失効後)の申請
運転免許が失効した場合、更新手続きはできず、新たな受験手続きとなります。
ただし、失効後6か月以内の人または、海外旅行など、やむを得ない理由により失効後6か月を経過した人は、失効期間に応じて運転免許試験の一部が免除される場合があります。
例えば、「やむを得ない理由が解消されて1か月以内、かつ失効後3年以内」の場合は、「学科試験」と「技能試験」が免除されます。
【参考Webサイト】
「運転免許の失効再取得(期限切れ)手続き」(福岡県警)
5.免許が失効して帰国した際の「外国免許からの切り替え」
日本の免許が失効して帰国した際、免許失効後の期間を問わず、有効な外国等の免許を有する(日本の免許から切り替えた場合も含む)ことが確認できれば、「外国免許切替審査」を経て、日本の免許を取得することができる場合があります。
「外国等」の範囲に制限はありませんが、外国等の免許を受けた後、その外国等に3か月以上滞在していることが必要です。
審査の結果、補足資料が必要となる場合や、手続きできない場合があります。
【参考Webサイト】
「海外滞在者の運転免許証の更新等に係る特例について」(大阪府警察)
選挙権
【選挙権】日本に住民票のない海外在住者の投票(国政選挙)
選挙権は、満18歳以上の日本国民であることに加え、以下の要件が必要です。
- 「市区町村長選挙」、「市区町村議会議員選挙」は、引き続き3カ月以上その市区町村に住所がある者です。
- 「知事選挙」、「都道府県議会議員選挙」は、引き続き3カ月以上その都道府県内の同一市区町村に住所がある者。ただし、引き続き3カ月以上その都道府県内の同一市区町村に住所を有していたことがあり、かつ、その後も引き続きその都道府県の区域に住所を有する者を含みます。
- 「衆議院議員選挙」及び「参議院議員選挙」には住所要件はありません。
なお、いずれも禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者など「権利を失う条件」に該当する者は除きます。
つまり、日本に住民票のない海外在住者は「衆議院議員選挙」及び「参議院議員選挙」のみ投票することができますが、以下に説明する「在外投票」の手続きを行う必要があります。
在外投票
海外に住んでいる人が、外国にいながら国政選挙に投票できる制度を「在外選挙制度」といい、これによる投票を「在外投票」と呼びます。「在外投票」ができるのは、日本国籍を持つ18歳以上の有権者で、「在外選挙人名簿」に登録され、「在外選挙人証」を持っている人に限られます。
「在外選挙人名簿」への登録の申請には、出国前に国外への転出届を提出する場合に市区町村の窓口で申請する「出国時申請」と、出国後に居住している地域を管轄する在外公館に申請する「在外公館申請」の2種類があります。
「在外投票」の方法には、在外選挙を実施しているどの在外公館でも投票することができる「在外公館投票」と、直接登録先の「市区町村選挙管理委員会(選管)」に投票用紙を郵送する「郵便等投票」の2種類があります。
また、選挙の時期に一時帰国した場合や、帰国後国内の選挙人名簿に登録されるまでの間(住民票の作成後3か月間)は、「在外選挙人証」を提示することで投票することができます。
【参考Webサイト】
「選挙権と被選挙権」(総務省)
「在外選挙とは」(外務省)
2.【被選挙権】日本に「住民票」がなくとも立候補可能な選挙
日本国民であること以外に、「市区町村議会議員」は満25歳以上で、その市区町村議会議員の選挙権を持っていること、「都道府県議会議員」は満25歳以上で、その都道府県議会議員の選挙権を持っていることが必要です。
一方、「衆議院議員」は満25歳以上、「参議院議員」は満30歳以上であること、「市区町村長」は満25歳以上、「都道府県知事」は満30歳以上であれば被選挙権があり、立候補できます。
ただし、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者など「権利を失う条件」に該当する者は除きます。
【参考Webサイト】
「立候補を目指す方へ」(総務省)
海外での生活困窮
困窮邦人
フィリピンにおける「困窮邦人」は、書籍や映画などのメディアで取り上げられることがありますが、「自己責任」や「自業自得」として語られることが多いようです。
誰もが生活困窮に陥ることを想定して海外へ移住するわけではありません。しかし、新型コロナウィルスによるロックダウンのように、将来何が起きるかはわかりません。
異性間や家族との金銭トラブル、投資の失敗といった自己責任とされるような問題だけでなく、病気や怪我、認知症、精神疾患など、誰にでも起こりうる予期せぬ事態によって仕事や財産を失うなど、困窮状態に陥る可能性があります。
国内であれば、憲法により、すべての国民は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が保障されており、社会保障や福祉によっても支えられない場合の「最後のセーフティネット」として「生活保護法」1)や、その前段階として「生活困窮者自立支援法」2)による支援が行われます。
ちなみに、日本に居住する外国人については、永住者や特別永住者、日本人の配偶者などは生活保護と同様の要件で保護が行われています。3)
一方、海外在住の日本人には、憲法や生活保護法の適用はありません。4)また、在外公館による保護・支援も、下記の項目で説明するように限られた範囲です。
永住権などの在留資格を持っていても、多くの国では日本のような公的扶助を受けることは困難であり、ましてフィリピンのように自国でも多くの貧困層を抱えている国では難しいでしょう。
帰国できない「困窮邦人」は滞在国で「不法滞在」となる可能性が高く、滞在先の国や地域コミュニティーなどに人的および経済的な負担をかけることになります
海外在住者は「日本とは異なる」ことを認識し、様々な事態やトラブルを想定し、日本での生活以上に自ら「セーフティネット」の準備を心がける必要があります。
1)「生活保護制度」(厚生労働省)
2)「生活困窮者自立支援制度について」(一般社団法人 生活困窮者自立支援全国ネットワーク)
3)「外国人への生活保護について」(島根県)
2)「外国人への生活保護法の適用又は準用を否定した事例(生活保護開始決定義務付け等請求事件)」(国立社会保障・人口問題研究所)
2)「永住外国人の生活保護認めず 最高裁が初判断」(日本経済新聞 2014/07/18)
4)「海外で国内法に違反する行為をした場合に国内法を適用できるのか?」(参議院法制局)
3)「社会保障法判例 国外に現在する被保護者に対する生活保護法の適用が認められた事例」(季刊・社会保障研究)
海外で生活困窮に陥ったとき
日本人の海外における「最後のセーフティネット」は「大使館・領事館等」の「在外公館」といえるかもしれません。
外務省は「海外における邦人の生命及び身体の保護その他の安全に関すること。」1)を所掌し、在外公館は、「法律」2)に基づき、困窮状態に陥り、自ら帰国費用を工面できず、家族・関係者からも支援が受けられない邦人に対し、帰国費用を貸し付ける「帰国費用貸付け支援」3)などを行っています。
もっとも、現実的には、「大使館・総領事館のできること」4)というパンフレットにも、その制度についての説明はなく、「日本の親族に電話をして支援を求める。」5)ような対応になるかもしれません。
困窮した非居住者の帰国は、日本の家族・親族や友人などの協力が必要で、そのような人がいない場合は、支援は非常に困難になると考えられます。
1)「外務省設置法第4条第9項」
2)「国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律」
3)ちなみに、パスポート(更新)申請においては、「この法律を適用されて帰国したことがあるかどうか」について確認されます。「刑罰等関係欄に該当する方の申請」(福岡県)
4)「大使館・総領事館のできること」(外務省)
5)「法曹有資格者による日本企業及び邦人の支援の方策等を検討するための調査研究(フィリピン共和国)」(法務省)(日本企業及び邦人を法的側面から支援する方策等を検討するための調査研究)(111P )
【参考Webサイト】
《生活保護》
「ナショナルミニマムに関する議論の参考資料」(厚生労働省)
《在外公館の邦人支援》
「在外公館の仕事」(外務省)
「在外邦人の保護・支援」(「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議)(外務省領事局)
「在外公館のできること・できないこと」(外務省)
「国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律」(e-GOV法令検索)
「困窮邦人等の援護」(政府の事業が検索できるサイト JODGIT!)
