「カミさん」もだめ?「嫁という言い方で議論」【フィリピン・セブでのつぶやき】

少し前ですが、俳優の松山ケンイチさんがテレビ番組で、自身の節約生活について語るなかで、「髪は自分で切るほか、『嫁』に切ってもらったり」と話し、ツイッターなどで「自分は嫁呼ばわりされたら嫌」などという声があがる一方で、「嫁って言葉ダメなの?」かと賛否両論があったとのこと。

私のフィリピン・セブ生活において妻の存在はとても大きく、実は私がブログを始めるにあたり、「妻を何と呼称するか」悩んだ覚えがあるので、それを思い出してしまいました。

今回のニュース

まず、2月16日のスポニチの報道では、松山ケンイチさんの「もし仕事がなかった時、髪が伸びてしょうがなかった時、自分で切ってるもん。あと嫁に切ってもらったり」という発言を、普通にテレビ番組での話題として、コメントもなく報道していました。1)

この発言は、松山さんのプライベート話において、節約についてのMCとの問答の中で、話し言葉の中で「妻」を指す言葉として自然に発せられたものと見受けられます。

しかし、その後、21日には、ツイッターなどでこの「嫁」という言い方について、批判的な意見など賛否をとりあげるとともに「女性蔑視については特に過敏になっている昨今。ちょっとした一言が、大問題になってしまうのかもしれない。」とする記事などもでました。2)

そして、一方、「夫源病」の呼び名のもとになった著者で医師の石蔵文信氏の意見3)や明治大学文学部教授でテレビでもおなじみの齋藤孝氏へのインタビュー4)など意見が出されました。

1)「松山ケンイチ 妻・小雪&子ども3人とのプライベート明かす 髪が伸びたら「嫁に切ってもらったり」(スポニチ 2021/02/16)
2)「松山ケンイチの“嫁呼び”に女性視聴者が怒り『この発言はマズい』」(ニコニコニュース 2021/02/21 )
3)「「嫁」・「主人」が死語になる日; 言葉狩りと非難しない前向きな対応を」(Yahooニュース 2021/03/07)4)「「妻」「嫁」呼称問題 松山ケンイチの発言に端を発しネットで議論 齋藤孝氏が語る怒りを買わない配偶者の呼び方」(Yahooニュース 2021/03/01)

何と呼んだらいいのか

言葉は時代とともに変わります。放送禁止用語も分かりやすいです。昔の時代劇などをみると、ピー音ばかりという番組もあります。

」という言葉は、以前から一般的に使われてきた言葉です。大辞林では  「息子と結婚した女性を親の側からいう語。息子の妻」 「 結婚する相手の女性」 とあります。

嫁という字はその字のとおり、「女性が夫の家に入る(家にとつぐ)」という語源になることから、「家制度など女性蔑視的な意味合いがあるのではないか」という議論となるのでしょう

様々な呼び方

では妻の類義語で他にどのような呼び方があるかというと、実にさまざまです。(Weblioから)

  • 嫁、嫁さん、嫁はん
  • (うちの)奥さん
  • 家内
  • 女房
  • ワイフ

あとは、現代ではほとんど使われなかったり、他人の妻に対してや、子持ちの妻など限定した言い方なども含めると

「嚊婦人」「室女」「令閨」「ご内室」「刀自」「室家」「令室」「ご内儀」「上様」「御内儀」「お方」「妻室」「亭主もち」「亭主持」「嬢子」「裏方」「御っ母」「家桜」「嚊左衛門」「御上」「御内」「亭主持ち」「令夫人」「お上」「フラウ」「女性」「女君」「人妻」「御内室」「ご新造」「御上」「ミセス」「妻女」「嬶(かかあ)」「おかみさん」「夫人」「おっ母」「細君」などなど

また、私の世代では「うちの大蔵大臣」が何々、などという言い方もありました。

また、女子プロレスラーの北斗さんが自ら使う「鬼嫁」という言葉などは、本来の中傷的な意味合いは薄れ、冗談ぽく使われることもあります(女性が使う分にはいいですが、男性が使う場合はやはり気をつけた方がいいかもしれません)。わざとへりくだったり、卑下するような表現では、妻をわざわざ「愚妻」という言い方もあります。

言葉一つあればいいように思えますが、日本人というのは言葉に対して敏感なのでしょうか。このような感性があるから俳句などの言葉の文化が長く続いているのかもしれません。

(ちなみに私は日本にいた頃、「プレバト」という番組の俳句のコーナーが好きでよく見ていました。日本語の奥深さがよく分かります。)

最も適切な「妻」

女性配偶者を指す言葉として最も適切な言葉は「妻」で、役所の公文書でも「妻」を使います。

「奥さん」は奥様のように他人の配偶者に使う言葉ですので、自分の妻に使うのは不適切とされています。

「家内」は「嫁」同様に、私の世代ですとドラマなどでもよく使われた言葉で、語感としてはあまり違和感はないのですが、家の内という、その字の通り、女性は家の中にいて主婦であるという時代の言葉といえ、現代においては使われなくなっていくでしょう。