「平成18年度決算検査報告 国費貸付金債権の管理に当たり、債権回収の具体的な実施方法を明確に定め、督促等を的確に行うことなどにより、債権の回収に努めるよう改善させたもの」(会計検査院)
「在外邦人の保護・支援」(外務省領事局)
《日本国内の困窮者支援(帰国後)》
「生活困窮者自立支援全国ネットワークについて」(生活困窮者自立支援全国ネットワーク)
「生活保護制度」
「生活保護の申請について、よくある誤解」(厚生労働省)
郵便物
「海外転出」と「郵便物」
海外転出する場合は、住民票と郵便局の住所データが連携されていないため、そのまま出国すると、郵便物が元の住所に届き続けてしまいます。
家族や親戚に郵便物を預けてもらう場合は、住所変更届を出せば、1年間は旧住所宛ての郵便物を転送してもらえます。
頼める人がいない場合は、海外への転送サービスを提供する「私書箱」や「レンタルオフィス」、「バーチャルオフィス」などを利用する方法もあります。
ただし、このような「私書箱設置業」や「郵便物受取サービス業」は、「犯罪収益移転防止法」の適用対象となり、非居住者の場合は海外の住所の確認を求められると思われます。1)
1)「海外在住の場合は、上記本人確認書類に加えて海外住所記載書類が必要になります。」「本人確認書類としてご利用可能なもの」(池袋私書箱オフィスワーク)
【参考Webサイト】
「転居・転送サービス」(郵便局)
「郵便物受け取りなどの非対面取引における犯罪収益移転防止法の規制とは?」(弁護士法人 モノリス法律事務所)
「郵便物受取サービス業/私設私書箱業」(経済産業省)
住民登録に関する罰則等
住民登録に関する届け出を怠ったり、虚偽の届け出を行ったりすると、罰則が科せられる場合があります。
事実発生日から14日以内に届け出が必要
「住民基本台帳法」では、「正当な理由がなくて、転入・転居・転出・世帯変更の届出をしない者は、5万円以下の過料に処する」となっており、事実が発生してから14日以内に届出をしないと「過料」に処せられる場合があります。実際に「過料」が科せられるかどうかは、裁判所(簡易裁判所)の判断となります。
「正当な理由がない」場合に行政罰である「過料」が課せられますが、行政が単独で行うことはできず、裁判所(簡易裁判所)の判断が必要になるため、一般的に「悪質なケース」でなければ、科せられることは多くはないと思われます。
なお、罰則ではありませんが、例えば、海外から帰国し、転入届を出し忘れていて、急病になり、病院で治療を受けようとする場合、保険証がなければ、窓口で全額を支払う「療養費」払いを求められます。
その後、遡った実際の転入日の日付で転入届を出し、「国民健康保険証」が遡った転入日で交付されたとしても、療養費払いの「やむを得ない場合」に該当しないとして支給対象とされない可能性があるのでご注意ください。
【参考webサイト】
「住所変更(転入・転居・転出・世帯変更)などの届け出が遅れるとどうなるのですか」(東京都中央区)
「虚偽の届け出」は刑事罰の対象
住民票について「虚偽の届出」であることが判明した際に、事案の性質、軽重等を考慮のうえ、告発される場合があります。1)
1)「公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法第157条)
【参考Webサイト】
「住民異動に伴う規制および罰則」(福島県白河市)
「略式裁判について」(検察庁)
その他(民間サービス・手続きなど)
証券口座
「国外転出」と「証券口座」
国外転出時には原則として証券口座は解約となります。
インターネット上で多くの情報が確認できますが、証券会社によって対応が異なることがあるため、具体的なケースは個別にお問い合わせください。
ポイント
- 非居住者となった場合、原則として口座は解約
- 海外赴任等の場合、口座の一部は保有して維持できる例
- 非居住者向けの口座を開設することが可能な例
- 口座の開設・保有にはマイナンバー提供が必要
1.非居住者となった場合、原則として口座は解約
国外転出時は、原則として口座は解約となりますが、「非居住者向けの口座」を提供している証券会社もあります。
これは、日本の証券会社が国外での金融商品取引業務を行うことが制限されているため、非居住者が日本の証券口座を利用し続けると、居住国の法令に違反する可能性があるからです。
【参考Webサイト】
「海外赴任の際に、証券口座はそのまま維持できる?証券会社ごとの比較も」(wise)
「【2023】海外在住者におすすめの証券口座を4選!海外移住した人が株式投資を始めるには?」(OSSJ)
2.海外赴任等の場合、口座の一部は保有して維持できる例
「海外勤務等の理由により一時的に出国し、非居住者となる場合、原則として日本株式及び日本国債以外の金融商品等をお預かりすることはできません。
ご出国前に外国証券や信用取引・先物オプション取引などの証拠金取引等の建玉等(非居住者となる場合に当社で原則継続保有可能な日本株式および日本国債以外の金融商品等)はお客さまご自身で売却・決済等を行ってください。
出国後は、全商品において、新規のお取引を制限させていただきます。なお、海外へ永住される場合は、証券総合口座の閉鎖が必要となります。」
「海外に行くことになりました。取引は継続できますか?」(SBI証券)
3.非居住者向けの口座を開設することが可能な例
「非居住者の方のお取引口座を開設することが可能です。証券の保管、売買の取次、移管、入出金等、総合口座の機能をすべてお使いいただけます。
当社は、非居住者の方が有価証券の保有に際して必要とされている常任代理人を業として行っております。ただし、口座開設の審査があり、居住国等の条件によっては口座開設をお受けできない場合がございます。」
「非居住者用総合取引口座(常任代理人口座)」(三田証券)
その他、「相続や持株会のお手続きのための口座開設」等状況によっては非居住者向けに制限のある口座の開設が可能な例
「仕事で海外に住んでいるのですが、口座開設できますか?」(野村證券)
4.口座の開設・保有にはマイナンバー提供が必要
「2016年1月1日より、新たに証券会社と取り引きする場合は、口座開設時にマイナンバー(個人番号)を証券会社に提供する必要があります。
また、2015年12月31日以前から証券会社と取り引きがあり、証券会社へのマイナンバーの提供が済んでいない人は、最初に株式・投資信託等の売却代金や配当金等の支払を受ける時までにマイナンバーの提供が必要です。」
「マイナンバー提供のお願い」(日本証券業協会)
【参考Webサイト】
「誰でも口座開設できますか。」(松井証券)
「海外に住んでいても口座開設はできますか?(出国(非居住)される方への対応)」(SBI証券)」
NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)
NISA(少額投資非課税制度)とは
「NISA(ニーサ)」1)は、少額からの投資を行うために2014年1月に始まった「少額投資非課税制度」です。
通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。
一方で、「NISA口座」で投資した金融商品から得られる利益は非課税になります。
ただし投資できる上限金額は決まっており、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能で、年間投資枠は最大で年間360万円、非課税保有限度額(総枠)は最大1,800万円となっています。
国外転出で非居住者となる場合
海外移住や海外転職などで非居住者となる場合は、口座を閉鎖しなければなりません。
しかし、会社からの転勤など、やむを得ない理由で海外へ行く場合、一定の条件を満たす手続きにより、最長5年間「NISA口座」を保有できます。
ただし、新規買い付けはできないため積立投資はできなくなります。
また、実際の運用は証券会社に委ねられており、サービス体制があるのは野村証券などごく一部に限られます。
1)正式名称は「Nippon Individual Savings Account」です。
【参考Webサイト】
「NISAを知る」(金融庁)
「【2024】海外赴任後も新NISA口座は継続可能?非居住者・海外赴任者向けに解説」(110Financial Support)
「新NISA、「海外派」が知っておくべき注意点」(日本経済新聞 2023/08/22)
iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)
※「iDeCo」は公的年金に上乗せされた私的年金です。「税金・公的保険など」の項目で取り上げた「国民年金基金」が「国民年金法」に基づくのに対し、「iDeCo」は「確定拠出年金法」に基づきます。
上記の表にあるように、「iDeCo」と「国民年金基金」は自営業等の国民年金の上乗せとして上限額も合算された額となります。ただ、一般的に資産形成において「NISA」と比較されることが多いため、「NISA」と同じ「その他」の項目で取り上げています。
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
「iDeCo」1)は、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に積立を行い、運用益を得て、老後の生活資金を準備する私的年金制度です。
加入は任意で、原則として、掛金は65歳になるまで拠出可能であり、60歳以降に老齢給付金を受け取ることができます。
掛金は「加入資格区分」によって異なり、国民年金の任意加入被保険者は「国民年金基金」の掛金額と合算して月額6.8万円です。2)
海外在住者の場合は所得控除のメリットはない
海外在住者でも「国民年金」に「任意加入」すれば「iDeCo(イデコ)」に加入できます。
ただし、「所得税法上の非居住者」の場合、iDeCoのメリットである「所得控除」を受けられません。
1)正式名称は「individual-type Defined Contribution pension plan(個人型確定拠出年金)」です。
2)「国民年金基金に加入しています。iDeCoの掛金上限額はいくらですか?」(りそな銀行 さいたまりそな銀行)
【参考Webサイト】
「iDeCoの概要」(厚生労働省)
「iDeCo(イデコ)の特徴」(iDeCo公式サイト)
「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」(iDeCo公式サイト)
「iDeCoの加入資格(海外居住者)」(確定拠出年金サービス株式会社)
「iDeCo(イデコ)・個人型確定拠出年金の海外移住・留学しても続けられる?解約は?受け取りは?」(マネーキャリア 2024/05/21)
非居住者と本人確認
マネー・ローンダリング防止と本人確認
マネー・ローンダリングとは、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関等による収益の発見や検挙を逃れようとする行為のことをいいます。
「犯罪収益移転防止法」1)は、マネー・ローンダリングを防止し、犯罪組織への資金供与(犯罪収益の移転)を防ぐことにより、社会の安全を確保し、経済活動の健全な発展のために2008年に制定されました。
この法律では、「金融機関等」「ファイナンスリース事業者」「クレジットカード事業者」「郵便物受取サービス業者(私設私書箱)」「電話受付代行業者(電話秘書)」「電話転送サービス事業者」など12種類の事業者が指定され、特定の取引を行う際に顧客の本人特定事項を確認することが義務付けられています。2)
2006年から全面施行された「携帯電話不正利用防止法」3)では、「音声通話携帯電話事業者」は、携帯電話等の契約時及び譲渡時等に、契約者の「本人確認」を義務付けています。
また、東京都条例では、個室や個室に類する施設を設けたインターネットカフェなどの利用端末利用業者に対して本人確認義務等を課す規制を行っています。4)
このように、「本人確認」は、多くの事業者に義務付けられていますが、一般的には住所確認も含めた本人確認は公的書類で行われるため、非居住者の場合には困難になることがあります。
なお、所持人記載欄の住所を偽って口座開設を行うといった事件の発生などもあり、パスポートの「所持人記載欄(住所欄)」は、2020年の旅券から廃止されています。5)
1)正式名称は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」
1)「犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)」(大阪府警察)
1)「犯罪収益移転防止法等の概要について」(総務省)
1)「犯罪による収益の移転防止に関する法律等」(国税庁)
2)「平成28年10月1日からお取引時の確認方法が以下のように変更になります。」((一社)全国銀行協会)
2)「犯罪収益移転防止法に関するよくある質問・回答」((一社)全国銀行協会)
2)「犯罪収益移転防止法に関する留意事項について(令和6年3月29日改定)」(金融庁)
3)正式名称は「(携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通話役務の不正な利用の防止に関する法律)」