「女房」はもともとは、平安時代以降の貴族社会で、朝廷などに仕えた奥向きの女官もしくは女性使用人のことで、あてがわれた専用の部屋に由来するものです。やはり、女性を対等としたイメージではありませんし、実際、あまり使われなくなっているでしょう。

あとは「嫁」、あるいは嫁さんですが、今回議論になっているように、これも、家に嫁ぐ女性という意味であり、あまり使われなくなっています。親しい仲でしたら、「うちの家内が」とか「うちの嫁さんが」とか使われるかもしれませんがオフィシャルな場では控えたほうがよい言葉になってきています。

結局のところ、公文書でも使われる「妻」がもっとも適切であり、無難といえます。

参考
【男性必見】パートナーを呼ぶ言葉「妻・嫁・女房・奥さん・家内・カミさん」正しいのは?(TBS)

妻の語源

その「妻」の語源は、日本最古の歴史書である「古事記」にも記され、最も古い呼び方です。

連れ添う夫婦に由来し、「つ」は粘り気のある意味から、「ま」は身から転じたもの、もしくは、「つ」が連れ身から転じたものと考えられており、もともとは男女に関わらず配偶者を指していた言葉で、そのため「夫」と書いて「つま」とも読み、1)俳句などではそのようにも読まれます。

一方、男性配偶者に対しては、「旦那」、「主人」、「亭主」などという言葉もありますが、こちらは「夫」が公文書で使われます。夫の語源も「男人おひと 」の「ひ」が促音化して「をっと」となり、「おっと」になったとされる。2)ことから、とくに語源に問題はないとされています。

結局一番古い時代に戻ったということでしょうか。


1)、2)語源由来辞典

英語はどうなの?

Wifeの語源
では、英語はどうなのかというと、妻で調べても辞書ではWifeしかでてきません。(WISDOM和英)

そのWifeは、女性を表すWomanと関わりがあり、Womanはもともとは古記英語のwifmann(Wife Man)とのこと。ここでのmanはもともとは人間という意味でしたがやがて男性を指すようになります。wif-は、後の wife にあたり「おお われたもの」の意味であり、それは「女性」を意味したそうです。1)

なんだか男性に押し出されて付けれたような感じです。

結婚指輪からみる夫婦関係
なお、古代ヨーロッパにおいての結婚がどういう意味であったかは結婚指輪にも表れています。

古代、指輪の形は、エジプトの象形文字の「結婚」に由来し、永遠に途切れない「円」で「二人の絆を強める」という意味合いがあったといわれています。

ヨーロッパでは紀元前3世紀頃には既に男性が女性に対し婚約の証を贈るという習慣があり、古代ローマの頃には誓いの証として、お互いに鉄の輪を着ける習慣が成立していたそうです。

なお、これはギリシア神話の「天界の火を盗み人類に与えたプロメテウスが、ゼウスによって岩山に鎖ではりつけるという罰をあたえられ、後にヘラクレスにより解放されるにあたって、岩山の破片と鎖をつかって指輪を作り「ゼウスへの服従の誓い」としたという話に由来します。

古代ローマでは結婚指輪は女性が男性に対して「忠誠を誓うしるし」として用いられ、薬指にはめるようになったのは、「心臓とつながっている」(と考えられていた)もっとも大切な場所に誓いの指輪をさせていたことによります。2)

ポリティカル・コレクトネスと言葉の変化
「ポリティカル・コレクトネス」(※)が広まる米国では、男女の違いを連想させる「マンホール」を「メンテナンスホール」に、「マンパワー」は「ヒューマンエフォート」、「ヒー(彼)」や「シー(彼女)」を使わず肩書や地位で呼ぶことが議論されているそうです。

私の世代でも看護婦が看護師、保母が保育士、スチュワーデスがCA(キャビンアテンダント:Cabin Attendant)(ただしこれは和製英語で、海外では一般的にフライトアテンダント (Flight Attendant)」、あるいは集合名詞のキャビンクルー (Cabin Crew)など)、カメラマンがフォトグラファー、ファイヤーマン(消防士)がファイヤーファイターなどという変化は実感してきました。

また最近では、祈りの言葉「アーメン」が「アーウーメン」と使い分けることも検討すべきとアメリカ合衆国連邦下院議会で、民主党の議員が発言したことも話題になっています。4)(※なお、アーメンはヘブライ語で、「本当に」「まことにそうです」「然り」「そうありますように」の意で女性は関係ありません。ちょっと行き過ぎですね。)

一方、夫を指す「husband」の語源は、元々husはhasでした。houseという家という意味を持っています。bandは、何かを所有するという意味を持ち、その両方が結びついてhusbandになったのです3)