2)「携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認方法の見直しの方向性について(令和6年4月)」(総務省)
2)「契約時の本人確認について」(TCA 一般社団法人 電気通信事業者協会)
4)「インターネット端末利用営業の規制に関する条例について」(警視庁)
3)「都内のインターネットカフェをご利用の方へ 本人確認にご協力をお願いします」(警視庁)
5)「こんな時、パスポートQ&A Q12」(外務省)
4)「旅券(日本国発行)による本人確認時の注意事項」(警視庁)
4)「パスポートの「所持人記入欄」悪用し口座開設 容疑の男2人を逮捕 埼玉」(産経新聞 2016/11/12 )
※非居住者の銀行口座や証券口座の維持や開設については「銀行口座」「証券口座」の項目を御覧ください。また、「マイナンバーカード」や「海外送金」なども関連がある項目ですので参考にしてください。
銀行口座
非居住者と「銀行口座」
「国外転出届」を出して海外転出した場合でも、日本の銀行口座を解約せずにそのまま残すこともあります。
現状では役所が住民票の異動情報を民間企業の銀行に提供するような連携はないため、銀行独自の調査により発覚することがなければ、そのまま維持することは可能です。
しかし、「外為法」1)上の非居住者でありながら、一時帰国の際などに居住者として当該口座から国内送金扱いで送金を行った場合、違法行為となる可能性があります。郵便などが届かず、居住実態が無いと判明した場合は、解約を求められる可能性があります。
2021年に、日本は国際組織から「マネー・ローンダリング(資金洗浄)対策」が不十分であると指摘されています。2)
このようなことからも、顧客情報や取引内容の管理体制の強化が求められており、非居住者の口座開設が一層困難になってきています。3)
とはいえ、銀行口座を解約すると、「クレジットカード」や「携帯電話」の保有にも影響が生じる可能性があり、一部の銀行では「非居住者向け口座(非居住者向け円預金)」を提供していますが、条件があって利用できない場合もあります。
1)正式名称は「外国為替及び外国貿易法」、「外為法」における非居住者の定義等については次回で説明します。
2)「マネロン対策、日本は実質「不合格」 国際組織が審査」(ロイター 2021/08/30)
2)「財務省、みずほに改正外為法で初の是正命令へ 外国送金に不備」(朝日新聞 2021/11/25)
3)「銀行口座の開設~日本人なのに日本口座が開けない~」(JGA税理士法人 2023/11/02)
3)「非居住者の銀行口座開設~日本銀行口座を開けない日本人(非居住者)が増加~」(JGA税理士法人 2024/02/21)
ポイント
- 銀行によって異なる非居住者に対する口座維持・新規開設の対応
- 非居住者として登録したゆうちょ銀行の口座へ入金ができない例
- 非居住者の国内送金は国際送金と同様の手続き
- 非居住者向け口座サービス
1.銀行によって異なる非居住者に対する口座維持・新規開設の対応
国外転出する場合は原則として解約になる一般的な例
「お取引は、日本国内に居住される個人のお客さまに限らせていただいております。そのため、海外に転出される(日本国内から住民票を除票する)場合は、原則として口座解約をお願いいたします。」
「海外へ引っ越し(転出)することになった場合の手続き方法を教えてください。」(SBI新生銀行)
所定の手続きの上、国外転出後も口座を維持できる例①(ソニー銀行)
「すでにソニー銀行に口座を開設済みで、日本国籍をお持ちの方は、海外への転勤・留学などにより日本国外へお住まいを移された後も、引き続きソニー銀行の口座をご利用できます。
ただし一部のお取り引きに制限があるほか、国外へ転居される際は、日本国内のご連絡先となるかたをご登録するなど、所定のお手続きが必要です。
現在すでに日本国外に居住している方が、ソニー銀行で新た口座開設することはできません。」
「海外転勤・留学などをご予定の皆さまへ」(ソニー銀行)
所定の手続きの上、国外転出後も口座を維持できる例②(ゆうちょ銀行)
「当行におきましては、海外への各種お知らせ方法等がないため、可能な限り、現在お持ちの口座は解約していただくようお願いしております。
ただし、赴任後も給与の振込み等で利用される目的があれば、『非居住者の届け』のお手続きを行っていただいたうえで保有することは可能です。
その場合、払戻し、預け入れ、残高照会のお手続きは第三者に委任していただいたうえで、ご利用いただけます。なお、継続的に第三者に委任してお手続き等をしていただく場合は、利用代理人を設定いただくこともできますので、窓口にてお手続きしてください。」
「海外に長期赴任予定ですが、ゆうちょ銀行の口座はそのまま保有してもよいですか。」(ゆうちょ銀行)
「外為法上の非居住者から居住者になった場合どうすればよいですか。」(ゆうちょ銀行)
非居住者は口座を開設することができない一般的な例
「海外居住者はゆうちょ銀行の口座を新規で口座を開設することはできません。」
「海外居住者はゆうちょ銀行の口座を開設することができますか。」(ゆうちょ銀行)
「口座開設を行えるのは、日本国内在住のお客さまに限ります。」
「海外在住でも口座開設できますか?」(スルガ銀行)
2.非居住者として登録したゆうちょ銀行の口座へ入金ができない例
非居住者に対する振込は、手続きが不安定な可能性があります。
「2022年5月6日より、ゆうちょ銀行にて非居住者として登録されている受取人への振込は、入金されない、または入金が遅延する場合があります。入金されない場合、手数料の返金および無料回数のカウントは戻せません。」
「〔振込振替〕 ゆうちょ銀行で非居住者登録されている受取人への振込について」(住信SBIネット銀行)
3.非居住者の国内送金は国際送金と同様の手続き
「銀⾏には、『外為法』において、非居住者が⾏う為替取引等が、規制対象取引等に該当しないことの確認が義務付けられています。
当⾏では、当該確認義務の確実な履⾏のため、同法に基づく非居住者が関連する国内送⾦について、原則、国際送⾦として取り扱っています。そのため、非居住者の関連する、⼀部の国内送⾦の取り扱い場所や送⾦料⾦が国際送⾦と同様になります。」
「非居住者のお客さまに係る国内送金のお取り扱いについて」(ゆうちょ銀行)
《手数料の例(ゆうちょ銀行)》
ゆうちょ銀行直営店・国際送金取扱郵便局からの場合 7,500円
『Madotab』『ゆうちょ通帳アプリ』『ゆうちょダイレクト』 3,000円
「非居住者のお客さまに係る国内送金のお取り扱いについて」(ゆうちょ銀行)
※手数料は各銀行や非居住者向け口座によって異なりますのでご確認ください。
4.非居住者向け口座サービス
大手メガバンクなどの「非居住者向け口座」は海外赴任などの条件があります。
「グローバルダイレクト」の例
利用できる人は、以下の目的で本邦から出国し、帰国予定のある人「国内勤務先からの海外赴任」「在外公館勤務」「海外の学校への留学」「上記目的で出国する人の同行(家族)」
「グローバルダイレクト」(三菱UFJ銀行)
【非居住者向け銀行口座参考Webサイト等】
「海外赴任しても使える銀行口座6選!非居住者向けサービス・手数料解説」(Wise 2023/03/07)
「【2023】海外赴任者が日本の銀行口座をそのままにするには?海外移住者に関する注意点も解説」(OSSJ)
「【2024版最新】海外赴任時に銀行口座はそのまま使える?非居住者でも使えるおすすめサービスをご紹介!」(Exiap 2024/05/15)
「海外移住をしたら銀行口座はどうなる?各銀行の非居住者向けサービスを紹介」(Leverages Career 2024/02/13)
「海外赴任時に銀行口座はそのままでいい?手続き方法と海外でも使える銀行一覧を紹介!」(欧米・アジア語学センター 2023/07/29)
【動画】「SMBC信託銀行・ソニー銀行、非居住者を口座解約させたい理由とは?」(週末海外ノマド「ダイスケ」)
海外送金
銀行による海外送金
銀行の海外送金は一般的に手数料が高額です。手数料には「送金手数料」「受取手数料」「中継銀行手数料(コルレス手数料)」1)が含まれ、為替レートには「為替手数料」が加算されます。同一通貨でも「リフティングチャージ料」2)がかかることがあり、また、「中継銀行」が多いほどコストが上がる傾向があります。
資金移動業者による海外送金
2010年4月に「資金決済法」が施行され、少額取引に限り、銀行以外の「資金移動業者」も送金が可能となりました。2021年5月の法改正により、5万円以下は「第三種資金移動業者」、100万円以下/件は「第二種資金移動業者」、上限なしは「第一種資金移動業者」と分類されました。日本とフィリピン間では「OFW」3)による送金が一般的で、多くの「資金移動業者」が海外送金業務を行っています。
一般的に手数料が安いとされるのは「Wise」で、日本で第一種資金移動業者として登録及び認可を受けていることからすべての対応通貨で最大1億5000万円(相当額)の送金(第一種送金)を行うことができます(銀行からの送金など送金機能にのみ適用で残高からの送金、残高へのチャージ取引には、これまで通り最大100万円(相当額)の限度額が適用)。4)
しかし、日本への送金には対応していない国もあり、例えば日本からフィリピンには送金できますが、フィリピンから日本へは送金できません。
1)「中継銀行手数料(コルレス手数料)」:銀行送金では、必ず「SWIFT」という世界中の銀行が加盟しているネットワークを利用する必要があり、送金が複数の銀行を経由する際に発生する手数料のことをいいます。
「SWIFTによる送金の仕組みとは?オンライン海外送金サービスとの違いや特徴を解説」(Ccurfex)
2)「リフティングチャージ料」:為替が起こらない同一の通貨で外国為替取引を行う際にかかる手数料のことをいいます。例えば、外国為替取り引きでありながら、「円からドル」や「ドルから円」ではなく「円から円」、あるいは「ドルからドル」といった場合です。ただし、「SMBC信託銀行」のように個人の場合は手数料がかからない銀行もあります。
「リフティングチャージとはどういう手数料ですか?」(SMBC信託銀行)
3)「OFW」:「Overseas Filipino Worker(海外フィリピン人労働者)」のことで、フィリピン国籍を持ち一定期間の雇用のために他国に居住するフィリピン 人移民労働者を指し、約180万人(2020年)で、2023年の国内総生産(GDP)の8.9%を占めます。
「Overseas Filipino Worker」(Wikipedia)
4)「Wiseが日本で第一種資金移動業者の認可を取得」(PR Times 2024/03/12)
【参考Webサイト】
〚銀行送金〛
「海外送金の方法と手数料の比較ポイント | 国際送金の仕組みを解説」(Digima~出島~)
「海外送金(国際送金)とは?方法と選び方、主要銀行のサービス・アプリを紹介」(Square)
〚資金移動業〛
「【2024年版】おすすめ「海外送金サービス」5つの手数料を比較!」(Digima~出島~)
「【2024版最新】PayForexとWiseを徹底比較」(exiap)
「金融庁説明資料(近年の資金決済制度の動きについて)」(金融庁 2023/05/24)
「資金移動業者一覧」(財務省 関東財務局(金融庁HPへリンク))
ポイント
- 非居住者の海外銀行送金
- 非居住者は犯罪収益移転危険度が高い顧客
- 海外送金は口座保有者のみとする一般的な例
- 外国への送金や外国からの送金の受領にマイナンバーの届け出が必要な例
- 海外からの非居住者の送金における確認
- 海外から日本の自分の口座への送金ができないケース
- 資金移動サービスにおける本人確認
1.非居住者の海外銀行送金
「銀行からの海外送金は口座保有者に限られる等、非居住者が国内の銀行から送金することは難しくなっています。」
「海外送金、海外からの送金受取が非常に難しくなっています。」(司法書士法人行政書士法人さくら国際)
2.非居住者は犯罪収益移転危険度が高い顧客
「犯罪収益移転危険度調査書」1)では、「暴力団」「国際テロリスト(イスラム過激派等)」「外国の重要な公的地位を有する者」「公人(実質的支配者が不透明な法人等)」とともに非居住者がマネー・ローンダリングやテロ資金供与などの「犯罪収益移転危険度」が高いとされています。
1)「犯罪収益移転危険度調査書(令和5年12月)」(国家公安委員会)
【参考Webサイト】
「金融活動作業部会(FATF)による「暗号資産:FATF基準の実施状況についての報告書」の公表について」(金融庁)
「犯罪収益移転危険度調査書(令和5年12月)」(国家公安委員会)
3.海外送金は口座保有者のみとする一般的な例
「複雑化・高度化するマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策の重要性が近年益々高まっております。当行としてお取引内容の適切な確認を行うため、仕向外国送金の受付を以下の通りとさせていただきます。当行に口座をお持ちでないお客さまの仕向外国送金の受付を停止いたします。
「当行に口座をお持ちでないお客さまの仕向外国送金等の受付停止に関するお知らせ」(SMBC三井住友銀行)