男性が家を持って一人前というのも、昔の考え方ではありますね。

WifeやWomanという言葉や、結婚指輪という習慣も、男性(中心)社会で形成されたものであって、どこまで突き詰めていくか、きりがない面もあります。

1)講談社現代新書「英語の語源」渡部昇一
2)結婚指輪・婚約指輪の歴史は古代ローマから続く?由来と起源を解説 | 婚約指輪・結婚指輪コラム
3)英単語「husband」の語源や由来(note 日本にいながら英語・英会話力爆上げ)
4)【海外の反応】AmenがAwoman (Awomen)に?アーメン&アウーメンの意味は?性差別論争沸騰中?!(原田高志の英会話・英語スラング・略語講座)

※性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立とされる言葉や表現を使用すること。

私も悩んだ妻の呼称

このブログではカミさんを使っています。

公務員という仕事をしていて、「妻」という言葉が無機質で冷たいとまではいいませんが、やや事務的で硬い語感を持っていると感じており、ブログではもう少し、くだけた言い方がいいと思ったのです。

とはいえ、「奥(さん)」は、やはり自分の妻に使うのは誤用でもあるし不自然な感じがします。また会話ならいいのですが、「嫁」や「家内」はやはり文字にすると、“ウム”となってしまいます。「女房」は演歌のイメージが強く、私の世代でもちょっと古臭く感じます。

刑事コロンボ
そこで私の世代ですと「刑事コロンボ」で馴染みのある「カミさん」を使うことにしたのです。

刑事コロンボはユーチューブなどで原語で見られます。当然「my wife」と言っているのですが、主演のピーター・フォークの声は日本での放送のイメージとは少し異なった印象です。

All Of Columbo’s Wife’s Mentions | Columbo

石田太郎/温かみを説いて言い聞かせる

左はオリジナル。右は石田太郎さん吹き替え版で「うちのカミさん」のセリフもあります。刑事コロンボは最初の小池朝雄さんがよく知られていますが、私の世代だと『機動戦士ガンダム』のギレン・ザビの声でピンとくる銀河万丈さん版もあります。

やはり小池さんのイメージが鮮烈で、小池さんが亡くなった後を引き継いだ石田さんは、そのイメージを壊さないよう苦心されたとのこと。

翻訳は額田やえ子さん。もしほかの方が翻訳していたら「うちの妻がね」となっていたかもしれません。

さて、当時はカミさんという言葉はとぼけた雰囲気を醸し出すコロンボにピッタリで全く違和感はありませんでしたが、その言葉も現代では死語に近くなっているようです。「刑事コロンボ」を知らない世代だと分からなかったり、古臭いと感じるかもしれません。

カミさんの語源
 江戸時代、将軍や天皇に対して使った「上様」からきたとするもの、山の神からきたとするものなど、多くの説が存在します。 主に親しい間柄との会話で対象となる妻に親しみを込めて使うことが多い。1)とされています。カミは上座のカミで、上ということでもあり、普通に妻を立てた表現ともいえると思います。

将来どう変わっていくか
あとは最近は「妻」と「夫」というように区別するのではなく、「相方」や「パートナー」という言い方もするようになってきました。マンガ「ツレがうつになりまして。」のように「ツレ」というのもありますね。

ジェンダーレス社会が一般化してくると、若い人を中心に、今後はこのような表現が広まっていくのではないかと思っています。

1)日本語俗語辞書

おわりに

これまで断片的に読んでいたのですが、先日、新約聖書の通読が終わりました。次は旧約聖書です。

普遍の真理を述べ伝えるとされている「聖書」においても、特に旧約聖書の時代と今ではずいぶんと異なる律法(法律・規則)や慣習がみられます。聖書に書かれている翻訳の言葉も、不適切な表現など、時代に合わせて変えられてきています。

だからといって、聖書に書かれた本質の部分が変わっているというふうには解釈されていません。

社会は常に変化しており、言葉もまた同様だと思います。本質的なものを見失わないようにして、社会や言葉は柔軟に、“しなやか”に変わっていけばいいのではないでしょうか。

手段はあくまで目的のためにあるのであって、「手段が目的になってはならない」ということとも通じ、変な「言葉狩り」のように、誰かを凶弾することが目的になるようなことは、正しくはないのではないかと思います。

その一方で、日本は男女格差を測る指標のひとつであるジェンダーギャップ指数2020の総合スコアは153カ国中121位で前年の110位からランクダウンするという結果になっています。

なお、フィリピンはアジアで一番高い16位です。

オリンピック組織委員会会長の問題で、はからずも、日本の女性差別問題やジェンダー意識などに関して世界から注目が集まってしまいました。社会制度は無意識・意識の上につくられるもので、やはりそういった面で、日本はしっかりと認識し、教育などを含め、考えていく必要もあるかもしれません。

参考
2020年版「ジェンダーギャップ指数」で日本はG7最下位に 主要国のランキングと男女格差の問題点 (ELEMINIST 2021/02/04)

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