4.外国への送金や外国からの送金の受領にマイナンバーの届け出が必要な例
「外国への送金、外国からの送金の受領の際にはマイナンバーの届け出が必要です。」
「国際送金の際にマイナンバーの届け出は必要ですか。」(ゆうちょ銀行)
5.海外からの非居住者の送金における確認
「海外に住む国内非居住者がマイナンバー(個人番号)を持たないことのみを理由に、金融機関が国内の預貯金口座への送金や、送金された金銭の払い出しを拒否することはありません。
ただし、国内に住んでいた人が海外に転居して国内に送金する場合、金融機関に対して住所が海外にあることを正式に届け出る必要があります。また、金融機関がもともと国内居住者向けに限定しているサービスは利用できません。」
「海外在住者はマイナンバーなしで送金可能、ただし転居の届出は必要と異例の公表」(日経XTECH 2016.02.22)
6.海外から日本の自分の口座への送金ができないケース
当ブログの「フィリピンから日本への送金(セブの日常)」のコメントによれば、海外から自分の銀行口座に送金しようとしたら、本人確認ができないという理由で、受け取り側の銀行が拒否したために送金できなかったという事例があるようです。
これは、日本側の銀行口座がマイナンバーと紐付いていないなど、本人確認ができない(非居住者の可能性がある)ためである可能性などが考えられます。
7.資金移動サービスにおける本人確認
会員登録の申込み後約1週間程度で「ウェルカムパッケージ(宅配便でお届けするサービスのご利用に必要な書類)」が身分証明書に記載されている住所に届き、配送業者の「受取人確認サポート」により、送り状の名前と住所が身分証明書と一致しているかを確認するというように、厳格な本人確認がとられているサービスもあります。
「ご利用手順(個人のお客さま)」(SBIレミット)
クレジットカード
海外でのクレジットカード利用
海外旅行や海外生活において、クレジットカードは不可欠といっていいかもしれません。非居住者となり、銀行口座を維持できない場合、日本のカードが利用できなくなる可能性があるため、注意が必要です。
ポイント
- 非居住者でクレジットカードを作れた例(楽天カード)
- 住民票を残したままでの海外でのクレジットカードの利用
- 住民票を抜いた場合のクレジットカードの利用
- 更新時に新しいカードを海外に送付してもらえる例(三井住友カード(SMBC))
- 更新時に新しいカードを有効期限満了月前に受領できる例(楽天カード)
- 「利用明細書」の「Web明細」利用
1.非居住者でクレジットカードを作れた例(楽天カード)
いくつかのウェブサイトでは、海外在住者でもクレジットカードを作成できたというレポートがあります。
ただし、いずれも「送られてくるカードを受け取る住所」と、運転免許証など「住所地が記載された身分証明書」及び「銀行口座」が必要です。つまり、住民票の「住所地」の代わりに実家などの「居住地」で申請するということであり、日本に「居住地」がない海外在住者にとっては、新規でクレジットカードを作ることは相当困難といえます。
【参考Webサイト】
「海外在住でも日本のクレジットカードを作ることができました」(海外在住者のライフハック 2023/10/28)
「海外在住者が日本のクレジットカードを作る方法」(Tonny’s note in Canada 2024/06/20)
「海外在住でもクレジットカード作れたよ【絶対必要な3つの条件と申し込み方法】」(日々まる。2018/04/28 / 2024/06/26)
2.住民票を残したままでの海外でのクレジットカードの利用
「海外旅行や海外ビジネスでの利用が想定されているクレジットカードでは、住民票を残していれば問題ありません。ただし、届出住所が利用できなくなる場合は、日本国内の実家などに住所を移す必要があります。」
「海外移住したらクレジットカードはそのまま使えない?必要な手続きや注意点を解説」(JCBカード)
3.住民票を抜いた場合のクレジットカードの利用
「国外転出届を出して住民票を抜いた場合、現在のクレジットカードが使えなくなる可能性があります。
金融機関の中には、銀行口座の利用を日本居住者に限定する規約を設けているところがあり、日本国内に住所がなくなり銀行口座を解約することになると、それに紐付いているクレジットカードも解約が必要です。」
「海外移住したらクレジットカードはそのまま使えない?必要な手続きや注意点を解説」(JCBカード)
4.更新時に新しいカードを海外に送付してもらえる例(三井住友カード(SMBC))
「海外生活ヘルプデスクに申し込むことで、更新カードを海外送付先住所へ届けてもらうことができます。」
「海外赴任のため、更新カードを海外に送ってもらうことはできますか?」(三井住友カード(SMBC))
5.更新時に新しいカードを有効期限満了月前に受領できる例(楽天カード)
「海外に赴任などの予定がある場合、有効期限満了月前でも更新カードを受け取れる場合があります。ただし、更新カードの送付先は日本国内の登録住所のみです。」
「海外赴任でカードの更新時期に日本にいない場合の手続き方法を知りたい」(楽天カード)
6.「利用明細書」の「Web明細」利用
「毎月のお支払い日および支払い金額をメールでお知らせするWeb明細に申し込むと、利用代金明細書が郵送されなくなります。」
「ご利用代金明細書を自宅に送らないでほしいのですが、どうすればよいですか?」(三井住友カード)
海外キャッシング
海外キャッシングの利用
海外旅行や海外滞在時に、現金の持ち込み以外で資金が必要な場合、「海外キャッシング機能付き」の「クレジットカード」や「デビットカード」を利用する人は多いでしょう。
スキミングなどによる利用停止のリスクもあるため、比較的簡単に作れる「デビットカード」を用意して、2枚持ちにする方法も有効です。
「デビットカード」は現金を引き出した時点で手数料が確定しますが、「クレジットカード」は利息が発生し、返済が遅れるほど利息が増えます。
このため、できるだけ早く繰り上げ返済をすると、利息を抑えることができます。リボ払いを利用して、強制的に返済する方法も紹介されています。1)繰り上げ返済などの方法はカード会社によって異なる場合があるので、お手持ちのカード会社についてご確認ください。
1)「海外旅行でキャッシングするときにおすすめのクレジットカードは?手数料についても解説します」(マネ会)
【おすすめデビットカード参考Webサイト】
「【徹底比較】海外で使えるデビットカードのおすすめ人気ランキング10選【2024年】」(mybest)
「海外で使えるおすすめデビットカード9選:手数料の注意点も」(Wise)
「世界が近くなるグローバルなデビットカード」(Wise)
「Wiseデビットカードの評判と使い方」(exiap)
【おすすめクレジットカード参考Webサイト】
「おすすめの海外キャッシングは?6社のクレジットカードを比較!」(Wise)
「海外キャッシングのクレジットカードは?手数料で比較したおすすめ」(aumo)
電子マネー
海外での電子マネーの利用
フィリピンでは「Gキャッシュ」や「ペイマヤ」などの電子決済サービスが急成長しています。これらは世界各国のキャッシュレスサービスと提携することで、居住国以外でも利用可能です。1)
スマホ決済の「Apple Pay(アップルペイ)」は、基本的に世界各国で利用できますが、ほとんどの日本の電子マネーは海外では利用できません。2)
「電子マネー」と「本人確認」
プリペイド方式の電子マネ」は、基本的に住民票の有無に関係なく利用できます。
2022年に改正された「改正資金決済法」3)では、電子マネーや暗号資産などの新たな決済手段や、資金移動のような決済システムについて規制されています。
これらキャッシュレス決済サービス等の中には、高額な残高を譲渡したり、支払いに使用したりすることができるものもあり、犯罪組織の資金洗浄(マネー・ローンダリング)に利用される懸念があるため、対象となる事業者には、「犯罪収益移転防止法」に基づく取引時確認義務が求められます。
なお、電子マネーの「PayPay」は、非居住者は利用できないとしています。4)
1)「フィリピン人は全世界でGCashの使用が可能」(KYODO NEWS PRWIRE 2023/11/22)
2)「海外でのスマホ決済事情!Apple PayやGoogle Payは問題なく使える?」(旅とクレカの情報室)
3)「改正資金決済法」の正式名称は「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」
4)「当社のサービスは、日本国内の居住者の方を対象としたサービスであり、非居住者の方は利用できません。また、非居住者宛のPayPay残高の譲渡・送金等はお受けできません。」
「PayPayサービス利用規約」(PayPay)2
【参考Webサイト】
「資金決済法の概要」(PAYCIERGE (ペイシェルジュ))
「改正資金決済法で改正された内容は?注意すべき点と合わせて解説」(ネクスウェイ 本人確認サービス)
「近年の資金決済制度の動きについて(2023年5月24日)」(財務省)
「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案(2022年3月)」金融庁
生命保険・民間医療保険
生命保険・民間医療保険
通常、生命保険は、住民票の有無にかかわらず海外に引っ越しても契約を続けることができます。
ただし、医療保険では、海外での治療に対する保障がどこまで適用されるかは契約内容によるため、確認が必要です。
【参考Webサイト】
「海外移住したら加入している各種保険はどうなる?注意点や手続きについて知ろう」(セゾンファンデックス)
ポイント
- 海外在住となる場合、代理人の指定が必要な例
- 国外転出後の保険加入や特約の中途付加
- 日本に住所がない海外在住者の新規加入
1.海外在住となる場合、代理人の指定が必要な例
「契約者さまが海外赴任される場合は、ご指定の代理人さま(日本国内居住の3親等以内のご家族)にご契約の管理をお願いすることになりますので、代理人登録のお手続きが必要となります。」
「海外に引越しするとき」(SOMPOひまわり生命)
「日本国内の金融機関からの口座振替やクレジットカード払いによるお払込みなどが選択いただけます。」
「海外渡航中に保険料を支払う方法」(SOMPOひまわり生命)
2.国外転出後の保険加入や特約の中途付加
ほとんどの生命保険会社が、海外渡航中の保険加入や特約の中途付加などの取り扱いはできないとしています。
【参考Webサイト】
「海外居住者でも生命保険に入れるの?渡航する前に手続きをしましょう!」(リアほ)
3.日本に住所がない海外在住者の新規加入
日本の民間の生命保険の加入は原則として「日本の居住者」を対象としています。
しかし、企業のグローバル化が進む昨今、非居住者である海外赴任中の人であっても「永住目的でないこと」「日本に確実な連絡先があること」「日本に保険料の支払及び保険金を受け取ることができる銀行口座があること」などを条件に新規の加入を認める保険会社が出てきています。
【参考Webサイト】
「海外赴任中に新しく日本の生命保険に加入することは出来る?」(オーキッドFP税理士事務所)。
一時帰国時の保険
非居住者の一時帰国中の医療保険
タイ人女性観光客が心臓の病気で緊急手術と受け、その医療費が1,800万円にもなったが、本人は無保険だったというニューㇲ1)がありました。訪日外国人客の医療費の未収金は、今も多く発生しています。2)
非居住者の場合も、短期間の一時帰国などで、公的保険に加入していなければ自費診療となり、全額自己負担となるため、旅行保険などの検討が必要です。なお、日本人向けの「国内旅行保険」は、国内に住所が必要な場合があるため注意が必要です。3)
「Visit Japan Web」4)は日本への入国手続(入国審査、税関申告)ができるウェブサービスで、 日本に帰国する人も利用できます。入力を進めると日本入国後に加入手続きができる保険の案内があります。5)
1)「大好きな日本で背負った…1800万円の医療費 本当に怖い旅行中の病気」(withnews 2017/09/04)
2)「依然『外国人患者を受け入れる医療機関の2割弱』で未収金発生、ごく一部だが『月間500万円超』の高額未収となるケースも―厚労省」(Gem Med 2024/08/01)
3)「ご契約者(お申込人)はお申込み日時点で⽇本国内に居住されている満18歳以上の個人の方となります。 被保険者(補償の対象となる方)は、保険開始日時点で満74歳以下の方となります」
「『国内旅行の保険』の加入年齢に条件はありますか?」(au損保)
4)「Visit Japan Web」(デジタル庁)
5)「安心して旅行をするため、十分な補償がある民間医療保険に加入することを強く推奨します。」(日本政府観光局(JNTO) )
【参考Webサイト】
「海外在住者向けの一時帰国時の保険の種類やメリット・デメリットについて徹底解説!」(Wise)
「海外在住者への一時帰国中の海外旅行保険」(東京海上日動火災保険)
海外移住者の現地での医療保険
海外での医療費が高額になった場合の備えが必要
住民票を残している場合、国保の「海外療養費」を申請できますが、現金給付という例外的な手続きであり、手続きが煩雑です。また、保険診療に該当する治療のみが対象となり、加害者のいる交通事故などは対象外となる場合があります。
中長期の滞在の場合は、現地の医療保険に加入することもできますが、国や保険会社によっては、保障に対する保険料がかなり割高になるケースもあるため、十分に現地で情報収集する必要があります。
一般的に利用されるのはクレジットカードの「海外付帯保険」ですが、観光など短期の渡航が対象で、就労ビザを持って居住している人などは対象外とされることもあるので、注意が必要です。
また、一般の海外旅行保険は留学などに限定し、移住のように長期間滞在する場合は対象外とされることもあるので、確認が必要です。
【参考Webサイト】
「海外旅行保険はクレジットカード付帯で良い?違いとおすすめ補償プラン」(損保ジャパン)
【動画】「2023年のクレジットカード海外旅行保険、ルール変更が続出!これだけは持っておきたい最強カード!」(週末海外ノマド「ダイスケ」)
「海外旅行保険はクレジットカード付帯で良い?違いとおすすめ補償プラン」(損保ジャパン)
スマートフォン・携帯電話(SMS認証)
海外での通信手段
海外での通信手段に関しては、様々な情報がインターネットなどで探せます。ここでは、初めての海外移住を考えている人や、海外旅行に慣れていない人向けにポイントのみ取り上げます。
ポイント
- 海外転出する場合の携帯契約の維持
- 日本に住所がない場合の新規契約は困難
1.海外転出する場合の携帯契約の維持
今まで使っていた「ポストペイド契約」1)の携帯電話を解約すると、電話番号が将来に渡って使えなくなります。
また、国外転出届を出した場合、住所がないまま新規契約することは難しくなります。
維持費を安く抑えつつ継続して利用したい場合、大手キャリアなどは「番号保管」2)サービスが利用できる場合があります。しかし、「SMS認証」3)は受信できません。
近年、クレジットカードや各種Webサイトのアカウント確認で「SNS認証」が求められるケースが増えてきました。
電話番号を安い費用で維持し、海外で「SMS認証」も行えるようにするためには、海外データローミングに対応した「MVNO」4)に乗り換える方法もあります。
この場合、「MNP」5)を利用して同じ電話番号を引き継ぐことができます。
現在、最も安価な維持費で海外でSMS認証が行える通信会社は「Povo」で、180日間のうちに最低一度のデータなどのトッピング(数百円)の購入のみで維持でき、SMSの着信は無料です。6)
1)「ポストペイド契約」 「ポストペイドとは?」(BIC SIM)
2)「番号保管」 「【海外出張・留学】スマホや携帯電話はどうすればいい?」(docomo)
3)「SMS認証」 「SMS認証とは?仕組みやメリット、活用例・導入方法についても解説!」(Rakuten Mobile)
4)「MVNO」「MVNOとは」(NTTコミュニケーションズ)
5)「MNP」「携帯電話番号ポータビリティ(MNP)とはなんですか?」(ソフトバンク)
6)「ホームページ」(Povo)
6)「トッピング一覧」(Povo)
6)「トッピングの購入を一定期間実施しなかった場合、どうなりますか?」(Povo)
2.日本に住所がない場合の新規契約は困難
「携帯電話不正利用防止法」により、「音声通信事業者」は、契約時に運転免許証の提示などで相手方の氏名、住所及び生年月日を確認しなければなりません。
外国人観光客のように日本に住所がない場合は、パスポートの住所欄や補完書類で確認します。
この法律で非居住者の携帯契約が禁じられているわけではありませんが、「ポストペイド契約」においては、携帯会社は基本的に日本の公的文書などで住所を確認できることを要件としており、一般的に非居住者が契約することは難しくなっています。1)
なお、海外旅行客向けプリペイド携帯の場合であっても、音声通話可能なプリペイド携帯を提供しているMVNOは少数となっています。
一方、音声通話のない「データSIM」の場合は本人確認が不要です。2)
1)「『音声及びSMS付きSIM』の場合は、本人確認が必須のため、日本国内の住所が記載された書類が必要です。」「よくあるご質問」(HIS Mobile)
2)「データSIMの場合、本人確認の審査はありませんので、日本に現住所がない場合でも、申込みは可能です。ただし、SIMの発送先は日本国内に限っていますので、受け取り可能な住所にてお申込みをお願いします。」
「よくあるご質問」(HIS Mobile)
【参考Webサイト】
「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(携帯電話不正利用防止法)」(e-GOV法令検索)
「Q&A -携帯音声通信事業者向け-」(総務省)
「外国人の携帯電話契約・利用の円滑化に向けた取組」(総務省)
住宅ローン
非居住者であっても住宅ローンの継続が可能な場合
「所定のお手続きを行うことで、ローンをご契約中のお客さまは、当社とのお取引きを限定的に継続することが可能です。」1)と説明されているように、日本国内に居住する親族など、郵便物を受け取る代理人がいれば、引き続きローンの継続が可能なケースもあります。
なお、手続き後に海外赴任中に対象物件を賃貸に出すことは可能ですが、融資対象物件から住民票を移動し、転居した場合、「住宅借入金等特別控除」が適用されなくなる可能性があります。
「住宅ローン控除」は一定条件で非居住者も適用可能
平成28年税制改正により、非居住者に対しても、「住宅取得後に住宅ローン控除の適用を受けていたが、海外勤務を命じられて単身で外国に赴任している場合」「海外勤務中に日本の住宅を購入し、家族が住む場合」といった一定の要件が満たされれば「住宅ローン控除」の適用ができるようになりました。
ただし、居住期間中の給与所得や出国後の国内不動産所得などの総合課税の対象となる国内源泉所得がある年分に限られます。
1)「〔住宅ローン〕 海外赴任が決まりましたが、住宅ローンはこのまま利用可能ですか。また赴任中、賃貸に出すことは可能でしょうか。」(住信SBIネット銀行)
【参考webサイト】
「海外転勤者の住宅ローン控除の改正、非居住者でも適用可能な場合」(TOMAコンサルタンツグループ)
「転勤と住宅借入金等特別控除等」(国税庁)
おわりに
今回は、日本に住所・住民票がある場合と、海外移住・海外転出して住民票を抜いた場合の違いや影響についてまとめました。
次回は、冒頭でふれたように住所・住民票に関する疑問や知識などについての話をしたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。